続いて、2店舗目は、出店を夢見る人の多くが憧れるであろうノイケルン地区の人気ストリートMaybachufer沿いに4月にオープンした『Life Berlin』。ここはベルリンでは珍しい炉端焼きスタイルの料理が食べられるレストランであり、焼き場が見えるオープンキッチンが独創的。また、漢字表記は『蕾風』と書き、ライフと読むアイデアも斬新である。
メインシェフの横田地健二さんは高校を卒業したと同時にフレンチの修行でパリへ。Arpègeをはじめとする数々の三ツ星レストランでキャリアを積んできた本格派。その後、日本、ロンドンと様々な都市と店舗で長年実績を持ち、『Life Berlin』では和食メニューが中心となっているが、洋風のアレンジが入っていたり、芸術的な盛り付けや美しい彩りはフレンチ仕込みならではと言える。
豚バラ肉で巻いた串焼き、串揚げから、寿司、天ぷら、すき焼き、ベジタリアンメニューには湯葉巻きなど、とにかくメニューが豊富で選び切れない。しかも、コースで20ユーロからと非常に良心的な値段設定となっており、名の通り“居酒屋プライス”で気軽に楽しむことができる。
さらに、入り口すぐにはバーエリアが併設されており、Jazzの流れる店内で深夜まで本格的なカクテルを飲むことが出来る。絶妙な甘さが癖になる大人気のレモンサワーやバーテンダーの田口勇吾さん一押しのコーヒー焼酎など他では飲めないオリジナルカクテルも豊富に揃っている。ビールやワインは安くておいしいが、バーのカクテルのクオリティーが低いと感じるベルリンにおいて、自分の好みにあわせて作ってくれる丁寧なバーは貴重な存在である。
内装、スタッフ、客層など、どこか通常のレストランとは違うエッジの利いた雰囲気を感じるが、実は、昨年までロンドンで同名の日本食レストラン&バーを運営していたスタッフが中心となってスタートした店なのだ。
「“Tokyo Counter Culture”というコンセプトのもと店作りをしています。レストランのカウンターと70年代に起こったカウンターカルチャーというムーブメントを掛け合わせているのですが、カウンターカルチャーは“体制的な文化に対抗する文化”という意味を持っています。それを食文化に置き換えて、“外国の日本食レストランは高くて、量が少なくて、寿司と天ぷらと照り焼きだ。”という風潮から“今の東京の日本食文化はそんなんじゃないよ”というところを外国人にも和食レストランをやってる人にも知ってもらいたいという意味が込められています。僕が東京在住なのでリアルな体験をそのままやろうと思い、メニュー構成、内装などを決めました。
ロンドンも10年前はまともな日本食屋さんが少なかったように、ベルリンの今もその時に似ているような気がします。ベルリンでは、和食と別の国(韓国やベトナム)のフュージョンが多いと思いますが、今の時代はその国が持っている本物を提供する時代だと思っています。なので、ベルリンの和食に限っていえば、まだまだ10年は遅れているような気がします。正直ベルリンに初めて来た時は、なんて田舎臭いところだろうと思っていたのですが(笑)。今では来れば来るほどおもしろい街だなという印象に変わっていきました。」
そう語るオーナーの城戸孝さんは東京にヘアサロンとバー、ロンドンにヘアサロン、ベルリンではミッテにticro.deというヘアサロンを経営している実業家である。
東京に拠点を置きながら、他国の動きや時代を読み、先駆けていく人物である。音楽やファッション業界関係者、クリエイターが常連に多いというのも納得である。そんな『Life Berlin』で是非ともベルリンにいながら今の東京カルチャーを感じ取って欲しい。
Life Berlin
Maybachufer 39. 12047 Berlin
月曜日:定休日
レストラン
火曜日〜日曜日
Lunch time : 12:00〜15:00
Dinner time : 18:00〜24:00
バー
火曜日〜木曜日:18:00〜6:00
金曜日、土曜日:18:00〜27:00
日曜日:18:00〜24:00
Tel : +49(0)3023561730
http://www.ticro.co.uk
https://www.facebook.com/lifeberlinlife/
「和食」は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された。その定義はとても細かく、和食ならではの奥深さがある。世界のどこの国へ行ってもやっぱり“和食は世界一”であり、今後ますます日本人の器用さと丁寧さは評価され、面白いことを仕掛けてくれるパワフルな日本人たちが増えてゆくことだろう。非常に楽しみである。
Photo by Saki Hinatsu
Instagram @sakihina_photography