<Body & SOUL>がスタートした1996年といえば、すでにクラブが世に広く認知され、またフランソワ・ケヴォーキアン、ダニー・クリヴィット、ジョー・クラウゼルといった世界的な人気DJたちが活躍し、彼らの功績もあり、ハウスをはじめクラブ・ミュージックももはやアンダーグランドだけのものではなくなっていた時代。クラブ・ミュージックの高度成長期の真っただ中であり、大規模なクラブが生まれ、ビジネスとしても巨大化しつつある時期に、彼らは敢えて、大規模な興業ではなく、再び自身たちのルーツのひとつでもある初期の<THE LOFT>をヒントにし、アンダーグランドでアットホームなパーティ作りをコンセプトに掲げ、<Body & SOUL>をスタートさせる。“パーティの良心”というとなんとも陳腐だが、クラブ・ミュージックが巨大化していく中で、彼らが残したかったもの、後世に伝えていきたかったこと、それが<Body & SOUL>には込められているのではないだろうか。ちなみに<Body & SOUL>といえば、会場のデコレーションはカラフルな風船のみというシンプルなスタイルで知られているが、これはかつての<THE LOFT>のスタイルそのものである。ど派手なデコレーションではなく、このようなクラシックで質素なデコレーションにしているところからも、彼らのメッセージや願いを読み取ることができるかもしれない。
Body & SOUL Live in Tokyo OPEN AIR 2007@odaiba
<Body & SOUL>は安易なトレンドや商業主義に迎合することなく、しかしパーティとしては文句なしの成功を収めた。いや、大成功といったほうがより正確だろう。毎週、日曜日の午後には多くの人が「VINYL」に足を運び、その名声は海を超え、ハウス・ミュージックの聖地とまで言われるほどに、熱を帯びながら広まっていく。ナポリのクラブ「Angels of Love」で初の海外公演がおこなわれたのは、<Body & SOUL>のスタートからわずか2年後のことだ。しかし、2002年、本拠地「VINYL」が「Arc」という別のクラブに改装となり、このクラブのサウンド・システムやコンセプトが<Body & SOUL>に合わないということで、惜しまれつつも、<Body & SOUL>はおよそ6年の歴史に幕を下ろすことになる。こだわりがあるがゆえの、苦渋の決断だったと言えるだろう。
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