2014年に自身の活動発信の場として“Superendroller”を立ち上げ、プロデュース作品として自身が脚本・演出・出演を務める舞台を発表し、その次世代演劇スタイルで注目を集める脚本・演出家の濱田真和。同氏プロデュース第3弾となる舞台<Superendroller LIVE “scene03”『monster & moonstar』>が、3月24日(金)から28日(火)にかけて原宿のVACANTで上演される。
友人を失った経験を昇華し自身の自伝的作品となった1作目『sea , she , see』、プロミュージシャンを志す青年の心境に青春性と虚無感を投影した2作目『blue , blew , bloom』、そして3作目となる今作『monster & moonstar』では、兄の行方不明により一人残された女子高生の多難な人生から浮かび上がる人間の心の動きが描かれている。
3作ともに一貫して“残された者”を描いてきた濱田だが、今作についてはこう述べている。「一作目の『sea , she , see』を書くきっかけにもなった人物からの嬉しい報告を受けて、自分も次の場所へ進まなければいけないと思った。ある意味今作は、集大成的な作品になっているかもしれません」。
その集大成的作品の製作サイドを固めるのは、前作『blue, blew, bloom』で舞台初主演を務め、今作では劇判を担当するミュージシャン・俳優の古舘佑太郎、その技術と感性で1作目から濱田の描く世界観をより印象深いものにしてきた照明作家の渡辺敬之(仕立て屋のサーカス/tremolo)。また衣装には、コアなファッション好きからの支持者を集めるMADE in JAPANブランド「Porter Classic」がクレジットに名を連ねている。
今回は、古舘佑太郎と渡辺敬之、濱田真和の3名に、製作側から観た『monster & moonstar』で描かれる世界の深層部、“参加”ではなく“コラボレーション”として強烈な個を掛け合わせて作品をつくることの意義について語ってもらった。
Interview:舞台『monster & moonstar』
【音楽】古舘佑太郎×【照明】渡辺敬之(仕立て屋のサーカス/tremolo)×【脚本・演出】濱田真和(Superendroller)
by 野中ミサキ(NaNo.works)
「人と一緒にやるっていうことを勉強している感覚で楽しんでいます。ある意味、仕立て屋のサーカスより全然大変(笑)」(渡辺)
——先日公開された第一弾インタビューでは、キャストに役者の視点で作品を語っていただきましたが、今回は製作サイドから作品の深部を探っていければと思います。まず、トピックとして、前作『blue, blew, bloom』で主演を務めた古舘さんが今作の音楽製作で参加していらっしゃることが挙げられるのではないかと。
濱田真和(以下、濱田) 前作・前々作と音楽家の宮内優里さんに素晴らしい音楽を作っていただいたんですけど、今回は女の子が主演っていうこともあってエレクトロニカだと世界がキレイになりすぎてしまうんじゃないかと。イメージ的には真っ直ぐなパンクロックな雰囲気にしたくて、それなら古舘さんに音楽を作ってもらえたらいいなぁとか考えていて。そしたら、たまたま飲みに行った先に古舘さんがいたんですよね。これはタイミングだと思って誘ってみたら、かなりノリ気で「やらせてください! 俺、宮内さんを越えたいんすよ!」って(笑)。
古舘佑太郎(以下、古舘) ……酔ってたんで、それはちょっと大きく言い過ぎたかもしれないです(笑)。誘ってもらった次の日、「昨日の話、本当にやろうよ」ってメールをいただいて。僕、そのときなにを話したのかは正直あんまり覚えてなかったんですよね。でも、やりたいっていう気持ちはブレていなかったし、もともと真和さんが作る物語に音楽を作れたらいいなとも思っていたので、「ぜひ、やりましょう」と。
濱田 ……そうだったんだ(笑)。スケジュールの兼ね合いなんかもあって叶いませんでしたけど、最初「生演奏でやりたい」とも言ってくれていて。
古舘 『blue, blew, bloom』で主演をやらせてもらったときに僕がギターを弾いて目の前で相手役の女の子が演技するシーンがあって、それがすごく楽しかったんです。ただ、あの役を演じたことはとてもいい経験だったけど、楽しいだけじゃなくてかなり苦労もあって。今回誘ってもらったとき「生演奏でやりたい」ってテンション上がって理想を言っちゃったんですけど、冷静に考えてみたら舞台上で演奏するとなると、なんだかんだで僕もキャストになってしまうなっていう危機感を感じたので(笑)、今回は一歩引いたところからパスを出したいなと。一度出演させてもらっているぶん真和さんのやりたいこととかは理解出来ている部分もあるし、他の楽曲提供でもそうなんですけど作品の世界観にドップリ浸かるよりは、なんとなくやったほうがうまくいくことが多いので、お話をいただいてから自分なりになんとなく曲を作り始めました。
——渡辺さんは、一作目の『sea , she , see』から参加されていらっしゃいますが、そもそもはどういった経緯で濱田さんとご一緒することになったのでしょう?
