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このコラムをいつも読んでくれている方たちは既にお分かりだと思うが、私の記事にはかなりの偏りがある。アンダーグラウンドに潜れば潜るほど目の輝きが増す、いわゆる“地下”ネタが好きなのだ。そのせいか必然的に取材対象が男性になることが多い。当然ながらインターナショナルなベルリンでは様々なジャンルで活躍している女性がたくさんいる。日本人においても同じである。これまで女性特集をやりたいと思いながら実施してこなかったのは、インタビュアーとしての自分に納得出来る何かが欲しかったのかもしれない。それは、自信なのか、実績なのか分からないけれど、同じ女性として、同じ目線から深い話をしてみたかったのだ。

そんな水面下で熟成させてきた“女性特集”を今こそ決行しようと思う。1人目はプライベートでも親交の深いヴァイオリニストの滝千春さん。なかなか触れ合う機会の少ないクラシックというジャンル、長年の海外生活から見えてくるもの、日本の教育に至るまで、幅広い内容でお届け!

Interview:滝千春

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中学時代はとにかく反抗期で、ヴァイオリンなんかやめてやるってずっと思ってましたよね(笑)。

宮沢香奈(以下、香奈) もう何回も聞かれていると思いますが、ヴァイオリンを始めたきっかけは何だったんですか?

滝千春(以下、千春) 母親が音大でピアノ科を出ていて、ヴァイオリンに憧れを持っていたこともあって、姉がピアノ、私がヴァイオリンを始めることになりました。5歳の時でしたね。地元に良い先生がいたので、スクールとかには通わず、ずっと個人レッスンを受けていました。

香奈 プロになろうと意識したのはいつぐらいですか?

千春 うーん、はっきりとは覚えてないんですが、中3の時にロシアのノヴォシビルスクで開催された国際コンクールに出て、ジュニア部門で優勝したんですよ。しかも、それが初海外でした!

香奈 すごい! もう天性のものだったってことですよね?

千春 イヤイヤ、実はそれまですごい反抗期で、“ヴァイオリンなんてやめてやる!”ってずっと思ってて、そのコンクールも本当は受けたくなかったんですよ(笑)。ただ、すごい偉い先生から言われてしまった手前、母親も断れなくて、渋々受けることになりました。もうやるしかない状況の中で必死にやってるうちに嫌も何もなくなっていきましたよね。

香奈 でも、それが良い結果に繋がったってことですよね。反抗期からの人生の転機が訪れた感じですね(笑)滝さんは海外生活が長いと思いますが、もうどれぐらいですか?

千春 音高(「桐朋学園高等学校音楽家科」)を卒業してから、スイスのチューリッヒにある音楽大学に留学したので、もう10年以上ですね。チューリッヒの学校では、同じクラスに日本人は私一人しかいなくて、ドイツ語授業だったので、もうチンプンカンプンでしたね(笑)。結局、日本の教材を買って、それで自力で勉強しながら必死に付いていく感じでした。

香奈 うわー、私には無理だなー。ホームシックになりそう!

千春 イヤ、それが全く(笑)。もうその頃にはヴァイオリンをやめたいって言うのもなかったし、19歳の時に今の旦那さんに出会っているので、それも大きかったと思いますよね。

香奈 運命の出会いだ!! それは、何よりも心強かったと思いますが、チューリッヒとは全然環境が違うベルリンへ移ってからの生活はどうですか?

千春 物価の高いチューリッヒから来たので、ベルリンの物価の安さには驚きました。それでいて、国際豊かだし、オリジナリティーを持ってるお店が多いですよね。音楽に関してもそうだと思います。クラシックだけでなく、クラブカルチャーが盛んな街だし、ジャズ、ロック、何でもありますよね。チューリッヒにもクラブはあるけど、ベルリンとは全然違うし、ストリートミュージシャンとかもいなかったですから。

香奈 そうなんですね。どこの国にもいると思ってました。ベルリンのストリートミュージシャンのクオリティーの高さには驚かれますよね。もう、プロじゃん! って(笑)。周りにもいろんなジャンルの音楽をやっているアーティストがいますが、これまでクラシック一本でやってきた中で、先日のカイザー・ヴィルヘルム記念教会でのコンサートはドラムとのセッションという初のコンテンポラリーでしたよね?

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写真クレジット:カイザー・ヴィルヘルム記念教会 photo by Daisuke Tsubota

千春 そうですね。Trio Rinプロデュースで、日本人の作曲家の方の曲をジャズドラマーのErnst Bier氏と一緒にセッションしたんですが、最初はどうなるか不安でしかなかったですよね。やるしかない! と思ってやりましたが、あの場に専門家がいたら是非とも感想を聞いてみたいですね。でも、それよりも来てくれたお客さんから“何て言ったら良いのか分からないけれど、すごく良かった!”って、いろんな人に言ってもらえたことが本当に嬉しかったですね。クラシックに詳しくなくてもそういったストレートな感覚が大事だなあと思いました。あと、カイザー・ヴィルヘルム記念教会でやれたことは自分にとって、すごく誇りですね!

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香奈 ベルリン・フィルハーモニーでの演奏もかなり名誉なことだと思いますが、カイザー・ヴィルヘルムは観光地としても有名だし、何より会場がステキですよね。コンテンポラリーなコンテンツにすごく合っていると思いました。すごく反響も良かったと思うんですが、今後もまたコンテンポラリーに挑戦していきたいと思いますか?

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ベルリンフィルハーモニー Photo by Katsuhiko Sagai

千春 素直に、“あ、良いな”と思えましたよね。パッションの強い音楽はヴァイオリンにも合うから、若い人には特に、超絶的技巧(極端に速く弾くなど高度な技術が必要なこと)とか、何かハートに直で訴えるパフォーマンスで、ヴァイオリンの魅力を分かりやすく伝えられるかなと思うんです。コンテンポラリーではそれを表現しやすいし、それをきっかけとして、改めてクラシックの魅力も伝えられる音楽家になりたいですよね。

香奈 今度はこんなことをやってみたいとかありますか? ベルリンと言えば電子音楽のイメージが強いですし、私個人としても聴いてみたいですが。

千春 前例のない楽器とのセッションは是非ともやってみたいですね。電子音楽にも興味はありますし、友人のライブに行ったりしたこともありますが、好きになれるかはまだ分からないです(笑)。

香奈 なるほど(笑)。ベルリン以外でもいろんな場所で演奏されていると思いますが、国によってどんな違いがありますか?

M. Ravel – Sonate pour Violon et Piano / Minako Matsuura & Chiharu Taki

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宮沢香奈(Kana Miyazawa)

宮沢香奈(Kana Miyazawa)

フリーランスライター/コラムニスト

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