「インターネットの発達で世界が近くなった」とは言っても、まだまだ各国ならではの文化や土地ごとのスターが存在する現在。中でもベルギー生まれのラッパー「ストロマエ」ことポール・ヴァン・ハバーは、マドンナやカニエ・ウェストらもファンを公言し、近年はUK~北米へとぐんぐんその人気を拡大している欧州のスターのひとりです。そして12月25日(金)には、日本でもこれまでなかなか体験することの出来なかったライヴの魅力を凝縮したDVD作品『ラシーヌ・カレ・ライヴ』(輸入盤のみ:配信版は発売中)の流通がスタート。そう、このタイミングを逃すのはもったいない。今回はフランス語圏を起点に活躍する稀代のマエストロ、ストロマエの魅力をご紹介!

マドンナやカニエも虜!稀代の欧アーティスト、ストロマエの魅力とは? muisc151225_stromae_9

『ラシーヌ・カレ・ライヴ』ジャケット

ダフト・パンクよりも有名?! フランス語圏を中心に広がる圧倒的な人気

ストロマエの特徴は、とにかくフランス語圏~ヨーロッパでの知名度がものすごいこと。なんと13年の2作目『ラシーヌ・カレ』は、ダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』を抑えてベルギー&フランスの年間ベスト・セールス作品を獲得。14年には“タ・フェット”がサッカー・ワールドカップのベルギー代表オフィシャル・ソングに起用され、エリック・カントナ(サッカー)やダニエル・クレイグ(『007』シリーズ)ら錚々たる面々が飾ってきたフランス版GQの表紙にも抜擢。その噂は英米にも飛び火して、前述のようにマドンナやカニエ・ウェストも彼のファンを公言している他(カニエは15年のコーチェラでステージに飛び入り!)、人気アカペラユニットのペンタトニックスもYouTubeで3億回以上再生されている“パパウテ”をカヴァー。近年はロンドンのハマースミス・アポロや、NYのマジソン・スクエア・ガーデン(ソールドアウト)でもライヴを行なっています。

Stromae – ta fête

Stromae – Tous Les Mêmes

アーティストとしての魅力と13年作『ラシーヌ・カレ』での進化

「ストロマエ」というアーティスト・ネームは「マエストロ=芸術の大家」の倒語。ハウスやエレクトロ、ユーロビートなどを飲み込んだ楽曲に、シャンソンに近いラップを織り込む姿は、まるで“エレクトロをまとった現代のジャック・ブレル”とも言えそうで、同じフランス語圏の次世代スターことZAZとは対照的にダンサブルな楽曲は、きっとクラブ・リスナーにも刺さるはず。中でも13年の2作目『ラシーヌ・カレ(平方根)』は、その魅力を進化させ、さらに歌詞面で自身の人種的なアイデンティティと結び付けた傑作でした。というのも、タイトルに使われている「平方」とは「2乗」のこと。そして「平方根」とはその根っことなる数値。つまり『ラシーヌ・カレ』とは、ベルギー人の母親とルワンダ人の父親の子として生まれたストロマエが絶対に持ちえない「人種的な根幹」のことで、代表曲の“パパウテ”では、「パパ、どこにいるの?」という子供の視点と、大人の視点とを横断しながら自身のアイデンティティと対峙(ストロマエは94年のルワンダの大虐殺で父親を亡くした経験がある)。アーティストとしての新たな表情を見せているのです。

Stromae – Papaoutai

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