まるでミーカ？フレディ・マーキュリー？ポップ職人ビッケブランカが生み出しだデビュー・アルバム『FEARLESS』

自身のヒーローたちに敬意を捧げたデビュー作『FEARLESS』の魅力

ビッケブランカ“Moon Ride”

ビッケブランカ“Take me Take out”

今回リリースされるデビュー・アルバム『FEARLESS』は、彼が過去の作品でも披露してきた様々な音楽性が、より豊かにスケールアップして詰め込まれた野心作。引き続き自身で作詞／作曲、そしてアレンジのほぼすべてを担当し、作品全体の構成を意識したアルバムならではの魅力を広げている。まるでミュージカルの幕開けを告げるような１曲目“FEARLESS”を経て、序盤は華やかなファンク／ポップ・チューン“Moon Ride”、“Take me Take Out”、“Want You Back”、“Stray Cat”を連打。

中でも“Moon Ride”と“Take me Take Out”には、ホーンアレンジとサックスで、レキシ、Ego-Weappinのレギュラーメンバーである武嶋聡や、在日ファンクの村上基が参加し、ホーンセクションがアルバム序盤に華やかさを添えている。とはいえ、ビッケブランカらしい多様性が顔を出すのはここから。６曲目“さよならに来ました”では一転、切ない歌心を全開に。続く“Postman”では英米の70年代ソフト・ロックを思わせるメロディを優しく歌い、“Broken”ではどこかエミネムを思わせるフロウでラップを披露。

その後もクイーンを思わせる珠玉のメロディワークが印象的なシングル“Slave of Love”などを挟んで、最終曲“THUNDERBOLT”ではアルバム・タイトル『FEARLESS』にも繋がるように、《なにもないんだと／もう恐れるものなど／starlight／その勇気なら持っているだろう》と宣言してアルバムの幕を閉じる。そして、何より印象的なのは、ストリングスが高揚感全開で鳴り響くこの曲のアウトロに挿入されているこんなセリフだ。

《Freddie said we are the champion, Michael said we are the world, Mika said we are golden, I say we are the thunderbolt》（＝フレディ・マーキュリーは「we are the champion」と言った。マイケル・ジャクソンは「we are the world」と言った。ミーカは「we are golden」と言った。ならば僕は、「we are the thunderbolt」と言おう）

Queen – We Are The Champions

USA for Africa – We are the World（マイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーの共作）

MIKA – We Are Golden

ミュージカル・テイストの楽曲はこれまで以上にドラマチックになり、しっとりと聴かせる曲はより表現豊かに。かつて彼を魅力したヒーローたちがそうであったように、恐れることなくポップ・ミュージックのど真ん中に突き進んでいくような雰囲気が作品を覆っている。

全編を通してまるで、古今東西の音楽が飛び出すミュージカル・スタイルの音楽ジャーニー。12曲それぞれが異なる表情を持ち、その幅広さに心奪われているうちに、おもちゃ箱をひっくり返したようにカラフルな世界観に引き込まれてしまう。９月からは地元愛知県から、アルバム・リリースに際してのワンマン・ツアーも開催予定。ここでもきっと、キラキラと輝くポップ・ミュージックの魅力をいっぱいに宿したライブを見せてくれるはずだ。

text by 杉山仁