東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)のラテン音楽への傾倒化のアップ……”私がそれを感じたのは、今春発売の最新アルバム『Paradise Has NO BORDER』であった。同アルバムは収録曲中3曲がサルサやモントゥーノをベースに、様々な音楽性を彼ら流の“闇鍋風”に調理されており、南米の音楽の血中濃度が、より濃い印象があった。それらに対し、「アルゼンチンやメキシコのアーティストとの共演や大きなフェスやライブを経ての体感や興奮、自分たちとの融合を作品に持ち込んだ」と初出当時、本人らから訊いたことがある。

そして、今回のニューシングルのタイトルは“白と黒のモントゥーノ”。モントゥーノとは、サルサのリズムに合わせたピアノ奏法のこと。ラテンのリズムで軽快にハネるピアノが心を躍らせ、ステップを踏みたくさせる、あの音楽性のことだ。やはり……。

フィーチャリングボーカルにUNISON SQUARE GARDEN(以下、USG)の斎藤宏介(Vo.&G.)を迎えた主題曲は、サルサをベースに彼ら独自の東京スカとの融合、そこに疾走感やハードボイルドさまでもをブレンドした逸品。スカパラと斎藤との意外な組み合わせが故の化学変化も楽しむことが出来る。

また、「自身の今の活動をダイレクトに反映した」とメンバーに言わしめた他収録曲も、アルゼンチン出身のスカバンドロス・アウテンティコス・デカデンテス参加の“WORLD RUDO CONNECTION”、元来インストバンドである彼らの面目躍如とも言える、光景性たっぷりな叙情的なミディアムインスト曲“Moon Bow”が収められ、どれも彼らならではの表現力を持って展開されている。

そんな今作についてを中心に、トランペットのNARGO、バリトンサックスの谷中敦、ギターの加藤隆志が、最近のスカパラの志向を紐解いてくれた。

Interview:東京スカパラダイスオーケストラ(NARGO、谷中敦、加藤隆志)

【インタビュー】東京スカパラダイスオーケストラ、USG斎藤を迎えた最新作とその化学変化を語る MG_8990-700x1050

「今はまた色々と合体させるスカパラの許容量を発揮する時期でもある」(谷中)

——ここのところラテン音楽への傾倒度が上がってきている気がします。実際のところ、ご自身的には、その辺りいかがですか?

NARGO それらはここ数年、ライブをしに中南米に行く機会が増えたこととも関係していて。その音楽性を生で体感して、あの要素を取り入れない手はないと感じたんです。とにかく強烈だったんで、あそこからの影響は大きかったです。

——スカの裏打ちやダウンビートともまた違ったリズムとの融合が新しい方面性として引き出されており、毎度、大変興味深く聴いています。

加藤 その辺りも、ここ何年か南米ツアーをしてきて実感しているところでもあって。ラテン音楽とスカ等のダウンビートって合わせてみると、実はかなり相性がいいんです。南米で今、流行っていたり、人気のある音楽もプエルトリコやカリブ海出身のアーティストたちだったりするし。けっこうカリブ周りの音楽と南米の音楽との接点ってあるんですよね。

そのカリブ海の音楽の中でも、やはりスカは認知度も高いし、スカやレゲエがベースとして根づいていたりする。そんな進化する過程で南米音楽とミクスチャーされ、今の南米音楽があることを考えると、現在の自分たちの音楽性も近いかなって。凄く取り入れていても楽しいし、今後のポテンシャルも非常に感じますからね。

——そんなラテン音楽の中でも、ここ最近は主にサルサの取り込みが目立ちますが、マンボやルンバ、サンバ等々様々な南米音楽が存在している中、どうして主にサルサ方面にフィーチャーを?

谷中 今回のモントゥーノというタイトルからも、それを想起してしまったのかもしれませんが、そこまで厳密にサルサを意識しているわけでもなくて。今回はその言葉の響きと、ピアノのトゥンバオの感じをキーボードの沖がピアノで弾いてくれるところも出てきたので、その流れでもあったんです。

NARGO とは言え、我々の場合は、あくまでもテイスト的なレベルですよ。いわゆる「そのままモロじゃん」まではいかない。その絶妙な塩梅を探ってるんです。

——それはいわゆる土着的になり過ぎない塩梅?

NARGO それもあるけど、ちゃんとスカをベースに色々なエッセンスを取り入れていく、いわば自分たちのスタイルやアイデンティティの方ですね。やはり根底にスカが無いと何のバンドか、何がやりたいバンドなのかもブレちゃいますから。

——でも、どの曲もキチンとスカパラ風になってます。

NARGO ありがとうございます。正直、南米に行くまでは、国それぞれで独自の音楽がある関係上、そこに我々が手を出しちゃいけないんじゃないかとの懸念もありました。例えばレゲエはレゲエじゃないとダメ、サルサはサルサじゃないとダメって具合に。けっこうみなさん、かたくなにそのような突き詰めた音楽をやってるもので。だけど、それも段々と解けてきたのかなって。色々な国に行ってみると、“これ、色々と混ざっていて面白い”って音楽が沢山でてきましたからね。

——それはいわゆる、これを俺たちが安易に取り入れるのは、オリジナルに対して失礼なんじゃないかとの類?

NARGO そうです。「ジャマイカのスカやレゲエまでだったら許容範囲だけど、それ以上、他の国の音楽は混ぜちゃダメ」って言われるんじゃないか?って。

谷中 そうそう。スカをやってるんだったら、オーセンティックなスカをやってないと認めない、みたいな。

NARGO だったら逆に、めっちゃ色々なものを混ぜてオリジナルにしたら言われないんじゃないか?って(笑)。振り返ると自分たちもそうやってきて、独自の「東京スカ」と呼ばれる音楽性に至った経緯がありましたから。それを最近はラテン方面にも手を伸ばし始めた、そんな具合です。

谷中 実際、いま中南米でのライブやフェスのバンドを見ると、その中南米の人たちもラテンの音楽を崩し始めてますからね。色々なものをミックスさせた、いわゆる「ラテンオルタナ」みたいな。ラテンもロックもその他の音楽性も混ぜて、新しいものを作ろうとの動きも多分に見受けられて。それもスカパラのこれまでの精神とリンクするし。そろそろそれらを爆発させてもいい時期なんじゃないか? そんな、また色々と合体させるスカパラの許容量を発揮する時期でもあるんです。

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