同時代のインディ・アーティストたちと手を取り合った00年代の躍進。
こうしたアーティストの活動の広がりに間接的に影響を与えていたのは、00年代に北米を中心に人気を博していった、室内楽の要素を取り入れたインディ・アーティストたち。00年代前半から中盤には、アーケイド・ファイアを筆頭にスフィアン・スティーブンスやアントニー・ヘガティ、もしくはアーケイド・ファイア作品などのストリングス・アレンジャーとして知られるオーウェン・パレット(ファイナル・ファンタジー)らが登場。
中でもアーケイド・ファイアはサード・アルバム『The Suburbs』で11年にグラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞して一般層にも認知されていくことになったが、その後ヴァイオリン担当サラ・ニューフェルドが13年と15年に発表したソロ2作『Hero Brother』、『The Ridge』は、バンドでの音楽性よりも音響的な広がりが感じられる、まさにポストクラシカル的な作品だった。
Arcade Fire – Rebellion (Lies)
Sufjan Stevens – Chicago
Owen Pallett – Lewis Takes Off His Shirt
Sarah Kneufeld – The Ridge
また、ポストクラシカルの代表格のひとり、ニコ・ミューリーはビョークやシガー・ロスのヨンシーの作品などに参加することで、00年代以降、時代を象徴するアレンジャーのひとりとなる。ニコ・ミューリーは今年6月にスフィアン・スティーブンスやザ・ナショナルのブライス・デスナーらとのコラボレーション・アルバム『Planetarium』も控えていて、こうしたアーティストとの交流はますます広がりつつあるということなのだろう。
また、ポストクラシカルの源流のひとつ=アンビエントはエリック・サティの『家具の音楽』などにルーツがあり、これはジェイムス・ブレイクのようなベース・ミュージックから登場したSSWとも同じ影響源。以前ジェイムス・ブレイクに話を聞かせてもらった際に、自分のソングライティングに影響を与えたアーティストのひとりとして、真っ先にサティの名前を挙げていたのが印象的だった。こうして同時代のポップ・ミュージックと手を取り合うことで、ポストクラシカルはクラシック・リスナー以外にも認知を広げていった。
Björk – Oceania
Jónsi – Go Do (Live at the Wiltern)
James Blake – The Wilhelm Scream