自分自身で“気づく”って行為がすごく好きなのよね。(ジェニー)

――さて、サヴェージズのデビュー・アルバム『サイレンス・ユアセルフ』、非の打ち所がない素晴らしい作品でした。バンド結成からはまだ1年ちょっとですが、こうして日本にも来れるようになったわけですし、着実に自分たちを取り巻く環境や生活が変わったと実感していますか?

ジェニー うーん、今まさにツアーを周っているところだからね(笑)。でも楽しんでるわよ。この時間を人生の一部だと思っているし、すごくエキサイティングなことよね。色んな人々にも会えたし。先日USツアーを終えたばかりなんだけど、どの会場もソールド・アウトで素晴らしいショーだったのよ。日を追うごとに、オーディエンスがどんどん私たちのサウンドにのめり込んでいってくれてるような気がするわ。

――アルバムの冒頭にジョン・カサヴェデスの映画『オープニング・ナイト』からのセリフの引用がありますが、これはどういった理由で思いついたのでしょうか?

ジェニー これはジョニー・ホスタイルのアイディアだったのよ。アルバムの1曲目が“Shut Up”というのは決まっていたんだけど、この曲を紹介するための何かを探していたのよね。それこそ映画のイントロみたいに。カサヴェデスは尊敬すべきインディペンデント映画の監督だし、私自身も彼のすごいファンだったから即決。何事にも左右されない経歴や、ハリウッドのシステムから常に一線を画しているところも素晴らしいわよね。人間関係や家族関係、あるいは女性といった普遍的なテーマを取り扱いながら、絶対にデタラメや嘘は言わないし、常に真実だけを伝えるスタンスは未だに多くの人々が影響されているの。

――なるほど。

ジェニー 音楽も重要なポイントで、チャールズ・ミンガスが手がけた『アメリカの影』(59年)のサントラは最高よ。他にもニューヨークのジャズとかね。それと、役者の演技にはアートからの影響も垣間見えるの。カサヴェテスは「アートがアートに反響している」と語ったんだけど、それもすごく面白い意見だしね。彼の作品については何時間でも語ることができるわ! そのことで、自分の中に秘めたものから何か新しい発見ができたりもするし。自分自身で“気づく”って行為がすごく好きなのよね。映画を鑑賞することで、今まで自分が知らなかった自分を発見することができるあの感じ。サヴェージズを好きな人たちが、このアルバムを通してカサヴェテスのことを知って、彼の作品を観てくれるようになったら、これほど素晴らしいことは無いわ。

――日本の映画監督で誰か好きな人はいますか?

ジェニー きっと彼女(ジェマ)がよく知ってるわよ。

ジェマ ええ、たしかに日本映画の影響はすごく受けているわよ。クロサワ(黒澤明)やオヅ(小津安二郎)はもちろんだし、今は名前が思い出せないんだけど、アベ…。

ユウキ&コウヘイ 安部公房?

ジェマ そう、その人! すごくファンなの。彼の作品からはいつもインスピレーションを受けてるわよ。人間の深層心理を追求してると思う。

ジェニー ギターを選んだのはなんでだっけ?

ジェマ あー、それは『ELECTRIC DRAGON 80000V』(2001年)っていうサイコーな映画があるから、それを観てもらったほうが早いかも(笑)。

『ELECTRIC DRAGON 80000V』(2001年)