俳優/脚本・演出家の濱田真和をはじめ、いのうえあい(シンガーソングライター)、光根恭平(役者/モデル)、熊谷弥香(役者/モデル)の4人で構成されるSuperendrollerによる舞台『Superendroller LIVE+ing #1「tane&tiny(たね&タイニー)」』が7月29日(金)〜8月2日(火)渋谷ES gallery(elephantSTUDIO)にて上演される。
Superendroller
The SALOVERS古舘佑太郎をはじめ、音楽家の宮内優里、照明作家の渡辺敬之など、さまざまなアーティストを迎えコラボレーションした舞台『blue,blew,bloom』に続く今作は、渋谷elephant STUDIOという、“場所”とコラボレーションをし「LIVE+ing(リビング)」と名づけられた新しい試みで、“リビングの様な小さな空間で、今、わたしたちだから出来る事を。”をテーマに、メンバー4人のみで製作・出演するというミニマムかつ実験的なもの。さらに脚本を書くうえでは、「震災復興に繋がるプロジェクトに関わることで感じたものを通して、これまで扱わなかったテーマに向き合った」と濱田は語る。
『tane&tiny』
今回は、脚本・演出・出演の濱田真和と、今作の主演で、女性ファッション雑誌「mina」の専属モデル、その他多くの誌面を飾り、女優としても映画『S-最後の警官-』やドラマ『花咲舞が黙ってない』など、数多くの映像作品や舞台でヒロインを務め注目を浴びる熊谷弥香の2人に、最新作『tane&tiny』と「LIVE+ing」という新しいアプローチ越しに見えてくるSuperendrollerのこれからのヴィジョンについて聞いた。
Interview:濱田真和、熊谷弥香
——まずは、前作『blue,blew,bloom』の公演終了後から今作『tane&tiny』に着手するまでの経緯を聞かせてもらえますか?
濱田真和(以下、濱田) 『blue,blew,bloom』とその前にやった『sea,she,see』というプロデュース2作品を通して、“おもしろいことができたな”という感触がすごくありました。ただ、これは人の力を借りてできたことだという意識もあって。もちろん、いろんな人を巻き込んで外へ向けて発信していくことは僕がやりたかったことなんですけど、今後もっと大きなものを巻き込んでいきたいと考えたときに、このタイミングで自力・地力を見つめ直す必要があると思ったんです。なので、いろんなアーティストと一緒に作る「LIVE “scene〜”」とは別に、Superendrollerの4人で作品を作る「LIVE+ing(リビング)」というラインを立ち上げることにしました。意味は、「ここにいる」、とか、「リビングの様な小さな空間」とかを掛け合わせたイメージで、弥香が考えました。
——製作に関わる人数の変化は、さまざまな面に影響しそうですね。脚本にとりかかったのは、「LIVE+ing」立ち上げ後ですか?
濱田 立ち上げ後ですけど、イメージ自体はそれ以前からあって。福島・いわきで有機栽培したコットンを商品にする“ふくしまオーガニックコットン”というプロジェクトがあって、5月にも4人で畑仕事を手伝いに行ってきたんですけど、『tane&tiny』はそこでの活動からインスピレーションを受けて書いたんです。オーガニックコットンの種って、繰り返し植えられるんですよ。普通のコットンの種は1回きりしか使えないみたいなんですけどね。それを知ったときに、オーガニックコットンの種と、人の人生とがすごくリンクしているなって。
——輪廻とも通じるものを感じますね。
濱田 福島で震災の被害にも負けずに立ち上がって自分たちでなにかできないかとコットンの栽培をはじめた人たちがいて、そんな土地で何度も繰り返し芽を出し、実がなり、綿をつくる種がある。まるで、人も種も、“ここにいる”って叫んでいるみたいで。彼らと出会ってから2年近く経つんですけど、自分の中の変化や、つくる作品の変化を、自分自身すごく感じているので、その影響をはじめてストレートに出したのが今作です。
——その変化が一番現れているのは、どういったところでしょう?
濱田 ……口で言うと本当に恥ずかしいんですけど、愛ってことですかね。今まで作品を作るうえで、愛っていうものから逃げてた気がするんですけど。改めて言ってしまうと恥ずかしいし、信じきれない部分もあって。だけど今回、繰り返しの物語を書くにあたって、その根底にある愛を、やっぱりすごく感じたんです。種にしろ人にしろ、愛っていうものが確かにそこにある。対・人っていうものである以上は、すべてに愛があるんだなって。それに加えて、東日本や熊本で震災があって、そこで生きている人たちと出会ったことで、暗い話を書いてる場合じゃないと思ったし、せっかく届けるんだから、希望が見える作品を作りたいっていう思いを込めました。
——あらすじとしては、どういったものになっていますか?
濱田 ちっぽけな女の子(tiny)の半生を描いた物語です。オーガニックコットンの種(tane)が繰り返し植えられ、芽を出し、綿をつくるように、母親から子供が生まれて、名前がつけられて、その女の子が憧れやコンプレックスの中で、迷子になりながら、成長して、“ここにいる!”、っていう、どんどん繰り返し続いていく物語を、“ふくしまオーガニックコットン”の活動を通して得た自身の体験とリンクさせて描きたいなと。今まで自分を投影した作品ばかりだったんですけど、今回は初めて女性を主役にするっていうこともあって、主演の弥香を主に投影しながら脚本を書きました。
熊谷 いろいろ質問されましたね。私自身の小さい頃の話とか、私のお母さんの話とか。実際、できあがった脚本を読むと自分の実体験がいくつも反映されてたりして。人の人生を演じるってことでいえば、『sea,she,see』でもそういう役どころだったので、今回はそれ以上いけばいいわけで。今回、劇中に一人何役かやるなかでお母さんになる場面があるんですけど、実生活では経験のないことを演じるのもおもしろいですね。
濱田 自分の母親にも出産したときの気持ちとか聞いたりしました。永遠のテーマなんですけど、女性ってほんとわかんないんで(笑)。
次ページ:4人それぞれが自立しているからこそ、こういうことができるというか。