英ブリストルで結成され、14年にデビュー作『Dismantle And Rebuild』を発表すると、その後ステレオフォニックスのツアーに参加。16年に2作目『Part Time Spies』を発表して、<FUJI ROCK FESTIVAL’17>(以下、フジロック)への出演のため初来日した5人組、ザ・ラモナ・フラワーズ(The Ramona Flowers)。来日直前には、ニューEP『MAGNIFY』に日本盤ボーナストラックを追加した国内盤もリリースされた。

The Ramona Flowers – Skies Turn Gold

新曲“If You Remember”“Take Me Apart”“Numb Drunk”の3曲に、過去曲、日本人アーティストによるリミックス、ライブ音源をコンパイルしたこの作品は、インディ・ロックやニュー・ウェイヴ、エレクトロまでを取り入れた音楽性や、グラム・ロックやUK耽美派、もしくはニュー・ロマンティックを思わせる英国特有のメロディを持つ彼らの最新形と過去とがまとめられたまさにバンドの入門編と言える内容。

The Ramona Flowers – Run Like Lola

ギターのサム・ジェ-ムスは世界的掃除機メーカー・ダイソンの創業者・ジェームス・ダイソンの息子でもあり、来日中はダイソンの世界初のフラッグシップ店となった青山店でインストア・ライブも行なった。フジロック出演前、日本に到着したばかりの彼らに、結成から現在までの歩みや新曲のレコーディング過程、そして現在制作中というニュー・アルバムの方向性について訊いた。

The Ramona Flowers – Start To Rust

Interview:ザ・ラモナ・フラワーズ

【インタビュー】ダイソン創業者の息子率いるザ・ラモナ・フラワーズ。日本との親和性、U2のようなスケール感の音楽を語る theramonaflowers_pickup7-700x467

——ラモナ・フラワーズというバンド名は、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のヒロインの名前から取られていますね。この作品はバンドがテーマになった物語でもあるだけに、とても面白い話だと思いました。

サム・ジェームス(Gt)(以下、サム) 僕がその映画を観て「いいな」と思って決めたんだ。映画の中であの女性キャラクターが登場したとき、すごくミステリアスで、とてもいい名前だと思った。それで色々と調べたら、他に同じ名前のバンドもいなくてね。みんなに提案してこの名前に決まったんだ。 

——「ミステリアスな雰囲気」というのは、バンドにとって大事な要素だったんですか?

サム そうだね。ミステリアスで、どこか神々しいような雰囲気があって――。それは大事な要素だったと思う。それに、そのラモナ・フラワーズ自体が、映画が進むにつれてどんどん役割を持ち出したというのもイメージにあっていたんだ。彼女はすごくクールだよ。

——そもそもメンバーはどんな風に集まったんでしょう?

スティーヴ・バード(Vo)(以下、スティーヴ) 最初、サムとウェインとデイヴが別のバンドをやっていたんだけど、それが上手く行かなくて終わってしまった。それでシンガーを探すためにウェブサイトに募集をかけていたのを僕が見て、オーディションを受けようと連絡したんだ。そうしたら、応募したのが僕しかいなくてそのままシンガーになった(笑)。エドはデイヴの知り合いで入ったよ。

——サムはダイソンの創業者ジェームス・ダイソンの息子さんだけに、メンバーの間では驚きもあったんじゃないかと思います。

ウェイン・ジョーンズ(Ba)(以下、ウェイン) まぁ、僕はサムを小さい頃から知っていて、そのときはダイソン自体も本当に小さな会社だったんだ。町の小さい工場を持っている会社という感じでね。だから、僕からするとその後の方が驚きだよ。会社がどんどん大きくなっていったんだ。

スティーヴ 後からバンドに参加した僕とエドは、サムがダイソンの創業者の息子だと知って正直驚いたけどね。でもそれは、バンドに入って1か月後ぐらいの出来事だったと思う。最初はそんなこと全然知らなかったんだよ。

【インタビュー】ダイソン創業者の息子率いるザ・ラモナ・フラワーズ。日本との親和性、U2のようなスケール感の音楽を語る theramonaflowers_pickup6-700x467

——ラモナ・フラワーズにはインディ・ロックやニュー・ウェイヴ、エレクトロニック・ミュージックなど、様々な要素が詰め込まれています。これにはみなさんそれぞれの趣味・嗜好が反映されていると思いますが、メンバーそれぞれが好きな音楽というと?

