90年代パリの音楽シーンのまっただ中を駆け抜けた
ある青年の夢と挫折を描く、ほろ苦い青春音楽映画の決定版

90年代フランス。エレクトロ・ミュージックが台頭する波に乗り、大学生のポールは、クラブ通いをする親友とデュオを作り、DJとして活動を始める。ガレージを中心にリミックスする彼らの“Cheers”は瞬く間に人気となり、パリで最も熱いクラブで開催されるレイブパーティの主役となっていく。その狂騒的な成功に酔いしれるうち、ポールの生活の歯車は少しずつ狂い始める。盲目的に音楽にのめり込み、レイブを開催し、狂った金銭感覚により経済状況は益々悪化、ドラッグに溺れ、恋人との関係も破綻を繰り返すように。やがてポールが生み出す音楽は、最先端のクラブシーンと少しずつ乖離していく。

ダフト・パンク楽曲をフィーチャー!映画『EDEN』試写会ご招待 film150820_eden_15

冒頭、ポールと仲間が夜明け前の薄暗闇を歩いていくシーンには、何かが起こりそうな予感をはらむ。時は、まさに今フレンチ・ハウスが台頭せんとする夜明け前。本作は、レイブやエレクトロ・ミュージックの誕生から、ダフト・パンク(Daft Punk)や、ディミトリ・フロム・パリ(Dimitri From Paris)やカシアス(Cassius)らが代表する“フレンチタッチ・ジェネレーション”の軌跡を背景に、熱に浮かされたような時代の波に乗り、DJとしての成功と名声を手にする青年の恋と友情、やがて進むべき道を見失い、味わう大きな挫折を描きだす。

ダフト・パンク楽曲をフィーチャー!映画『EDEN』試写会ご招待 film150820_eden_14

きっと誰もが冒頭から、繰り出される強い4つ打ちのリズムに体を刻まずにはいられない。リアルに再現された90年代パリの音楽シーン、クラブシーンも必見・必聴だ。さらに本作には、まだ“ダフト・パンク”になる前の2人、トマ・バンガルターとギィ・マニュエルも登場。もちろんカメオ出演ではなく似た俳優が演じているが、彼らをめぐる会話やエピソードは、今なお“謎の多い2人”とされるだけに、音楽ファンには垂涎ものだろう。

ダフト・パンク楽曲をフィーチャー!映画『EDEN』試写会ご招待 film150820_eden_5

“世界で注目すべき映画監督”トップテンの
ミア・ハンセン=ラブが映し出すパーソナルな物語

監督は、女優としても活躍していた気鋭の若手監督ミア・ハンセン=ラブ。カンヌの<ある視点>部門で審査員特別賞を受賞した『あの夏の子供たち』(09)、次の『グッバイ・ファーストラブ』(10)に続き、本作が日本劇場公開3作目となる。2010年当時、監督作として長編3本のみであった彼女は、権威ある映画誌“Variety”で“世界で注目すべき映画監督ベストテン”に選出される。その確かな演出力や繊細で瑞々しい感性は、本作でも存分に感じ取ることができるだろう。自分の身近な出来事や人物に光を当て、愛とリスペクトを込めたうえで、人間の愚かさやもがく姿を、誠実で品の良い“赤裸々”さで描きだすミア監督。本作でも観客は、あの時代の興奮と熱気のただ中へ放り込まれ、登場人物たちの等身大な姿に親近感を覚えずにいられない。実は、主人公ポールは監督の実兄であり、現在は作家として活躍するスヴェン・ハンセン=ラブをモデルにしている。本作は、兄スヴェンの実体験を元にした非常に身近でパーソナルでもある物語なのである。

ダフト・パンク楽曲をフィーチャー!映画『EDEN』試写会ご招待 film150820_eden_4

ダフト・パンク楽曲をフィーチャー!映画『EDEN』試写会ご招待 film150820_eden_8

ダフト・パンク楽曲をフィーチャー!映画『EDEN』試写会ご招待 film150820_eden_13

次ページ:新旧俳優たちの間に起きたケミストリー