Chida その日はDekmantel Sound System→MCDE→Marcellus Pittman→Young Marco→僕→Roi Perez→Mano Le Toughって流れだったんですけど、日曜昼過ぎに着いた時、ちょうどYoung Marcoがプレイしていて、後半割とスローモーディスコ多めなセットでフロアもクールダウンしてたんです。そのまま遅めのディスコとか緩めな感じでしばらく引っ張るべきか、仕切り直して良いものか、目の前のお客さんたちは躍りたいのか、チルしたいのか掴めなくて、プレイ開始1分前まで何から始めようか定まらなかったんです。で、結局ハウスで仕切り直したんですけど。

宮沢 なるほど。それはかなり胃にきますね(笑)。メインを張れるアーティストばかりで、しかも1人の持ち時間が3、4時間あって、24時間以上パーティーが続いているわけだから、前からの流れの影響も受けるだろうし、逆に盛り上がり過ぎてても心配になりますよね。Berghainも同様ですが、やっぱりどのアーティストからも独特な緊張感が走ると聞くのは世界最高峰の呼び名からだけでなく、フロアーの雰囲気から伝わってくるものからそうなるんでしょうね。

Chida ツアー中、3都市でオープンからラストで8時間プレイしたし、他の都市も大体4時間位のセットが多くて、長めのセットは得意なんですけど、Panoramaは土曜から遊んでる人もいれば、さっき起きて来たばかりの人もいて、そんな中で日曜日の夕方に何が一番気持ちよくハマるのか見極めるまで、少し時間がかかりました。

宮沢 確かにPanoramaに行く時は大体日曜の夕方を焦点にしてるので、それが当たり前になってますが、日本はもちろん、他国でもそんなところはなかなかないですもんね(笑)。今回、Panoramaへの出演が決まった経緯はなんだったんですか?

Chida 今年からOrchid AMというエージェントに所属したんですけど、彼らのおかげですね。過去に4回<CockTail>でプレイした実績があったのも大きいです。でも、今までの5年間はマネージャーがいなかったから、ヨーロッパにいる友人知人の力を借りながら毎年自分自身でツアーをオーガナイズしてたんですよ。

宮沢 Chidaさん自身がレーベルをやっていたり、マネージメント経験があるからこそ成せる技だと思いますが、とても大変な作業だし、現地を知り尽くしてる海外エージェントは絶対に必要ですよね。日本は自分自身でマネージメントしてるアーティストが未だに多いし、そういった環境を改善した方が良いという声もよく聞きます。

<CockTail>もかなりディープで、今すごい人気のあるゲイパーティーだと思うんですが、そこにすでに4回も出演してるってすごいことですよね? オーガナイザーのDiscodromoの2人からオファーがあったと聞きましたが、どんな経緯があったんですか?

Chida <CockTail>は今まで経験してきたパーティーの中で最高のパーティーなので、ヨーロッパへ行く度プレイさせてもらえているのはとても光栄なことだと思ってます。彼らとは最初ネット上で知り合ったんですけど、2012年の夏にDJ KENTとベルリンのSoju Barでプレイした時に初めて顔を合わせて、彼らのレーベル(CockTail d’Amore Music)のプロモレコードを持ってきてくれたんです。そのレコードが僕のレーベル〈ene〉からもリリースしていたLord of The Islesというアーティストで、好きな音が同じことが分かって、そこから密に連絡を取り合うようになりました。2013年に初めて5ive(COS/MES)と呼んでもらって、そこから年に1、2回ベルリンへ来る度ブッキングされるようになって、Remixを作ってもらったり、彼らのコンピレーションに5iveとのユニットMASCARASの曲が収録されたりと、音楽制作とパーティーの両方で良い付き合いを続けさせてもらってます。

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る Berghain

Berghain(Photo by Chida)

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る CockTaildAmore

CockTaildAmore(Photo by Chida)

宮沢 音楽での運命的な出会いを果たしたといった感じですね。初めて<CockTail>でChidaさんのプレイを見た時に、フロアーとの一体感に驚きました。“あ、ホームだ”って(笑)。ゲイの気持ちが分かるのかなーと(笑)。

Chida ゲイの人たちは音やパーティーに対してすごく貪欲ですよね。踊らせて! ってアピールもストレートだから彼らを前にした時、何を欲しているのか分かるんです。踊り続けたくてそこにいることは大前提として、どう踊りたいのかが分かるんですよね。僕がプレイするのはほとんどがハウスですけど、曲によってDope、Deep、Spacy、Love、Psychedelic、バウンシーだったり、いろんなイメージの曲があるじゃないですか。その時々の曲のチョイスが間違いなかったら、評価されるし、次に繋がっていくんですよね。

宮沢 Chidaさんにとって、<CockTail>はオーガナイザーだけでなく、オーディエンスの気持ちまでキャッチ出来るパーティーなんですね。私も個人的にすごく好きなパーティーの1つですが、ブッキングもアンダーグラウンドのマストなところを絶対外さないし、Discodromoの登場が日曜夜なのに、ファンの人数と熱気が桁違いですよね。

Chida まさにそうですね。今の自分にとってフロアーから一番良いリアクションを得られているのは実はベルリンなんですよ。

宮沢 え、日本じゃないんですか??

Chida うーん、正直なところ、東京ではベルリンのクラブやパーティー程のフロアの熱量を感じられる機会はなかなかないんですよね。僕の場合、海外ではメインアクトとしてプレイさせてもらえてますけど、東京では来日するゲストDJのウォームアップDJとしてのオファーが多いんです。メインアクトとしては、小さなクラブやBARからのオファーはありますが、海外のように500人~1000人の前でメインの時間帯にプレイするような機会はほとんどないです。だから、日本では24年間そういった環境でDJし続けてきたので、自分が“ベスト・ウォーム・アップDJ”だと思えるぐらいの自信はつきましたけど(笑)。

宮沢 それは意外ですね。週末のパーティーは、外国人アーティストがメインゲストで、脇を固めるのが日本人アーティストというのが通常スタイルで、海外のパーティーを知るまでは、それに疑問を感じることさえありませんでしたが、東京をベースにしている限り、メインアクトとしてプレイしたいと思うのはみんな一緒ですよね。ただ、大箱でやるパーティーが必ずしも良いとは言い切れないなと思っています。実際ベルリンでもClub der Visionaere(CDV)のように普段はバーとレストラン営業で、フロアーも狭いのに、平日のパーティーから週末並に人気があります。アーティストからも人気で、世界各地のDJからベルリンの好きな箱として一番名前が上がるのがCDVなんです。まあ、ベルリンの事情はまた全然東京とは違いますが。

Chida そうですね。海外と日本のクラブシーンの評価基準は全く違うものであることは痛感しているので、自分が国内のシーンであまり声がかからないのは仕方のないことだと思っています。国内だと知名度や集客力がなければオファーも来ないんですよ。僕にはフロアヒット曲だったり、多くの人の記憶に残るようなメジャーな実績は特にないですから。あと、もう良い歳なので、クラブで一緒に踊り狂える仲間が減ってきて、DJする時に呼んでも来てくれる友達が減る一方で……(笑)。でも、それが海外だと、DJが有名だろうと無名だろうと関係なくクラブに人が来るという土壌が出来上がっているから、クラブやプロモーターも自分たちが良いと思った音楽やDJで勝負し続けることが出来てるんだと思います。

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る Bad-Room-NYC

Bad Room NYC(Photo by Chida)

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る Topaz-Deluxe-in-Monterrey

Topaz Deluxe in Monterrey(Photo by Chida)

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