宮沢 根本から違うことを痛感させられますよね。クラブ自体に固定のお客さんがついているし、年齢なんて誰も気にしませんから。何より音楽関係者たちは金曜の15時を過ぎたら火曜日まで連絡がつきません(笑)。それだけ週末のパーティーに人生を賭けてるんだなと思いました。

Chida Panoramaの時も、僕のことを知ってくれていて、来てくれていたのはほんの数人だと思うんですよ。でも、プレイし終わってから、とにかく沢山の人から声をかけられたんです。FacebookやSoundcloud経由であの日プレイした曲の問い合わせとかファンメールも沢山来ました。

宮沢 一番前で踊っていた時、韓国人の友人が隣で踊ってたんですけど、“君の知り合いなの?? 初めて聴いたけど、すごく良いね! なんて名前のDJ?”って聞かれました。その彼もDJなんですけど、そうゆうのがネームバリューに左右されないリアルで自然な反応ですよね。

Chida そういう反応はやっぱり素直に嬉しいですよね。DJ中、最高な状態というのがあって、3、4曲先までプレイしたい曲が湧いてくる時なんです。そうすると、さらにその1時間後、2時間後まで見えてくるんです。<CockTail>は全てのDJが4-8時間のオファーを受けるんですけど、毎回フロアのクラウドが自分の行くべき数時間先まで導いてくれる奇跡が起こるんですよ。次回9月には、5iveと僕のMASCARASで日曜夜から月曜朝、クローズまでのスロット(12時間)をやります(笑)。

宮沢 12時間!! 究極のドMですね(笑)。でもそんな奇跡が起きるなんてなかなかない貴重な経験だろうし、どんなオファーでも受けちゃいますよね。

Chida あはは。あと、海外では曲に込められたメッセージでアピール出来るのが楽しいですね。Panoramaの時も序盤はインストの曲ばかりプレイしてたんですけど、フロアが盛り上がって良い感じになってきた時にヴォーカルものを入れだしたんです。Black Sheepの“Storobelite Honey”っていう曲の“Don’t Go”って歌詞がループしてる曲をプレイして、自分の気持ちをアピールしたり。しばらくダークな曲プレイした後にDiscoをプレイしたい時はEarth Peopleの“Dance”やBunny Sigklerの“By The Way You Dance”とかでスイッチ入れてみたり。

宮沢 DJ中にメッセージまで発信してるんですか?? でも確かに、ほとんどの人が英語が分かるわけだし、そこまで理解してくれるお客さんがいたらDJ冥利に尽きますね。

Chida 実際、DJブースに寄ってきて返してくれる人もいますからね。嬉しいですよね。でも、英語が何となく分かるようになってきてから、フランキー・ナックルズとかラリー・レヴァンの昔のミックスを聴き直したら、歌で展開を作っているのが分かって、ハっとしたんです。若い頃は曲の雰囲気と聴き取れる単語だけで曲をチョイスしてたけど、80年代、90年代から活躍してきたラリーやフランキーみたいなレジェンドDJたちが、一晩かけて歌やメッセージでストーリーを紡いでいたことを知ってからは安易に歌ものはプレイ出来なくなっちゃいましたね。

宮沢 すごい興味深い話ですね。80年、90年代のDJたちに思いっきり影響を受けましたが、踊るだけで精一杯で歌詞を意識するなんて出来なかったかも。ロマンティックで情熱的な曲が多いのは、ゲイたちによる求愛のダンスのためだけでなく、そこにはリアルで熱いラブストーリーが存在していたんですね。

Chida ですね。だから、海外でプレイして、現地のお客さんを掴むためにも英語はもっと頑張らないとダメだなと。

宮沢 プレイ中でも英語でのコミュニケーションが大切ということですね。これはいろんなアーティストに聞いてるんですが、海外で活躍出来るためには何が一番必要だと思いますか?

