「今日は飛ばし過ぎないようにと思っていたけど、それは無理のようです。だから前半から飛ばしていきます、皆さん準備はいいですか?」というMCの後、披露されたのは新曲の“Bohemian Style”。「俺たちは難民のようなものだ。いろんな所に流れて、いろんなジャンルの人とコラボレーションして、いろんな影響を受けて、新しいビートを作って新しいラップを乗せる。」という新曲にまつわる説明を受け、ジャジーなビートが鳴らされる。ビートがヴァースごとに表情を変え、HUNGERのラップが熱を帯び、《いつも何か探してきた/Bohemian Style Bohemian Style》というフックが繰り返されるたび、オーディエンスからのレスポンスもみるみる大きくなっていく。
「今ラップをやろうとしている若い人がいっぱいいますよね。ラップは流行っている、バトルを中心に。でも、90年代にもいろんなラッパーがいたんだ。俺たちはその人たちから影響を受けてラップを始めた。その名前を70人以上も使った、それだけのラップを作ったのがこの曲。」というMCで、次に披露される楽曲に気付いた観客からの声援が割れんばかりに響き渡る。その言葉通り、RHYMESTERやキングギドラから吉幾三まで、日本語ラップの歴史を彩るアーティストの名前を連呼する日本のヒップホップ史に残る名曲、“JAPPCATS”だ。HUNGERの声が熱を帯びるにつれて、ビートも加速していき、最後にこの日の主宰である韻シストのサッコンとBASIの名前を連ねて会場を盛り上げる。「次はもっとテクニカルなラップをします」という言葉に続いた“舌炎上”では、HUNGERの超絶スキルのライミングとフロウにオーディエンスが何度も沸いていた。
HUNGER – JAPPCATS
「<NeighborFood>っていうのは、日本語に訳せば『隣の晩ごはん』でしょ? そして、Neighborっていうのをローカルとするなら、ローカル・フードってこと。俺たちは仙台で97年くらいからずっと活動してきたけど、面白いのは、音楽だけじゃなく食べ物屋さんだって地元で長く続けている人達がいっぱいいて、そんな人達がシーンを作っているっていうこと。仙台っていうとまだイメージしにくい人もいっぱいいると思うけど、俺たちの活動を通じて仙台という街にいろんなイメージが付けばいいと思って活動してます。」仙台をレペゼンする真摯なMCを皮切りに、ここからGAGLEのライブはメロウなセクションへと移行。Bonnie Pinkの清廉なヴォーカルがループする“コロナ&ライム”では、会場中がロマンティックなサウンドに揺れていた。
GAGLE feat. BONNIE PINK 『コロナ&ライム』
最後には、同じように地元に根差した活動を続けてきた韻シストへの謝辞を挟んで、代表曲の“雪ノ革命”へ。《北からしみじみ広げてきた範囲/持ち帰る仙台に雅》というパンチラインを《持ち帰るそれぞれのHOMEに雅》と言いかえたこの曲のパフォーマンスは、大阪の雄と仙台の雄が東京で集った今夜のパーティーを象徴するようでもあった。