夏フェスの出演アーティストが続々発表され、大きな盛り上がりを見せる今日この頃。徐々に気持ちがライブ・モードに切り替わりつつある人も、きっと多いのでは? とはいえライブとは、何もフェスだけではありません。もうひとつの主役=TVライブの最高峰が、「プラグをはずしたアコースティック編成で行なわれる」MTVの人気企画『MTV Unplugged』。今回MTVでは、最新作となる『MTV Unplugged:VAMPS』の放送を記念して、歴代の名エピソードを集めた『MTV Unplugged SPECIAL』のオンエアが決定。ならばいざということで、知っているようで意外と知らない、『MTV Unplugged』の歴史をおさらいしてみましょう!

企画スタートのきっかけはボン・ジョヴィだった

クラプトンやニルヴァーナも出演『MTV Unplugged』の歴史を振り返る Bon-Jovi

Bon Jovi

今でこそ数々の名演を生んで人気企画となったこのシリーズ。その始まりはMTVヨーロッパで、ボン・ジョヴィのジョン・ボン・ジョヴィとリッチー・サンボラが89年の『MTV Video Music Awards』(以下VMA)で披露した“Livin’ On A Prayer”と“Wanted Dead Or Alive”のアコースティック・パフォーマンスにヒントを得たスタッフが始めたもの。ちなみにこのライブは、11年に「最も印象的だったVMAでのライブ・パフォーマンス」を決めるファン投票が行なわれた際、95年のマイケル・ジャクソンと人気を二分した『VMA』史上に残る名演のひとつ。

シリーズの人気に本格的に火がついたのは、92年のエリック・クラプトンの出演から。彼が自分の子供の死を経験して作った“Tears In Heaven”を披露する舞台として選んだことで、『MTV Unplugged』の知名度は一気に上昇。以降も錚々たるゲストが出演し、レギュラー放映終了後も人気企画として不定期で新エピソードが放送され、シリーズ開始のきっかけを作ったボン・ジョヴィも、07年に出演して話題になりました。

Eric Clapton – Tears In Heaven

プラグをはずして見えてくる、それぞれのアーティストの本質

『MTV Unplugged』が大きな話題を呼んだのは、ロックやエレクトロニックな音楽性を誇るアーティストたちが見せる、普段とはまったく異なる表情の数々が魅力的だったから。収録したものの中から、Unpluggedに相応しい基準をクリアしたものだけがオンエアされるため、登場するのはハイクオリティな生演奏と歌声だけ。楽曲そのもののよさを再認識したり、普段はなかなか気づかない別の一面が垣間見えたりすることも多く、グランジ・ムーヴメントの渦中にいたニルヴァーナの回は、カート・コバーンのソングライティングそのものに人々の意識が向かうきっかけに。出演したパフォーマンスの多くは音楽/映像作品としてもリリースされ、ニルヴァーナの『MTV Unplugged in New York』は、カートの死後、彼らにとって初となる全米1位をもたらしました。

Nirvana – All Apologies(MTV Unplugged)

もちろん、ライブ収録だけに時にはハプニングも。96年のオアシス出演時には、リアム・ギャラガーのドタキャンにより、兄ノエルが全編でヴォーカルを担当することに(バンド・メンバーも演奏で参加したものの、この時はノエル・ギャラガー名義に)。放送回によってはスペシャル・ゲストが登場するのも見所のひとつで、そのすべてを至近距離で記録した、息遣いまで聞こえてきそうな映像もこのシリーズの醍醐味のひとつでしょう。

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