“ベルリンは世界の中心で、自分たちは他の都市にはない最新の未来を生きているんだ。”

M 年々人口もツーリストも増え続けているベルリンですが、レコードショップやローカルクラブやパーティーに関して言えば、あまりコマーシャルではなく、ある一定のクローズドな雰囲気を保っていると思いますが、その辺についてはどうでしょうか?

人が増え過ぎてつまらない、パーティーの質が落ちた、アンダーグラウンドさがなくなったという意見も耳にしますが、シーンの中心から見た率直な意見を聞かせて下さい。

C 確かに2002〜03年頃は、間違いなく今とは違っていた。今のような厳しいドアポリシーはなかったし、もっとラフな感覚で遊んでたよね。その日の思い付きで遊びに行くのが普通だったんだ。例えば、上ではアートのショウをやってて、地下ではパーティーをやってる。警察も近隣の人も誰も気にしないし、そこに住んでる人たちはわざわざどこかに出掛けていかなくてもそこにパーティーがあるから”ハッピー”みたいなことが日常だったよ。

変わったなあと思い始めたのは、2004年頃かな? “ベルリンは世界の中心で、自分たちは他の都市にはない最新の未来を生きているんだ”という一種の傲慢さのようなものが生まれたように思う。今じゃ、ツーリストのいないパーティーは存在しない。ソーシャルメディアやプロモーションの影響で、みんなが同じパーティーに行くようになった。この現象には、ネガティブもポジティブも両面があると思う。例えば、今はダンスフロアーから昔ほど強いコミュニティーを感じない。他の国からホリデーで遊びに来てるだけの人もたくさんいるから、今週パーティーで会った人に来週もまた会うとは限らない。逆にそれは、誰のことも知らないからこそ、他人にジャッジされず、我を忘れて自由に振る舞えるチャンスを得られることだとも思う。

昔はDJシーンがこんなに確立してなくて、無名のローカルDJがプレイしてて、例えば、Highfish & Diringer に代表されるような、WMFサウンドと呼ばれた独特のサウンドが存在してた。今は、アウトサイダー・ハウス、ラフハウス、ダークインダストリアル・テクノ、90’sディープハウスだとか、いろんなジャンルの音楽が存在するけど、それは全てグローバルなものであって、「ベルリン・サウンド」というのはもはや存在しないと思ってる。パリのconcreteでもベルリンのpanorama barでも、世界中どこに行っても同じテクノやハウスの音楽が聴ける。そういったところがすごく変わった点かな。ただ、良いか悪いか一概には言えないよね。

Kraftstoff – Highfish & Diringer

M 最後になりますが、2年目となる今年は、どのような展開を考えていますか?何か大きなニュースなどあったら教えて下さい。

C 2014年はすごい勢いで過ぎてしまったから、当初やろうと思っていたプランはもう全部やり尽くしてしまったよ(笑)だから、2015年には次のステップとして、レーベルを立ち上げようと思ってるんだ。ここに集う人たちのクリエイティブなプラットフォームかつアウトプットとなるようなね。店と深く結びついたレーベルを立ち上げて音楽を発信することが、僕らが今一番やりたいことかな。

M ありがとうございました!!

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インタビュー時に撮れなかった分の撮影をさせてもらおうとアポなしでショップを訪れた日のこと。その日はちょうど、Radio Slaveが来ていて何やら話し込んでる様子。いつもの光景だ。クリスチャンは、ショップでも、パーティーでも、クラブでも常に誰かと話をしている。これが彼の営業スタイルであって、世界中のDJが信頼を置く理由の1つだろう。みんなが彼に会いにやってくる。

いろんなヴァイブスが集まってくるのは何もクラブやフェスだけではない。たった1年でベルリンのシーンを担うまでになった〈The Record Loft〉をこれからも追い続けたい。

オーナーに直撃! ベルリンのシーンを担うレコードショップ「The Record Loft」とは? column150216_km_2

Translation by Rieko Matsui

The Record Loft

adalbertstr 9 Berlin
Tel : +49 177 1979858
営業時間14:00 – 20:00
(HP、オンラインショップはありません。)