ルーズな服装にルーズな体型、スタイルが良くてもファストファッションしか着ない若者、街ゆく人からファッションセンスを感じることは、一部のエリアを除いてあまりない。それなのに、ベルリンは5年ほど前から“アップカミング”と言われ続け、未だに言われている。人口355万人、増え続ける人口、急速な発展を遂げる都市開発、それと同じように進む物価の上昇。都市化=注目なのだろうか? 注目されているのは、90年代から根付いているクラブカルチャーのことではない。ファッションやアート、IT系のスタートアップなど、他のクリエイティブな分野においてなのだ。確かに、毎日どこかでレセプションパーティーやエキシビジョンが開催され、その数は東京と比例する。もしかしたら、まだ見ぬベルリンカルチャーがどこかに潜んでいるのかもしれない。“今なぜベルリンなのか?”その実態を様々な角度から探ってみた。
おもしろいのはファッションウィークではなく、インディペンデント
まずは、ベルリン各地で行われたパーティーの模様と共にファッションに関して検証していきたい。
ファッションと言えば、どこの街でもファッションウィークが代表的であるが、<Berlin Fashion Week>自体はあまり魅力はない。前進しているどころか後退していると言っても良い。最近では、デニムやスニーカーの大手メーカーが多数出展していた老舗の「Bread and Butter」がドイツのECサイト最大手「Zalando」に買収されたばかりだ。買収された方が良い方向に行く場合もあるため、今後の展開が気になるところ。
もう一つの老舗トレードショー「PREMIUM」も昨年の1月より盛り上がるに欠ける印象。アフターパーティーはラグジュアリークラブPRINCE CHARLESから場所を移し、ウェアハウスと廃墟がミックスしたようなイベントスペースにフォトグラファーのOliver Rathとのコラボレーションのもと盛大に行われたが、とにかく客層とマナーが残念だった。さすがはパーティーシティーベルリンといった広々したベニューに3フロアー、バーもドリンクも豊富、入場規制が掛かるほど人が集まっていた。しかし、“良いもの”を着ている人が少なく、全体的にチープに見えてしまった。ローカルクラブの方がスタイリッシュなほどだ。さらに、そこら中に空き瓶やカップなどが投げ捨てられていたこともまた悪印象となってしまった。
ベルリンはファッションウィークといった表立った行事より、インディペンデント主催のエキシビジョンやパーティーの方がスタイリッシュでおもしろいのだ。
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