スケジュールの関係で残念ながら2日間のみの参加となってしまったが、それでも充分に<ATONAL>の世界を体感することが出来た。メイン会場となったのは昨年同様、“Kraftwerk”と呼ばれる発電所の跡地。荒廃した巨大な洋館はベルリンでは珍しくなく、その跡地がクラブやイベントスペースになることもよくある。しかし、Kraftwerkに至っては、驚きのスケールと完璧なまでのロケーションに息を飲むほどの衝撃を受けた。噂には聞いていたが、ここまですごいものを見せられるとは思っていなかった。
ENA
Ryo Murakami
そして、今年は日本人アーティストの活躍が素晴らしかった。まず、3日目にENA、4日目にRyo Murakamiの2名がメインステージのオープニングを飾った。Ryo Murakamiは自身を照らすライトを排除し、背面のスクリーンから映し出される圧巻の映像の中に溶け込んだ。ビートが少なくダークでありながらノイズさえも繊細で、淡々とした高揚感に包まれていった。反して、燃え上がる炎のような映像はとても印象的で目の奥に焼き付いた。
全身黒の縦長シルエットのオーディエンスたちは、ステージ前に立ち竦みながら、椅子に座りながら、床に寝転がりながら、それぞれ自由自在なスタイルで、でもしっかりと1点を見つめていた。その様子はモノクロームに包まれたアートインスタレーションのようだった。
次ページ:開催から1ヶ月以上経った今でも現場の光景が脳裏に焼き付いて離れない。