「むなしさが分かるが故に離したくない、離れたくない、その本音を描写してみた」(スカパラ・谷中)
——実際の歌入れは、いかがでした?
峯田 全身の毛穴が開くようでした。あんなに青筋を立てて歌ったのも久しぶりだったし。それこそGOING STEADY後期以来ぶりでしたよ。一気にあの頃が蘇りましたね。次は銀杏BOYZでも久しぶりにこういった歌い方をしてみようと思いましたもん。歌ってみて改めて、自分で自分の特徴を再確認出来ました。銀杏BOYZはそれこそ自己プロデュース・自己完結型なんですが、逆に誰かに自分の身を預けて歌う気持ち良さは、凄くありました。
——峯田くん的にも、カバー曲以外では、他の方が提供してくれた曲を歌うのは初めてだったんじゃ?
峯田 ですね。おかげさまで、自分では気づかない自分の良さに気づかせてもらったり、引き出してもらった感は凄くあります。
川上 僕も実は峯田くんって、自分の言葉じゃない歌をうたってくれるのか? が心配で。他の方の曲を歌う姿がいまいち想像つかなかったんです。でも、峯田くんが歌ったクリープハイプの「二十九、三十」を聴いて、めちゃくちゃ感動しちゃって。それを聴いて、「あっ、これはイケる!」と。どんな曲を歌っても、しっかり峯田ワールドにしてしまうんだろうなって。
谷中 いつもは脚本監督主演まで全て自己で完結している峯田くんに、スカパラに来てもらう時は身ひとつで、主演男優として来てもらう。そこに対して、安心して歌ってもらおうという心づもりはありました。信頼してもらえないと成り立たないことなんですが、信頼してくれているのが凄く伝わってきたので、心置きなく、自分の思う峯田くんの良さを考えながら作りました。僕の中では、峯田君が歌っていた“骨”という曲の存在が大きくて。あの曲は、ギター一本と歌だけで全てを成り立たせていて、他に何も必要としない。あの強さに負けない歌詞を描かなくちゃというのはありました。あの力強さをどうやって活かそうか、それをずっと考えてたんです。
——結果、むっちゃ力強いですよね? この“ちえのわ”の発想はどこから? 色々と手をかけて時間や労力をかけて解いたはいいが、逆にそこに愛着が湧いて、逆に外した、その後の空虚感までもが伝わってきます。
谷中 あれを解いた後に机に2つならべた際の寂しさったらないですよ。たんなる針金が2つ並んだだけになって、急に意味を持たなくなる。そこからの発想ですね。そのむなしさが分かるが故に離したくない、離れたくないと思ってしまう。その踏ん切りのつかなさとジレンマが上手く感じ取ってもらえると嬉しいです。あと、実は知恵の輪って解くのがゴールではなく、また元に戻すまでがゴールなんだそうです。次の人ができるように。そう考えると、今回の歌詞と知恵の輪の存在がぴったり合致するので、今回も歌詞マジックが出たなと(笑)。
川上 あれ、意外と戻せないんだよね。戻そうとすると解くよりも時間がかかっちゃう(笑)。
ブラジルNo.1ラッパーの参加と、以前のフィーチャリング曲の原初的な形のカップリング曲たち
——ここからは谷中さんと川上さんにカップリングの2曲について、語っていただければと思います。まずは“Samurai Dreamers(São Paulo mix) feat.TAKUMA(10-FEET)+EMICIDA”のリミックスですが。
川上 この曲は凄くミクスチャーな楽曲で。前作のアルバムでTAKUMAくん(10-FEETのVo.&G.)に参加してもらった曲に、ブラジルのNo.1ラッパーのEmicidaに参加してもらったんです。
谷中 Emicidaはポルトガル語で「MC KILLER」=「だれにも負けないMC」って意味らしく。彼はむこうのフリースタイルのチャンピオンでもあるんです。この曲はサンパウロで演ったライブの時にも披露したんですけど、凄かったですね、盛り上がりが。その際は、TAKUMAのラップ部分は僕がやったんですが、間の部分では、Emicidaが長めのラップをポルトガル語で、フリースタイルでかましてくれて、とにかく凄い盛り上がりでした。
川上 元々フリースタイル上がりのミュージシャンなんで、言葉がとめどなく出てくるんですよね。
——“Rain Again~縦書きの雨~ Live at DRUM LOGOS (from 2017 TOUR「涙後体前」)”はインストですね。しかもライブバージョンで。
川上 この曲は、以前にEGO WRAPPIN’中納良恵ちゃんをフィーチャリングした“縦書きの雨”という曲があったんですが、それをモチーフにしたインストバージョンですね。このバージョンはライブでしか演っていないので、是非ライブテイクで残したくて。この曲を演る時は息を詰めるような緊張感があって。その辺りも感じてもらえると嬉しいです。
谷中 元々の曲の形ですからね、こちらの方が。インストを最初に作って、それをよっちゃん(中納良恵)用にボーカルアレンジをしたのが、あの“縦書きの雨”だったので。なので、聴き比べてもらうのも面白いかも。
「知恵の輪のように、今後も、お客さん~スカパラ~峯田の間に、くっついて離れられない間柄を作っていく!」(スカパラ・谷中)
——峯田くんが今後、スカパラに期待することはありますか?
