英ブリストルで結成され、これまで2作のアルバム、昨年の<FUJI ROCK FESTIVAL>(以下、フジロック)初出演前の入門編的なEP『MAGNIFY』をリリースしたザ・ラモナ・フラワーズ(The Ramona Flowers)。何より、朝一のレッドマーキーを沸かせたことで、より彼らの音楽が身近になったリスナーも少なくないだろう。エレクトロと生音を融合したバンドの中でも、シンセポップ的な親しみやすさ、哀愁も兼ね備えたスティーヴのボーカル表現はポップミュージックとして間口の広さも証明した。
The Ramona Flowers – If You Remember
The Ramona Flowers – Dirty World (Official Video)
今回は初の単独公演となった昨年12月の東京公演のために来日した5人をキャッチしてのインタビューを敢行。80年代的なシンセポップ色と、フィジカルなバンドのダイナミズムの両方をを融合したという、現在制作中の3rdアルバム『STRANGERS』について、制作時に受けた影響、また現在のUKミュージックシーンについてアーティストとして実感していることなどをリラックスしたムードの中でランダムに訊いてみた。
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——前回は<フジロック>出演直後の感想でしたが、時間が経過した今、バンドのパフォーマンスに関する感想をお聞きできますか?
サム・ジェームス(Gt、以下サム) すごく楽しかったし、かなりアメイジングだった。もしUKで同じ朝の時間帯だったら、おそらくお客さんはいなかっただろう。だけど、<フジロック>はたくさんお客さんがいて、反応も良くて楽しくて、今までで一番良かったギグの一つだと思うね。
——それは日本人としてもありがとうございます(笑)。そして他の出演者ではサンファのアクトが良かったと言ってましたね。
サム そうそう、グレイトだった。その後、マーキュリープライズも獲得したね。
Sampha – (No One Knows Me) Like The Piano (Official Music Video)
——日本のバンドは見ましたか?
スティーヴ・バード(Vo、以下スティーヴ) 自分たちの後に出たバンドは覚えてる、多分The fin.かな?
——The fin.は今、イギリスで活動してるんですよ。
スティーヴ ああ、そうなんだ? もしまた機会があればUKで見たいね。
The fin. – Through The Deep
——<フジロック>全体に関しては、世界のフェスの中でもどういう部分がユニークだと思いましたか?
エド・ガリモア(Dr、以下エド) ロケーション。すごくきれいだし、フェスを仕切ってる人たちもいいし、あとは一番クリーンなフェスだってことかな。
ウェイン・ジョーンズ(Ba、以下ウェイン) オーディエンスも親切だし。
——今年は久しぶりにずっと雨だったんですが、お客さんもタフで。
一同 そうだね。
サム でも<グラストンベリー>で雨には慣れてるからね(笑)。
——確かに(笑)。すでに<フジロック>のステージでも“Stranger”をプレイされていたと思うんですけど、当時演奏した時の反応はいかがでしたか?
サム ライブでまだやったことはなくて、当時完全に完成された曲ではなかったから、それに合わせて歌ってくれる人は確かにいなかったけど、グルーヴを感じてノッテくれてるんだろうな、曲に入ってきてくれてるんだろうなって印象はやってて感じられたかな。
——アルバム制作に本格的に入ったのは、そのあとですか?
スティーヴ 入ってるぐらい、ちょうど中間ぐらい。
——<フジロック>のみならず、今回のアルバム制作期間中にどんな音楽から影響を受けていますか?
ウェイン レコーディング中良く聴いてたのはサンファとかフェニックス、M83、それからエヴリシング・エヴリシング、あと、ウィークエンド、この辺のアルバムはよく聴いていたんで、影響を受けてるんじゃないかな。
Phoenix – Ti Amo
M83 – Do It, Try It (David Wilson Video)
Everything Everything – Desire (Official Video)
The Weeknd – I Feel It Coming ft. Daft Punk
——それらのアーティストは世界的なトレンドですね。
スティーヴ この辺のバンドはかなりエレクトリックな感じだったりするし、自分たちの音とも近いので、そういう意味でも影響を受けやすかったんだと思う。
—そういうテイストに加えて、現在のラフ音源を聴いた感じ、次作はよりミニマルなサウンドで、しかもマイナーキーの曲が多くなりそうな印象ですが、そういう曲が多くなる理由はありますか?
サム 目標としてた音は、ドリームポップというか、これまではかなり暗い感じのものが多かったので、もっとアップリフティングというか、元気が出るようなものをっていうコンセプトはあって。それが例えば歌詞にも影響してるとは思う。
——じゃあむしろイギリス的な陰のムードはありつつも、バンドとしてはアップリフティングなサウンドを目指したんですね。
サム イメージ的には映画のサントラのような感じで、80年代の映画のサントラと比較できるような音になってるんじゃないかと思う。
——80年代の音楽も色々ありますけど、サムさんにとっての80年代とは?
サム シンセ(即答)。それがやっぱりメジャーなこととしてあって、すごくきれいなメロディだったりとか、アップリフティングな雰囲気だったりとかを80年代の映画から感じるんだ、
——映画の影響が大きいんですか?
サム そうだね……。
エド (遮るように)『グーニーズ』だったり『トップガン』とか、映画自体はどうかと思うような内容だけどサントラはすごくかっこいい(笑)。
サム 80年代の映画のサントラって基本的にすごいいいものが多いんだよね。どんなに駄作でも、今と比べて。
エド 前回の2ndアルバムも自分たちの中ではサントラのイメージを含んだヴァイブがあるアルバムだったと思うよ。『ブレードランナー』のイメージとかね。
——ちなみに『ブレードランナー』はオリジナルの方が好きですか?
サム 新しいのはまだ見てないんだ。
エド オリジナルは東京みたいなムードがあるもんね。
——確かに今の東京みたいですよね。
一同 そうだね。
——映画のサントラのイメージということで言えば、次作の『STRANGERS』はどんなストーリーを持っているんでしょう?
スティーヴ 歌詞の面からいうと、ストーリーは大体、人間関係のことで、まぁ初めて会っていい方向にいくパターンと、逆の方向にいくパターン、悪く行くパターンっていう内容の歌詞があるアルバムになってるんだ。サウンド面で言うと、さっきも話してたようにアップリフティングトいうか、もっとダンサブルな曲、美しいメロディを含む楽曲がテーマとしてあると思う。
——歌詞を見ると、変わろうとしてるんだけど変われない主人公だったり、特に楽曲の“Strangers”では愛してる人のことを知りすぎたくないみたいな印象を受けましたが。
サム まぁ、男女間っていうのもあるんだけど、そこにこだわりはなくて、例えば兄弟同士とかいとことか、男性女性だけじゃなくて、男性男性だったり、女性女性だったり、特にこれっていう関係は決まってないんだ。
——人間関係の距離感の描き方が絶妙ですね。
スティーヴ ありがとう。
The Ramona Flowers – Strangers (Official Video)
——ストレンジャーズは「見知らぬ者たち」ですけど、そこに込められた気持ちや思いは?
サム 出会いが良くなることもあれば、悪くなることもあるっていう意味があってのストレンジャーで、知り合ってうまくいくパターンとダメになるパターンっていうのは、そのストレンジャーだった人が、また関係が悪くなってストレンジャーに戻るという、結局そういうサークルラインだという、二つの意味が隠れてるということなんだ。