2.今年ソウルの名門〈モータウン〉からリリースされた、待望のメジャー・デビュー作『イン・マイ・マインド』は何が素晴らしいのか?
これまでのキャリアが結実したシンガー・ソングライターとしての魅力

ケンドリック・ラマー、カニエ・ウェストらと共演。“ディアンジェロの再来” BJ・ザ・シカゴ・キッドの引力 music160524_bj_2

BJ the Chicago Kid – Church (Explicit) ft. Chance The Rapper, Buddy

BJ The Chicago Kid – Resume ft. Big K.R.I.T.

数多くの客演仕事を経て、文字通り「待望」のメジャー・デビュー作となった『イン・マイ・マインド』は今年の2月にソウルの名門〈モータウン〉よりリリースされた。先行曲となったゴスペルからの引用も多いチャンス・ザ・ラッパー参加のミドルソウル“チャーチ”、そしてトークボックス風のシンセが彩るビッグK.R.I.T参加の“ザ・レジメ”。

BJ the Chicago Kid – Love Inside

BJ the Chicago Kid – The New Cupid ft. Kendrick Lamar

控えめながらもドラマーとしての自分を見せたMVが印象的な、往年のディアンジェロを彷彿とさせるリズムと管の絡みが心地よいネオソウル曲“ラヴ・インサイド”、アルバム終盤にかけてのケンドリック・ラマー参加のラファエル・サディーク“オー・ガール”をサンプリングしたピースフルなメロウソウル“ニュー・キューピッド”、R.ケリーを想起させる女性讃歌を歌ったレトロなバラード曲“ウーマンズ・ワールド”、ピアノと歌声のみの最小編成で聴き惚れてしまう“フォーリング・オン・マイ・フェイス”、そしてラストを飾る“ターニン・ミー・アップ”では、マーヴィン・ゲイ“アイ・ウォント・ユー”のオマージュとなるMVも込みで先代へのリスペクトの詰まった入魂のソウルソングとなっている。

BJ the Chicago Kid – Turnin Me Up

ここで挙げた楽曲以外でも、USトラップ調の譜割りでラップと歌の中間をいくような最新のアプローチに挑戦した曲がある他、曲ごとに異なる顔を見せるバラエティーを披露しながらも、全編BJの音楽的基盤となったソウル/ゴスペルのルーツを感じさせるところが凄いところだ。まさしく温故知新といおうか、『イン・マイ・マインド』というアルバムは、60~70年代のソウル、そして90年代のネオソウルを現代に再引用、アップデートし、それでいて自身のルーツやこれまで客演でつながった人脈の力を活かした、地に足が着いていて、素晴らしくまとまりのある完成度の高いアルバムなのだ。

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