デイヴ・ベッツ(Key & Gt)(以下、デイヴ) ボンベイ・バイシクル・クラブのフロントマン、ジャックがやっているミスター・ジュークス(Mr Jukes)はすごく好きだね。メインストリームの音楽とはちょっと離れたようなもの。あとはデ・ラ・ソウルのようなヒップホップ・アーティストも好きだよ。

スティーヴ ミスター・ジュークスは僕も好きだね。あとはフェニックスの新作『ティ・アモ』もよく聴いているんだ。

エド・ガリモア(Dr)(以下、エド) 僕は何でも聴くけど、最近はアメリカーナのようなものを聴くことが多いな。

ウェイン 僕も色々だけど、チェインスモーカーズの新譜を聴いているね。

サム 僕はサンファのデビュー・アルバム『プロセス』。ピアノとエレクトロニック・ミュージックが混ざった、あの美しい雰囲気は素晴らしいと思う。

デイヴ 基本的に、僕らの音楽はそういうメンバーそれぞれに好みが違うバラバラの音楽を、一か所にまとめていくことで完成まで持っていくんだ。

サム ラップトップを使って、全員がそれぞれのテイストでアイディアを加えていく。それをまとめていく中でプロデューサーが作業に加わっていくという制作方法なんだ。バンドをはじめた頃は、とにかく「エレクトロニックな要素を入れよう」ということは考えていたね。それが核にあって、あとは自然に今のような方向性になっていったと思う。

【インタビュー】ダイソン創業者の息子率いるザ・ラモナ・フラワーズ。日本との親和性、U2のようなスケール感の音楽を語る theramonaflowers_pickup1-700x467

——では、最初に曲を作ったときのことは覚えていますか?

デイヴ 最初に作ったのは“Dismantle and Rebuild” だったと思う(14年作。現在よりエレクトロニックな音楽性ながら、壮大なサビを持っている)。この曲はいまだにバンドの核にある音楽性を象徴している曲として演奏しているよ。

The Ramona Flowers – Dismantle and Rebuild

スティーヴ “Dismantle and Rebuild”を作ったときは面白い話があったな。最初、バースはあったんだけどコーラスがなかったんだ。だからゲームをやっていたデイヴに「コーラスを考えてくれよ」と言ったら、「うるさいな。しょうがないから書いてやるよ」と言われて……。

デイヴ ちょうど機嫌が悪かったんだよ(笑)。

スティーヴ (笑)。でもその結果、この曲のコーラスが完成することになった。

サム それに、曲が完成する前に一度他のバンドのためにスタジオを空ける必要があってね。それで戻ってきたら、サンプラーのつまみが戻る前よりも7 BPMくらい速くなっていた。それをそのまま使ってみたら「こっちの方がいいんじゃない?」という話になって、最終的にそっちを採用したのも覚えてるよ。レコーディング中は、いまでもメンバーが間違えて弾いたフレーズを「そっちの方がいいよな」と採用することがあるんだ。そのためにもレコーディング中の音は全部録音しておいて、そこから使える要素を探していったりもするね。

スティーヴ そうそう。僕もボーカルをスマートフォンに録りためているよ。

デイヴ 僕も自分のギター・プレイを全部動画で撮ってる。じゃないと、ときどきどうやって弾いたフレーズなのか忘れてしまうことがある(笑)。とにかく、僕らはその場の偶然性も取り入れて、楽曲を完成させていくという姿勢を持っているんだ。

——その際、全員で共有しているゴールのようなものはあると思いますか?

スティーヴ スマッシュヒットだね!(笑)。

サム (笑)。曲作りに関して言うと、リスナーが次にどんな音が来るのか想像できてしまう曲ではつまらないと思うんだ。だから、メロディにしてもフックにしても、「次にどんな音が来るんだろう?」と楽しんでもらえるようなものが作れたら、それがゴールだと思う。

エド その上で、リスナーが共感してくれる要素があることも大切にしたいんだ。

【インタビュー】ダイソン創業者の息子率いるザ・ラモナ・フラワーズ。日本との親和性、U2のようなスケール感の音楽を語る theramonaflowers_pickup8-700x467