2013年のヒップホップ・シーンをざっくり解説。ラン・ザ・ジュエルズとダニー・ブラウンがシーンを沸かす、ヤバイわけ！

ラン・ザ・ジュエルズ――2人の才能が意気投合、実験と挑戦を経て、原点回帰へ。

まず知って頂きたいのが、昨年リリースされたエル・Pの『Cancer For Cure』と、キラー・マイクの『R.A.P. Music』（プロデュースは全てエル・P）は、どちらも2012年の年間ランキングにこぞって選出されるほどの高い評価を得たということ！ヒップホップ・ファンを唸らすスキルフルなラップに、ロック～ジャズ～エレクトロニカといったジャンルを横断したサウンドのマッチングが絶妙だったと言うしかありません。玄人好みのストレートなラップ・スタイルも、メジャーでは受け入れられず、インディに転向したアトランタ出身の黒人ラッパー、キラー・マイクと、トレンドから離れて、エクスペリメンタルで攻撃的なサウンドでアートを志向する、NYの白人ラッパー／プロデューサーのエル・ピーの組み合わせは、しいて言うなら、ドロップアウトしたインサイダーとマッドなアウトサイダー。この2人の邂逅が前述の条件を満たす以上の化学反応をみせ、傑作を生んだのです！　ましてや、今年に入って、その2人がラン・ザ・ジュエルズというユニットを結成したというのだから、その時点でマスターピースを作ることが約束されたようなもの。案の定、発表されたデヴュー作は素晴らしく、息の詰まるような緊張感を持つ2人のラップのかけあいに、重厚感たっぷりのハードなトラック・・・しかしながら、どこまでもダンサブルで、かつユーモラスな側面も併せ持つ、2人のヒップホップ愛が溢れた作品になったのです！

El-P “The Full Retard”
Killer Mike “Reagan”

ダニー・ブラウン――ジャンルを跨いだ確信犯！
ヒップホップ・アイコンとしても痛快なその魅力。

そして、ミックステープとして当初フリーで発表されたアルバム『XXX』が高い評価を得て年間ベストを飾り、一躍シーンのトップに躍り出たダニー・ブラウン。歯欠けでパーマを当てた髪型もチャーミングな彼は、ユニクロのCMにも起用された（上動画参照）ことでも話題になりました。ブルックリンを拠点とするインディ・レーベル〈Fool’s Gold〉と契約し、様々な活動を行う中で、待望視されていたアルバム『Old』はレーベルとの諍いからかリリースが長らく待たれていたものの、しびれを切らしたダニーが「リークさせてやる！」とツイートした事が効いたのか、無事10月にリリース。キャッチーだった『XXX』と比べ、『Old』はダウナーな前半部から進むにつれ、最高にレイヴィーでドラッギーへ展開していく吹っ切れた内容に。その名もズバリな曲“Dubstep”をはじめ、クラブ・シーンからはラスティ、ピュリティ・リングを、さらに英シンガーのCharli XCXを起用するなど、バラエティに溢れる面々が揃いながらも、最終的にはダニーの圧倒的なキャラクターが立った素晴らしいラップ・アルバムに！

・・・そんなシーンの盛り上がりを受け、先月ダニー・ブラウンの『Old』の国内仕様盤がリリースされ、12月14日にはラン・ザ・ジュエルズのセルフ・タイトル作の国内デラックス盤のリリースが決定しました！　どちらも、より作品を楽しむための歌詞対訳（嬉しい！）がついた形で、ラン・ザ・ジュエルズのアルバムに至っては豪華なボーナス・トラックが6曲も収録されます！　今年の年間ベスト選出必至なこの2枚の注目作を抑えて、2013年のヒップホップ・シーン、おさらいしましょう！

text by Yu Nakazato

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