――本作をあえて3つの短い単語で表すとどのようなものになるでしょうか。

ヘビー、ダーク、あとはアグレッシブだな。

――そのままのような気もしますが(笑)、何故その3ワードなのかもう少し説明してもらえます?

確かにそのままだね(笑)。このアルバムの内容もダークだし、あとは・・・2006年の後、本当に沢山のことが起こったんだ。2人目の子供が生まれた時俺は50歳で、ミドルエージクライシス(*中高年男性の鬱病や不安症のこと)を迎えた。家族を持ったことで人生が大きく変わってしまって、葛藤してたんだ。「その前の人生は最高だったのに」みたいな感覚が芽生え出してね。彼らの事はもちろん大好きだけど、それで鬱になってしまったんだ。それから3年、ずっと治療してた。そしたら妻もひどい産後鬱になってしまって、彼女も治療することになって・・・2人とも、全然違う人間になってしまったんだ。ケンカもしょっちゅうで。だから前のアルバムの後の3、4年の2人の関係は最悪だった。本当にひどかったよ。それが少し良くなり始めてから、また曲を書き始めたんだ。書いて、そこからまた何ヶ月か曲を書かなかったり、ていうのを繰り返した。だから最初の方で書いた曲には、その時の鬱とか、大変だった3~4年のことが曲に反映してる。それでダークでヘビーなんだ。アグレッシブに関しては、自分がその時期に殆ど常に怒っていたから。もちろん毎日じゃないよ。穏やかだった時もある。でも、その穏やかだった時期でさえも、完全に明るいものではなくてダークだったんだ。何が自分の内面や周りで起こっているのかを常に理解しようとしていたから。結婚して21年になるし、今は素晴らしい結婚生活を送っているけど、当時はすごく苦戦してたんだ。口論も沢山したし、お互い幸せじゃなかった。それがアルバムに表現されている。だからその3ワードなんだよ。

――制作面において、今までに比べて変化した部分、あるいは逆に変わらない部分があれば教えて下さい。

曲の書き方は変わってないね。全てピアノからスタートして、メロディ、チューン、コーラス、バース、全てを自分で作る。曲の構成も含め、まずは全部ピアノで作って、それからノイズやプロダクションの作業に移るんだ。それは長年変わらないまま。ほぼ変わってない。テクノロジーが少し変わったくらいかな。エレクトロ・ミュージックで活動するなら、もちろん毎回テクノロジーに関わるわけだけど、だからこそ、プラグインとかシンセとか、何か新しいテクノロジーが出てくれば、もちろんそれを使い始めるし、それは変化に繋がるからね。それが新しいサウンドや新しい操作方法に繋がる。だから変化し続けてはいるけど、自分がいる領域はあまり変わってないな。新しいテクノロジーに挑戦するくらい。曲をピアノで書くのは変わらないし、テクノロジーはそのサウンドをベターにするためにプロデュースで使うだけだからね。今回違ったのは、作業の途中半分でアメリカに移住したこと。今は新しいスタジオだし、機材も新しいんだ。それが違いだね。あとは、鬱になったのも大きな違いをもたらしたと思う。何も出来なかったし、少なくとも3、4年は曲を全く曲を書かなかった。それはキャリアの中で初めてのことだったし、かなり気分屋になって波が激しかった。まるで全く違う人間になったみたい。そこは変わった部分だったね。

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――あと、前のインタビューでボーカルのことも言ってましたよね?

あ、忘れてた(笑)、よく覚えてたね(笑)。今回は、ボーカルがもっとナチュラルなんだ。俺は自分の声が好きじゃないから、いつもリバーブやハーモニーなんかを加えて声をベターにしてたんだけど、今回はエイドと口論になったんだ。彼が、あまりエフェクトを使わずにもっと俺も声を前面に出せと言い出してね。せっかく今まで上手く隠してきたのに・・・(笑)。何が良いと思ったのかわからないけど、彼がそうしろと背中を押すから、今回は彼の意見を採用したんだ。だから、エフェクトがかなり少なくて、もっと俺の声が剥き出しになってる。今のところ上手くいってるみたいだけど、まだ慣れてないんだ。昨日もラジオ・セッションがあって、初めて自分の声だけで歌ったよ。変な感じはしなかったから、多分前よりも慣れてきたんじゃないかな。

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