突如アナウンスされた最新作『ザ・マジック・ウィップ』
だからこそ、今回の新作リリースがアナウンスされた時の驚きといったら……! しかもプロデューサーは、彼らの黄金期の作品群を担当した朋友スティーヴン・ストリート。中国の旧正月に合わせてロンドンの中華料理店で記者会見が開かれ、ジャケット写真には中国語で「ブラー」「マジック・ウィップ」の文字が。また、歌詞にも随所にアジアにいることが反映されています。グレアム曰く、今回のリリースに関しては家族にも秘密だったそうで、「お父さん、最近紅茶の時間に帰ってこないけど何してるの?」と娘に訊かれたり、アレックスが彼の家に来て「ここのベースはどうする?」と訊くたびにひやひやしていたそう。
サウンド的に言えば、印象的なのはデーモンのとっちらかった思考をコンパクトなポップ・ソングにまとめるグレアムのギター・ワークが、ふたたびバンドにケミストリーを生み出していること。初期の彼ららしいギター・ポップから、ベルリン期のボウイにも通じる耽美なシンセが際立つ曲、最近のデーモンらしいワールド・ミュージックの要素まで、本作にはメンバーがお互いのやりたいことを尊重した民主的なサウンドが広がっています。特に、日本盤ボーナス・トラックとして収録されている “Y‘All Doomed”の後半、4人の演奏が一気に炸裂するジャムはまるで昔の彼らに戻ったかのようで、恐らくこれは本作のハイライトと言えるんじゃないでしょうか。
そして、何よりこのバンドらしいのは、オリジナル・メンバー4人という原点に回帰しながらも、決して王道のブリットポップ的なアルバムにはなっていないこと。レコーディング地の香港などアジアからの影響を感じさせるオリエンタルな雰囲気が前面に押し出され、懐かしいと同時にまだ誰も見たことがないブラーが次々に顔を出す。だからこそ、かねてからのファンも新しいファンも、同様に今のブラーを初体験できる作品になっていることは間違いないはず。まだの人はぜひ、本作で今の彼らを“発見”してみてください。
Blur –“Go Out”
Blur –“Lonesome Street”
Blur –“There Are Too Many of Us”
RELEASE INFORMATION
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