Interview:スティーブ・ナカムラ
–––まずは、スティーブさんが思うきゃりーさんの魅力について聞かせてください。
具体的に説明するのは難しいけど、彼女の魅力は表面的なものではありませんね。例えば、きゃりーのことをアメリカの有名なアートギャラリーのオーナーが彼女のことを好きと言ってくれる一方で、沢山の子どもたちからも愛されている。イギリスのファッション誌・DAZED&CONFUSEDの表紙に起用されていますし、その影響力が国内外に広がっている状況を面白いと思いますね。
–––ひとえにアートディレクターといっても、その関わり方は人それぞれだと思います。例えば、レイアウトに特化する人もあれば、ストーリーから考える人もいますし、スティーブさんは後者の印象があります。
おっしゃるとおり、いろんなアートディレクターがいますよね。僕の場合はストーリーやコンセプト設計以外に、ファッションやセッティングまで関わっています。でも、ジャケットのアートワークは自分だけで完結する仕事ではないから、アーティスト本人、スタイリストさん、ヘアメイクさんそれぞれのスタイルもあるし、それらを合わせることで、はじめて良いイメージを打ち出せるんだと思う。無理矢理その人のスタイルを変えずに、その中でどうやって作り上げていくかという感じですね。広告とか雑誌とか表現の場はいろいろとありますけど、コマーシャルな面で見ると、僕の中では音楽の仕事が一番遊びの要素を盛り込んで表現できるんです。自分のエゴではなく、アーティストのキャラを面白く打ち出すことが僕の仕事だと思っていますね。
–––そもそも、どんな経緯からきゃりーさんのアートワークを担当することになったんですか?
知り合いが〈unBORDE(アンボルデ)〉(※きゃりーぱみゅぱみゅの所属レーベル)をちょうど立ち上げるときに、面白い子がいるときゃりーについて話をしてくれて、僕と組み合わせたら面白いかもしれないということで、彼女のアートワークを担当するようになりました。
–––きゃりーさんは〈unBORDE〉のシンボルですよね。デビュー作の『もしもし原宿』の頃からずっと注目を集めている存在ですが、当時と比べてもその状況は随分と変わってきていると思うんです。
アートディレクションも始めの頃は今よりも大変でした。世の中がどう彼女に対して反応するのかまったく分からなかったんですよ。でも、絶対に目立つ存在になるんだろうなとは思っていて、最初のジャケットが成功したことで自信がついたし、それが自己満足じゃなく結果として出てくれたことが大きいですね。
『ファミリーパーティー』デザインラフ
『ファミリーパーティー』