3.11以降、音楽性がものすごく変わった。
たとえ、日本で活動出来なくなっても世界がある。

Ryo Fujimoto – Dommune . 9.9.2014

“特に政治だけを意識しているわけではないんです。ただ、日本人として気にならない方がおかしいし、自然と入ってくるんですよね。やらずにはいられないというか、自然発生のことだと思っています。3.11から音楽性がガラっと変わったんです。それまでの僕のスタイルは、人を踊らせたり、楽しませたりと言ったエンターテイメント性を重要視していました。でも、3.11があって、人と人とのコミュニケーションが大事だってことに気付いたんです。自分のやっている音楽を知ってもらって、考えを知ってもらって、それをどう受け止めてくれるかやってみようと思ったんです。そのために、ポエトリーリーディングを始めました。

考え方なんて人それぞれ違うし、同じミュージシャンでも音楽に政治的要素を入れるなんてってアンチの人もいます。実際、有名無名関係なく、知り合いのミュージシャンに一緒にやろうと声をかけたら、”生活があるから”と断られたこともあったし、”お前は海外にいるから”と否定されて離れていく友達もいました。確かに、僕の伝えたいことは遠くから発信するよりも近くから発信した方が良いと考えることもあります。でもまだそこには答えが出てないです。”

秋のツアーでは、これまでのエレクトロニクスを使用するツアーと並行して、アコースティックツアーも予定している。ライブハウス、クラブへの出演以外は、47都道府県全てを、アコースティックギター1本で回るという。それ以外の楽器は、自分のみ。普段、エレクトロニクスを使用しているアーティストが機材なし、電気なしで表現するというのはとても大変なことではないだろうか。

“3.11から音楽性がガラリと変わった。”表現者、音楽家Ryo Fujimotoを追う column150312_km_5

“アコースティックツアーの目的は、日本において、本当に電気が無くなって、そういう状態であったとしても、1人の人間と1本のギターで、何処まで伝えられるのか。音楽の力は何なのか。という挑戦です。自分の考えを押し付けるわけではなく、僕はただ、知るきっかけになって欲しいんですよね。Ryo Fujimotoという存在から、今の日本を知って欲しい。いろいろな気苦労は増えますが、アコースティックでしか表現出来ない世界もありますし、やる意味があると思っているからやります。

僕ね、東京の満員電車が「ドナドナ」に見えて仕方ないんです。もう一極集中型の時代ではないし、もっと自由に生きれば良いのにって思うんです。子供にも好きな音楽を、好きな芸術を思う存分やって欲しいって思っていますが、今のままではもっともっと出来なくなってしまう。だから、これからも伝え続けて行きます。もし、何らかの事情で、日本で活動が出来なくなったとしても、まだ世界がありますから。僕、日本だったらEXILEみたいになりたいんですよ。 勿論、沢山の苦労があって、あの位置にきたんだと思いますが、彼らはすごく有名ですよね。そして、僕なんかよりよっぽど発言力がある。今の生活で満足してるからお金とか名誉とか、そういったものはあまり必要ないですが、人は基本的にミーハーだから何か結果を出している人に付いていくと思うんです。だから、そういった意味で影響力のある人間になりたいんですよね。そして、最終的には、人種、職業関係なく、頑張っている人と頑張っている人を繋げていく、そういう役割をしたいんです。”

“3.11から音楽性がガラリと変わった。”表現者、音楽家Ryo Fujimotoを追う column150312_km_4

日々、いろんな人と出会い、自分の考えを媒体という一種のメディアに晒しながら、自分と共に誰かを解き放したいと思っていることに気付く。一体、私は何者になりたいのだろうか。ただ、分かっていることは、自分の毎日は同じではなく、平凡でもなく、「ドナドナ」ではないと言うことだ。時に、自分の人生を愛おしいとさえ思う。でも、まだまだ満足出来ていない。私は、見返りを求めない“無償の愛”など存在しないと思っている。ただ、自分の人生を思う存分楽しみながら、そこにメッセージを乗せて発信していくことは出来る。たった1人でも気付いてくれれば良い。ただひたすら前に進む2人のアーティストを追いながら、リスペクトとエールと共にそんな熱い思いが沸いてきた。

たった1度の人生をあなたはどう生きたいですか?

Photo by 前川 雄紀、Rina Kim

プロフィール:Ryo Fujimoto
1987年 兵庫県神戸市生まれ、ベルリン在住。 ベルリンと東京を中心に、世界を舞台に活動する音楽家。 14歳でヒューマンビートボクサーとして活動を始め、ロンドンで開催された HumanBeatbox Convention 2008 に 日本代表として渡英、2011年にベ ルリンへ移住。2012年に開催された third World Beatbox championship 2012 にて 日本人初ライブセットを披露。” Humanelectro ” と呼ばれるパ フォーミングアートは、世界各国で、非常に高い評価を得る。近年は、ベル リンを中心にヨーロッパの各フェスに出演、2011, 2012, 2013年に、Ryo Fujimoto Asia Tour、2014年に、6カ国、30都市を廻る Ryo Fujimoto World Tour 2014, 国登録有形文化財 山本能楽堂公演 「SPIRAL」、 DOMMUNE、Gizmodo , CoDesign (NY)、Creator’s Project… 他、特集 記事多数。また、グラミー受賞アーティスト Robert Glasper、Bill Summersと共演。