グレアムの脱退と空中分解したブラー。それぞれの課外活動へ。

中でもバンドの関係にヒビを入れる決定打となったのが、03年作『シンク・タンク』のレコーディングでした。02年の『マリ・ミュージック』を契機に非西欧圏の音楽への興味を強めたデーモンの意向を反映させてモロッコに向かったこの作業中に、ついにグレアムがバンドを脱退。以降の彼は『ハピネス・イン・マガジンズ』(04年)などを筆頭にソロ活動を活発化させ、デーモンとは9年間も口をきかない絶縁状態に突入。

Blur –“Music Is My Radar”

Blur –“Out Of Time”

一方、残された3人はブラーとして『シンク・タンク』に際してのツアーこそ行うも、徐々に空中分解。デーモンはジェイミー・ヒューレットとのプロジェクト、ゴリラズを活発化させた他、ザ・グッド・ザ・バッド・アンド・ザ・クイーン、〈XL〉のリチャード・ラッセルと共にコンゴに向かったDRCミュージック、ロケット・ジュース&ザ・ムーンなど様々なプロジェクトで作品を発表。そのかたわら、オペラへの楽曲提供などを経験し、14年には初のソロ作『エヴリデイ・ロボッツ』もリリースしました。

Gorillaz –“Feel Good Inc.”

The Good The Bad And The Queen –“Kingdom Of Doom”

DRC Music –“Hallo ft. Tout Puissant Mukalo,Nelly Liyemg”

Rocket Juice & The Moon –“Poison(feat. Damon Albarn)”

アレックスは03年にオックスフォードシャーに土地を購入し、牛や鶏のオーガニック農場を経営するかたわらチーズの生産を開始。ニュー・オーダーの名前から取った「ブルー・マンデー」というブルー・チーズでは英国チーズ賞を受賞することに。そればかりか、12年には「ブリットポップ」というビールの醸造も(笑)。コラムニストとしてもザ・サンやテレグラフを筆頭に様々な媒体に寄稿し、07年と12年には伝記本も発表します。デイヴはというと、ブラー空中分解後の06年から法律を勉強し始め、後に弁護士資格を取得。選挙にも立候補するものの、落選……。12年からはダーク・デストロイヤーという名義でDJも行なっていたのは知る人ぞ知るところでしょう。

そしてこの間、幾度となくブラー再結成の気運は高まったものの、多くの人は毎回再結成の実現には懐疑的でした。アレックスはすぐに「やろう」と言うはず。デイヴもやりたいはず。グレアムもそろそろ? でも、「デーモンが絶対に首を縦に振らない」のでは……。そう、デーモンの活動は相変わらず好調で、わざわざバンドを始める理由もないほど充実していたわけです。

奇跡の再結成。大規模なワールド・ツアーへ!