【ライブレポ】Nabowa、最新作『DRAWINIGS』の世界観をクリエイティヴ集団DRAWING AND MANUALと描き出す

続いて、新作に収録されている2曲の歌モノ・ナンバーの中から1曲、沖縄生まれの17歳、山田なづが迎え入れられる。歌入れ以来の再会だという両者の「お久しぶりです」な会話もごくごくフラット。山田のラップと歌メロを横断するボーカルが特徴的な“My Heartbeat (Belongs To you)”がライブの中で良いフックになっていた。

バイオリンが主旋律を奏でているとは思えないほど、ジャムバンド的な“Seven Seasons”には、スニーカーのディテールがわかるほどの寄りのカットに驚きつつ、スニーカー視点で前を滑走するスケートボーダーを追うような映像に釘付けに。スケートボードカルチャーの限定的なイメージから解放される音と映像に瞠目する。

Nabowa “My Heartbeat (Belongs To You) feat. Naz Yamada” (Official Music Video)

その余韻に浸る間もなく、車のフロントからの爆速映像と、唯一のノイジーなまでの高速ハードチューン“U4”が醸し出す、重力を感じる疾走感は、今回の組み合わせの中で最も体感的だった。

フロア全体がうねりを増すなか、山本一人でルーパーを使い、五重奏以上のリアルタイム・アンサンブルを作り上げ、そこに一人一人ゲストも含めた音が重なって行くセッション・パートはむしろ力技ではない繊細さを保ったのも見事。

全員でのMCタイムはVJがメンバーへの質問をその場で書き、それを背景に投影して答えるという、微笑ましい時間が経過。食べ物や料理寄りの話題多めの脱力タイムを経て、終盤は栗原がサックスとフルートを交互に吹き、音源でのジプシーブラスのムードを醸成、景山のギターがラテン〜レゲエ・テイスト強めの“Casablanca”、そしてすでにMVが公開されている“Af-roman”は、堀川の唸る低音、アフロ・パーカッションが、ひたすら階段を駆け上がる男の映像と相まって、エンドレスな快楽と同時に、「なぜこの人は駆け上がり続けているのだろうか？」という、答えのなさそうな映像の力にも同時に引き込まれる。

そして体を揺らしている間にだんだん、映像の意味を放棄している自分に気づいた。映像に意味を追求する理性と、グルーヴに身をまかせる感覚がせめぎあって、最終的にはダンス優位に。フロアは最初からダンス優位の人も、次第にテンションが上がって行く人も様々で、刻々と変わるリアクションの自由度を新しい形で体感。フィニッシュとともに今日最大の拍手と歓声が起こり、ステージ上の６人も輝かしい笑顔だ。

Nabowa “Af-roman” (Official Music Video)

フルートがネオソウルなムードを醸しつつ、リズム的にはプログレッシヴロックな“Swan”で、演奏そのものは終了。メンバーが去ったステージには、TOSHI-LOWがボーカルで参加した“夢の欠片”が、この日のライブに関わった人々のクレジットを映し出した映像とともに流れ、さながら映画のエンドロールのような役割を担っていた。

Nabowa “Swan” (Official Music Video)

9月からアルバムを携えたツアーに出て、再び11月18日に東京では隣のWWW Xに戻ってくる、ゲストもさらに増える予定だという。アプローチとしては斬新、でも斬新という言葉が古臭く感じられるほど、NabowaもDRAWING AND MANUALの面々も、モノ作りをもっと自然に捉えていると感じた。「楽しんでほしい」というシンプルな願いを叶えるための本質的なタフさのなんと潔いことだろう。心から楽しい夜だった。

text by 石角友香
photo by 齋藤剛志