峯田 ここまでの規模で、日本はもとより世界各国を飛び回って活躍しているバンドって他に無いと思うんです。世界を相手に、アウェイだろうがホームだろうが自分たちの世界を作り出しちゃう。それはやはり凄いし、スカパラならではかなって。そんなグループがこの日本に居ることが俺は誇りに思っていて。ホント、ずっとこのまんまで居て欲しいです。
——逆にスカパラから峯田くんに今後期待することは?
川上 峯田くんを見ていると、自分が音楽を始めた頃の、やりたいことをやりたいようにやる、その原初や楽しさを想い出させてくれるんですよね。今回も一緒にやって自分たちもそういった部分が呼び起こされたし。が故に、自分たちにとって今回は、これまで無かったタイプの楽曲になった気がしていて。是非ずっとその初期衝動性を貫き続けて欲しいです。
谷中 分かる。イントロでのシャウトにしても、アドリブで峯田くんから発せられたものだったんだけど。なんか「スカパラ、かかって来い!」と言われてたみたいで。興奮して、これまで以上にテンション高いレコーディングになったからね。
——お二方の共演を是非ライブでも観てみたいですね。
谷中 逆に魅せたいよね。是非観てもらえる機会をどこかで作りたいです。その時は、この曲に限らず他の曲も一緒にやりたいよね。今回一緒にやってみて感じたのは、峯田くんの歌の力強さと、それが今後グングン伸びていくその潜在能力に対する確信だったんです。上から言うわけじゃないけど、この声はまだまだ伸びますよ。まだ峯田くんは、自分の歌唱能力の20%ぐらいしか出せてない。あと、この5倍は引き出せる。
峯田 カバー以外で他の方の作った曲を歌ったのが今回初めてだったんですが、今後は人に提供してもらう曲を歌ってもいいかなって。今回、自分では見えない自分を引き出してくれたり、呼び起こしてくれたり、蘇らせてくれたりしてもらえましたからね。やはり、その辺りって自分ではどうしても限界があるんで、それを今回実感しました。もちろん自作の曲を中心に、また誰かと一緒にやったり、誰かの曲を歌っても楽しいかな。
川上 特に今回の“ちえのわ”はフェスで盛り上がるだろうな……。その光景が目に浮かびますよ。
谷中 それこそその際は、お客さん~スカパラ~峯田の間に、「知恵の輪」で、くっついて離れられない。もう二度と離したくないと思える。そんな間柄を作ってみせますから!
RELEASE INFORMATION
ちえのわ feat.峯田和伸
2018.02.21(水)
東京スカパラダイスオーケストラ
[CD]
¥1,000(+tax)
CTCR-40393
[CD+DVD]
¥2,300(+tax)
CTCR-40392/B
<収録内容>
-CD-
01. ちえのわ feat.峯田和伸
02. Samurai Dreamers(São Paulo mix) feat.TAKUMA(10-FEET)+EMICIDA
03. Rain Again~縦書きの雨~ Live at DRUM LOGOS(from 2017 TOUR「涙後体前」)
04. ちえのわ(Instrumental)
-DVD-
01. ちえのわ feat.峯田和伸 (Music Video)
02. LATIN AMERICA TOUR 2017“NO BORDERS” ライブドキュメンタリー(後編)
interview & text by池田スカオ和宏
photo by 大石隼土