来年ここ日本で開催されることが大決定した<Red Bull Music Academy(レッドブル・ミュージック・アカデミー)>。その精神の本質を表現する<Red Bull Music Academy Weekender Tokyo(以下、RBMA Weekender)>が、去る11月1日から4日間かけて都内複数箇所でイベントを開催。あらゆるジャンルを網羅したイベントには、100組を超える国内外の素晴らしいアーティストが集結しました。
今年で15周年を迎え、過去に〈Brainfeeder〉主宰のフライング・ロータス(Warp Records)、〈Stones Throw〉の看板アーティストであるアロエ・ブラック、その他ハドソン・モホークやオンラ、ドリアン・コンセプト等、いま各国で注目を集める多くのアーティストを輩出した<レッドブル・ミュージック・アカデミー>による“創造性を刺激”する音楽カルチャーの祭典とは? 7つのイベントを徹底レポート!
テクノからクラシックへ。
築地本願寺に響いたヘンリック・シュワルツの大いなる試み
2013.11.01(FRI)
@築地本願寺
<OPENING PARTY>
オープニング・パーティが開催されたのは、なんと「築地本願寺」。クラブ・ミュージック・リスナーたちにはお馴染みのドイツの奇才、ヘンリック・シュワルツが27人もの交響楽団を率いて、オーケストラ向けにアレンジした楽曲を披露するというスペシャルなライヴがおこなわれた。日本を象徴する寺院という場所で、これまでにない独創的なライヴを披露するという意味においては、まさに“創造性を刺激”する音楽カルチャーの祭典というコンセプトを掲げる<RBMA Weekender>を体現した素晴らしいオープニング・パーティだったように思う。
今回のライヴは、単にクラブ・トラックをオーケストラを使ってカヴァーするという類のものではなく、オーケストラで演奏するためにスコアをいちから書き直し、また「コンサートホールのためのダンス・ミュージックではない」という彼の言葉に現れているように、これまでの彼の音楽(つまりクラブ・ミュージック)という概念を完全に取り払ったものを目指している点も非常に興味深いところであった。ということを僕は頭で理解していたものの、ライヴがスタートして数分間の間は、やはりどこかで固定観念を破れず、キックやベースの音、いつもの彼のトラックのようなねっとりとしたサイケなグルーヴがないことにある種の違和感を感じていた。が、ある瞬間、これを(クラブ・ミュージックではなく)クラシックとして聴いてみようと思ったら、いま聴こえてくる音楽は僕が知っているどんなクラシックの楽曲にも当てはまらないまったく独創的なものであると気がついた。ヘンリック・シュワルツは今回のこのプロジェクトを披露するために、およそ3年もの試行錯誤を繰り返している。コンピュータを使った音楽制作においてキャリアを築いてきた彼は、もともとクラシックへの素養があるわけではない。だが、だからといって彼がクラシックの楽曲を作れないかと言ったら、そうではないことを彼は証明してみせた。むしろその道をやり続けてきたアーティストにはないユニークな視点から、固定概念に邪魔されず、自由度の高いユニークなサウンドを作れるのではなかろうか。またその逆もきっと同じように面白い試みになるだろう。今回、ヘンリック・シュワルツが勇気をもって飛び出した地平には、まだまだいろいろな可能性があるような気がする。
(text by Naohiro Kato)
(photo by Pere Masramon & Tadamasa Iguchi / Red Bull Content Pool)
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