ベルリンの歴史を語るかのごとく存在感を放つTresorを通り過ぎ、一番奥の“Kraftwerk”へと向かった。入った瞬間、目の前に広がる世界に気持ち良いほどの敗北感と興奮でその場から動けなくなった。壁一面を覆った巨大なスクリーンには、浮遊する墨黒の断片。真っ暗闇に舞う落ち葉にも、花びらにも見える美しい映像が視界全部を奪っていった。

晩夏と初秋が入り混じる8月後半、5日間に渡り開催された世界のトップアーティストたちによる最大級にして最上級の実験現場<BERLIN ATONAL>の現地レポートをお届けしたい。

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ハインリッヒハイネシュトラーセの駅前は異様な空気が漂っていた。クラブファッションにおけるリトルブラックドレスに身を包んだ黒い集団が笑みも浮かべず颯爽と同じ目的地に歩いて行くのだ。それは、何かのオマージュとも言えるミニマル一色に構築されたストリートファッションショーそのものだった。

私はそこにとてつもなくモードを感じたのだ。ミニマルファッションのシーンはずっと昔からある。トレンドの変化にも動じず、細かいブラッシュアップが繰り返され、メインストリームのすぐ横を歩いてきた。そして、その背景にはいつも電子音楽があった。それは今も昔も変わらない。そして、これからも変わらないだろう。

会場にも多数来ていたファッション関係者たちを見ながら、一般的には理解の難しいインダストリアルサウンドが世界有数のメゾンブランドとシンクロする光景が容易に想像出来た。

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