ルーマニアのシーンを伝え続けてきたパーティーの集大成がここに。2017年4月1日恵比寿LIQUIDROOMにて開催されたRPR SOUNDSYSTEM & Dreamrecの来日イベントのレポートを臨場感溢れる写真とともにお届けしたい。インターナショナルでファッション感度の高い人が多かった来場者スナップも是非ご覧下さい!!
春独特の強い風がビルの隙間から吹き付け、花見の時期になってもまだ寒さの残る4月の東京。それでも、桜並木の下を通るだけでお花見気分を味わえ、改めて日本の四季の美しさを感じることができた。残りわずかとなった日本滞在の最終目的であるRPR SOUNDSYSTEMとDreamrecの来日イベントに参加するため、友人たちとともに恵比寿LIQUIDROOMへと向かった。日本のクラブイベントへ参加するのは、実に3年以上振りとあって、変な緊張と期待が入り混じったまま会場入りしたが、すぐに懐かしい顔触れと遭遇し、ハグや挨拶を交わすうちにあっという間に東京でのナイトライフ感覚が戻ってきた。
ヨーロッパでのルーマニアンDJたちの人気はこれまで何度も伝えてきているが、自分のルーツは、AIR(現Sankeys TYO)で開催されていた<Beat In Me>にある。世界的ブレイクとなる前から日本でルーマニアのシーンを伝えてきたパーティーである。その集大成とも言えるのが、今回のRPR SOUNDSYSTEM & Dreamrecであり、VJ Dreamrecを加えてのこの4人では、今回が記念すべき日本初ステージとなった。Rhadoo、Petre Inspirescu、RareshのルーマニアンDJ3人からなるRPR SOUNDSYSTEMと専属VJであり、アートワーク全般を手掛けているDreamrecに関しては、すでに、Qetic上で数度に渡り紹介しているので、是非そちらを参考にして欲しい。
RPR SOUNDSYSTEM & Dreamrec来日前にどうしても伝えたい!!
着いた時にはすでにメインフロアーはじわっとした良い熱気に包まれており、ほぼDreamrecのVJと最小限のライティングの中で踊る人たちの影が見え隠れし、ピークタイムを迎える準備が始まっていた。RPR SOUNDSYSTEMの3名は、Back to backでのプレイだったが、ビッグフェスなどでよく味わう“B to Bによる違和感”は全くなく、むしろ、気付かないぐらい自然で、気持ち良いほど滑らかだった。絶妙なタイミングで入れ替わり、それでいてそれぞれの持ち味がきちんと出ており、個別での活動が多くなった今でも長年培ってきた信頼関係とスキルがブレることはなかった。
一つ一つ丁寧にプログラミングされた繊細なビートが反復されていく中に、クラシックピアノが入り込み、時にジャズが、時に妖艶なボイスが入り込み、シンプルな音といろんな要素とが紡がれて、少しずつストーリーが変化してゆく。そして、最高の瞬間であるブレイクをひたすら待ちながら踊る。その瞬間を掴めたら一生忘れられない恍惚感を味わえるだろう。
彼らのサウンドはどうしてここまで惹きつけられるのだろうか。ずっと踊っていたい、聴いていたい、一つ一つの音を逃したくないという執着心が生まれるのだ。ミニマルと一口に言ってもその国、アーティストによって全然違う特徴を持っている。彼らには彼らだけの独特の世界観があり、シンプルで緻密な音作りを得意とし、単なる反復ではなく、ルーマニアという国柄や海や高原の自然、優しい国民性が織り交ぜられているように感じる。
Deramrecの映像もまたRPR SOUNDSYSTEMのサウンドをより美しく演出してくれる一つといえる。木や雷、雲といった自然界にあるものをパターン化させたグラフィックは、ビビッドな配色のサイケデリックさとインテリジェンスが混じり合った現代アートがステージ一面を覆った圧巻のショーだった。
クラブカルチャーと最も密接な関係を持つベルリンのような街に住んでいると、日本との違いを聞かれることがよくある。今回も日本ではベルリンのことを、ベルリンへ戻ったら日本のことを聞かれた。クラブの内装、出演アーティストの人数、パーティー時間、エントランス料金、人種、踊り方、遊び方、ファッション、違うところなど挙げたら切りがないほど山ほどある。ベルリンは全てにおいて“クレイジー”という言葉がピッタリだと思うが、日本は、フロアーで一心不乱に踊る人、踊りながらじっくり聴いている人、プレイを観たい人と様々なスタイルで楽しんでおり、バーやラウンジをメインに楽しむ人たちも多いのが特徴である。お酒がおいしく、手頃な値段で飲めて、音楽を聴きながら、ハイテーブルやソファーで語らうことが出来る空間は居心地が良い。話し声が聞こえるぐらいの少し抑えめの音量がトレンドになっているというのも納得だった。
今回ステージを観たかったのはもちろんあるが、風営法の名残り、音楽離れしていく若者たちの問題などを抱えながら、それでも日本のシーンはちゃんと残っており、常に変化し、進化し、それを支えてきた人たちがいる。そうゆうことも全て引っ括めて今の日本を見たいと思っていたのだ。ラウンジを飾ったDJ PI-GE、Junki Inoue、KABUTOの3名のDJがすでに証明しているように、世界基準のスキルとセンスを持つアーティストが沢山いて、今回のオーガナイザーであるRAHA氏のように1年の半分を海外で過ごし、世界各地のシーンを見ながら、それを日本で伝え続けてる人がいる。
日本を離れたからこそ分かった日本のカルチャーのおもしろさと努力を実感できた良い機会だった。東京はオープンしてから行けていないクラブばかりである。次の一時帰国の際には是非遊びに行きたいと思った。