Chida やっぱり、いかに深くコミュニケーション出来るかじゃないですか? そういった意味でも英語は絶対必須ですよね。一緒に遊べたり、語り合えたり、音楽に関してのやり取りが出来るのと出来ないとでは全然違うから。

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る Chida-Tiago-Lovefingers-in-Lisbon

Chida/Tiago/Lovefingers in Lisbon(Photo by Chida)

宮沢 全然違いますね。私もろくに話せないまま来てしまって、すごく恥をかいたし、そこを一番反省しました。1、2年で帰ると決めているなら語学が出来ないまま、コミュニケーションも取れないままでも良いかもしれませんが、海外でやりたいことがある以上、何を差し置いてもまず語学からな気がしてなりません。最近は、本当に日本人アーティストの活躍が目に見えて分かる状況にありますが、語学やコミュニケーションの部分でも長けていたり、努力をしている人がイコールな気がします。

Chida 僕が海外に出始めてからまだ5年ですけど、確かに行く先々で日本人アーティストの名前が話題になる機会が増えましたね。良く話題に上るのは、DJ Nobu、Kenji Takimi、Gonno、KENT、KZA、IORIとかですが、実際に海外でのギグが年々増えてますよね。あとは、Yone-ko、Stereociti、Masuda、Katsuya、Kez YM、Akirahawksのようなベルリン移住組の活躍も目覚ましいと思っています。自分が海外へ出て行く度に日本やアジアのシーン、アーティストのことをよく聞かれますよ。

宮沢 やはり確実に日本人アーティストへの注目度は上がってるわけですね。私も他国へ行く度、特にYone-koくんとか、ベルリン在住のアーティストが圧倒的に多いですが、よく名前が上がります。同じ日本人として本当に嬉しいし、尊敬もしていますね。前から思っていたんですが、Chidaさんはベルリンへ移住しないんですか?

Chida ベルリンは物価が上がってるとはいえ、家賃も生活費も東京に比べたらまだまだ安いし、レーベルやDJ活動を続けて行く上での環境が整っているから、移住したいと考える事はありますよ。でも東京にもContactやWombみたいな大きいクラブからOATHやZeroみたいな小さくてもエキサイティングなシーンがあって、僕は日本人DJとしてもう少し東京をベースに活動しながら、定期的に海外へ出て行くツアーDJとして人生を全うしたいという気持ちがまだ強いんです。ただ、今年は4ヶ月ぐらい海外に出る予定があるけど、海外でのギグの割合がもっと増えていったら考え直すかもしれませんね。

宮沢 個人的にはベルリンが合っていると思うし、ローカルDJになって、もっともっと活躍して欲しいと思いますが、日本のシーンを見続けて欲しいという気持ちもありますね。最後になりますが、Panoramaでのプレイという一つの夢が叶った直後ですが、他にDJしてみたいクラブや今後の夢はありますか?

Chida グラスゴーのSub Club、フランクフルトのRobert Johnsonではプレイしてみたいですね!今年久々にクロアチアの島Obonjanでやるフェスに出るんですけど、ヨーロッパ、南米のいろんなフェスも見てみたいです。夢というか課題は、自分の今後のDJ人生の名刺代わりになる様なキラーチューンを作る事ですね。

宮沢 クロアチア良いですね! 今一番フェスとしてホットな国ですし。ベルリンでキラーチューンを聴けることも楽しみにしています! 長い時間ありがとうございました!!

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る chidakana

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“ツアーDJとして人生を全うしたい”という彼の答えに最初は驚いたが、そのあと妙に納得してしまった。世界各地の舞台に立ち、反響を得る度に、浮わついた気持ちとは真逆のシリアスな考えが存在していっているのではないだろうか。DJなら誰しも思い描いている夢の世界を現実として掴み始めている人間とはそうゆうものなのだと思う。このインタビュー記事を書きながら、次のヨーロッパツアーの連絡をもらった。非常に楽しみである。

EVENT INFORMATION

DJ Chida スケジュール

2016.06.24(金)AOYAMA TUNNEL
2016.07.09(土)Sound Bar NEST(宇都宮)
2016.07.30(土)OATH
2016.08.05(金)AOYAMA TUNNEL
2016.08.06(土)音溶(松山)
2016.08.12(金)TIME(Manila/Phirippine)
2016.08.13(土)OMA(Hong Kong)
2016.08.19 – 09.10 EUROPE TOUR

Photo by Akiyoshi Yatagawa