昨年、メジャーデビュー15周年を迎えたケツメイシ。昨夏には、それを祝うべく日産スタジアムにて<ケツメイシ 15th Anniversary 『一五の夜』 ~今夜だけ練乳ぶっかけますか?~>を敢行7万人を動員し、加え、同日には、残念ながらチケットを入手出来なかった方や会場に来られなかった方のために、全国各地でパブリックビューイングも行われ物凄い観客動員数を記録したことも記憶に新しい。
そしてライブでは、事前にファンからリクエストを募った、歌って欲しい楽曲の上位20数曲が歌われた。実際、その中には夏の歌も多く、しかもそれらのほとんどを皆が知っているという、彼らの楽曲自体の浸透度にも驚いた。
そして、その順位や歌が発表される度に起こる大歓声から、その夏曲の人気が高さや需要の高さにも改めて気づかされた。そう、ケツメイシの夏歌は、とても高い人気と需要があるのだ
ケツメイシ / 『15th Anniversary 「一五の夜」 ~今夜だけ練乳ぶっかけますか?~』ダイジェスト
ケツメイシの軌跡を振り返る
ところでケツメイシとは、一体どんなグループなのだろう? いまさら感はあるが、改めて以下に軽く説明しよう。
デビューから2005年『さくら』の大ヒット
1996年頃に現メンバーのRYO(MC)、RYOJI(Vo)、大蔵(MC)、DJ KOHNO(DJ)が揃い、活動を開始したケツメイシ。1999年12月にシングル『こっちおいで』をインディーズよりリース。2001年4月発売のシングル『ファミリア』からはメジャーにフィールドを移し、ヒップホップやダンスホールレゲエ等をベースに、歌とラップ(orレゲエの1ジャンル、ラガマフィン)を融合させた、その聴きやすく、馴染みやすいフックやメロディーを擁した「歌」にて、世間を席巻。結果、人気をお茶の間にまで広げていった。
2005年2月発表の『さくら』では、自身初のシングルチャート1位を獲得。同曲を含むアルバム『ケツノポリス4』は、J-POP史上燦然と輝く累計200万枚を超える大ヒットとなり、国民的アーティストと呼ばれるまでになる。
去年はメジャーデビュー15周年を迎え、7万人を集める大規模なコンサートを大成功に収め、10月には10枚目のオリジナルアルバムをリリース。今年に入ってからも、3月からは全国7大都市を回る大規模なアリーナツアー<KTM TOUR 2017 幻の六本木大サーカス団「ハッキリ言ってパーティーです!!」>を敢行し、現在はそのラストスパート中。この7月19日(水)には、話題のニューシングル『はじまりの予感』(DHC[F1]ミネラルベースメークシリーズCMタイアップ曲)が発売され、精力的な活動を行っている。
レゲエ・ヒップホップ+J-POPの先駆者
彼らのレゲエやダンスホール、そしてヒップホップといった、いわゆるクラブミュージックの類を、J-POPテイストに味付け、無意識だったとは思うが、一般層にまでそのメソッドを広げていったことは、特筆に値するもの。今の音楽シーンでは、常套になっている「歌+ラップやラガマフィン」「メロディアスなラップやラガマフィン」を用い、それを当たり前のように、お茶の間にまで浸透させた功績は大きい。
彼らが出てきた頃、世の中のクラブミュージックは、ある種のハーコースタイル(ヒップホップの派生ジャンル)が主だった。いわゆるクラブミュージックをそのままオーバーグラウンドのシーンに持っていく。それがかっこいいと目されていた。しかし、そのカウンターのように現われた彼らは、聴きやすさや親しみやすさを武器に、それをぐいっと自分たち側へと持ってきた。もし、彼らのヒットや彼らが切り開いたシーンへの受け皿の準備がなかったら、後のnobodyknows+やFUNKY MONKEY BABYS、九州男やC&K、GReeeeNの台頭や、後の湘南乃風のブレイクもなかったかもしれない。
彼らの人気のメカニズムをもう少し探ろう。それはやはりリリックだ。ストリートではなく、身近や親しみのある情景や信条をいささか真摯に伝える。そして、カッコ悪いところも曝け出して、それが実に共感を得ている。これまでは憧れの対象であったヒップホップをより身近なものにし、市井の人々の心証と重ねやすいものにしていく。これも現在では当たり前の表現方法だが、彼らより以前にそれを用いていたアーティストが居たかどうかは、はなはだ疑問である。
また、サウンド面も重要なファクターだった。おバカな曲やノリの良い曲だけでなく、どこか郷愁や哀愁を誘い、みんなが体験したかのような光景を眼前に広げてくれ、物語を広げてくれるようなサウンドも三位一体を見せ、彼らの歌の可視化を手伝った。特に郷愁・哀愁性や光景を広げてくれる部分では彼らはピカイチ。それらは、初期の頃より二人三脚でその情景作りに寄与してきたトラックメイカーのYANAGIMANによる功績も大きい。彼の可視化させるかのようなサウンドや歌世界に寄り沿い、それを更に広げていくかのようなバックトラックは、サンプリングや打ち込みから、情景性豊かなストリングスや鍵盤、ホーンを始めとした生楽器やアコースティック楽器等もふんだんに取り入れられ、一つのバックミュージックとしてもキチンと成立させているほど。この辺りもイノベーターとして特筆に値する。