――ペット・ショップ・ボーイズが昨年のリリース時に「最近のポップ・ミュージックはすごくエゴに駆られているように思う」と 発言して話題を呼びましたが、貴方は最近のポップ・ミュージックについてどう思いますか?

うーん、これも答えるのが難しい。ポップは殆どが使い捨てなんじゃないかなって思う。出て来て、しばらく存在して、消えて、忘れられる。ポップの殆どがそう。でも、稀にすごく特徴のあるものが出て来ると、逆にそれは永遠に残り続ける。チャートからは消えても、その印象は消えない。それが人に大きな影響を与えるんだ。かなり稀な話だけどね。悪いって言ってるんじゃなくて、受け入れが難しいってこと。まあ、あんなに沢山新しいバンドや曲が次々と出て来るわけだから、埋もれてしまうってのは仕方ないことだと思うけど。ポップスターは毎月入れ替わる。人間、皆新しいものに飢えてるからね。音楽に限らず。だから、ミュージシャン達なんて簡単に入れ替えられてしまうんだ。そんな中で、長くキャリアを築いていくのは大変。世の中が、同じものが長く存在するのを歓迎してないわけだから。だから、新しいものを発明し続けていく必要があるんだ。音楽を表現する新しい方法を見つけないと。そうしないと、新しい世代と繋がるのはどんどん難しくなる。ポップ・ミュージックは、それに打ち勝つ必要があると思うんだ。

この業界にきて、2年後にはアル中やドラック中毒になる人は山ほどいる。最初はこれまでで最高のアーティストだと言われ、シングルが成功しなかったら、途端に話題にされなくなる。そこからお金もなくなって、人生は最悪。悲劇だよね。それは若いほど精神的に辛くて、乗り越えるのが大変なんだ。でも俺はラッキーだった。俺はアスペルガーだから、そういうのを無視することが出来るんだ。皆アスペルガーは障害だと言うけど、役に立つこともある。アップダウンを乗り越えられるんだ。人が感情的になって何も考えられなくなる一方、俺はそういうことが起こっても冷静でいられる。俺は、皆と同じ様に感情的になって仕事をするってことがないんだ。もちろん感情的に全くならないわけじゃないけど、その種類が違うというか。タフってわけでは決してないんだけどね。皆が普通ストレスを感じたり、がっかりするような時も、俺はただ淡々と進み続ける。俺にもかなりのアップダウンがあったけど、ドラッグや酒に頼らなくても、それがあったから乗り越えられたんだ。

新作のオープニング・トラック”I Am Dust”

――現在の音楽シーンにおいて、“ゲイリー・ニューマン”というアーティストの立ち位置はどうのようなものだと考えますか?

うーん、どうだろうね。ここ10~15年、沢山の人たちが俺のことを影響源と話してるのは聞いてるけど。フー・ファイターズとか、マリリン・マンソンとか。それは本当に最高。最近プレスと話す機会が沢山あるから、フィードバックすることが増えて気づき始めたんだ。かなりの数のニューバンドが俺が影響源だと話してるっていうのを取材なんかでよく聞くから。本当に嬉しいし、自信がつくね。俺が、ポップとか超メインストリームなものをインスパイアしてるなんてね。人が俺の音楽を参考として聴いてくれてるのは嬉しいよ。でも逆に、俺も彼らから学んでる。皆互いに学んでるんだ。俺が何年活動してるか、どれだけ影響を与えてきたかは関係ない。今回、エイドからも沢山学んだよ。「ワーオ! こんなアルバムを作る事が出来るんだな!!! 」って。特にコラボからは多くを学ぶ。俺はもう35年この世界にいるわけだけど、未だに色々なアルバムに感銘を受けるし、彼らがどうやってそれを作り上げたかに興味を持つ。何年やっても、毎回学ぶことがあるんだ。新しいバンドからも、古いバンドからも。皆進化し続けてるからね。一生学校にいるようなものさ。

――貴方がデビューした70年代末と現在では、音楽を取り巻く環境が(ハード面でもソフト面でも)大きく変貌していますが、その変化は必然だったと思いますか? また貴方にとってはどちらの方が良い環境でしょうか。

環境は確かに変わったね。やっぱりテクノロジーが変わるから、それは必然だと思う。今はインターネットがあるから、人との繋がり方も変わったし。相互作用さ。一時期はマイスペースが流行ってたけど、今はほとんど聞かなくなった。次はフェイスブック。で、その次に今度はインスタグラムが来て・・・って感じに続くんだ。世界に語りかける術はどんどん変わってく。それによって、自分や自分の作品をどう人に伝えていくかも変わる。変化は怖いけど、同時にエキサイティングでもあるよね。世界はテクノロジーで常に変化して、その使い方でまたべつのものが変化する。一緒に誰かとレストランに行っても、皆が携帯でフェイスブックやツイッターをやってて会話がないっていうのはどうかと思うけど(苦笑)。でも、そういう変化は良い事だと俺は思う。それが、何か新しいものが生まれることに繋がるわけだからね。

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