渡辺敬之(以下、渡辺) 僕、仕立て屋のサーカスっていうのをやっていて、VACANTでよくやっていたんですよ。そのとき偵察も兼ねて、観に来ていたんだよね?
濱田 そうですね。仕立て屋のサーカス自体すごく話題の公演だしVACANTが少し特殊なハコっていうのもあって、音響とか照明とか客席とかを観に行ったとき、終演後にそのまま、「あなたが渡辺さんですか?」って、渡辺さんをナンパしました(笑)。
渡辺 頭がおかしいって思いましたね。っていうのも、全部抽象的にしようとしているのが仕立て屋のサーカスで、なにも具象に見えないようにしているあの照明を観て「舞台でやりたい」と思うなんて、どうかしているなと。おもしろそうだからその場で引き受けましたけど、家に帰って冷静に考えたら「あいつ、とんでもない奴やな」と(笑)。そこから何度か打ち合わせを重ねて、舞台に必要なことと僕が得意なこと・やりたいことをミックスアップして作っていくようになりました。当時、なんでも受けようっていう姿勢だったし、もともと現代音楽とか即興とかっていう畑にいたから、そういう仕事をやっていた時期で。あのときじゃなければ、受けてなかったかもしれないですね。それまで舞台照明っていうものはやったことがなくて、わざと顔が見えないようにしたりっていうことをしていたから。舞台だと顔を見せるっていうのは大事だし、そういうトライアルを過去2作品でいろいろしているけど、今回はもうちょっと自分の色を強めに出したいなと思っていて。しっかり見せる部分とそうじゃない印象だけの部分のバランスをもう少し変えられたらなと。
濱田 VACANTっていうハコの特質さもあって出来ることと出来ないことがあるから、その中で「渡辺さんはどうするんだろう」とか、どうしようかなって考えたりするのは楽しいですね。毎回せめぎ合いなんですよ。渡辺さんのやりたいこともわかるし……でも、役者もいい顔してんだよなぁって。
渡辺 こっちもそれを感じながらやってる(笑)。今回は、もうちょっとせめぎ合えたらいいなと思っていて。真和くんのやりたいことはなんとなくイメージ出来ているし、僕にないアイデアを投げてくれたところはそれにトライしてみる。そうじゃないところは、任せてくれているんだなと思って好きにやらせてもらう(笑)。今作はこれまでにないような曲もあったりするし、自分一人でおもしろくなるより、人と一緒にやるっていうことを勉強している感覚で楽しんでいます。システムから何から全部持ち込みで、大体毎回持っている機材をフル導入しても大抵足りないんで。そんな現場ないし、ある意味仕立て屋のサーカスより全然大変ですよ(笑)。
次ページ「舞台をやったときに音楽に助けられる瞬間があって。こんなシーンだったんだ!って音楽によって気づかされたり。その経験を思い起こしながら作ってました」(古舘)