あまりにも多くの死と破壊行為と暴力。
ラップには誤解も多い。
大勢のミュージシャンも失った。
人は死んでから愛する。俺は死ぬ前に愛されたい。
それには愛することだ。
— スヌープ・ライオン(劇中より)

ルバム売上枚数通算3千万枚。アメリカ西海岸=ウェッサイのゴッドファーザーならぬドッグファーザーとして22年以上もシーンに君臨し続けてきたスヌープ・ドッグが突然“レゲエミュージシャンへ転向”した。

最近ではケイティ・ペリーの“カリフォルニア・ガールズ”でのフィーチャリングなどに代表されるような茶の間的人気を誇りながらも、依然としてストリートからのリスペクトも失わない唯一無二の存在である彼が40歳を迎えた今、なぜレゲエの道を選んだのか? そしてジャマイカへの旅で一体何を学んだのか? その謎にVICEが肉迫した最新ドキュメンタリー映画『スヌープ・ドッグ/ロード・トゥ・ライオン』(配給:角川書店)がいよいよ7月27日(土)に公開を迎える。

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©2013 VICE FILMS, INC., SNOOPADELIC PICTURES, INC.

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燦然と輝くヒップホップ・アイコンとしての姿を華麗に映しだす導入で、スヌープ・ドッグはジャマイカへの旅を宣言する。唐突にも思えるその言動に、リアリティー番組なのか? と思わず、身構えてしまうのも束の間、スヌープ・ドッグはジャマイカに着くなり、あっという間にその空気に魅了されていく。元から大麻大好き、ライブ前は必ず大麻を吸う、大麻に関しての歌詞を挙げればキリがないアーティストである彼が、大麻(ガンジャ)と根深い歴史を持つジャマイカの地で、激しく感銘を受けるのも無理はないだろう。ザ・ドッグ・パウンドでも一緒に活動した同じくガンジャ大好き従兄のダズ・ディリンジャーなどの陽気な一行と共にジャマイカの自然に魅せられていくスヌープ・ドッグのチャーミングな一面は実に愉快である。

本作では、自らの最新作『スヌープ・ドッグ/ロード・トゥ・ライオン』のレコーディング風景が克明に記録されている。世界中を驚かせたこの作品はプロデューサーとして今をときめくメジャー・レイザ―ことディプロを迎え、高濃度のレゲエミュージックが絶妙の塩梅でヒップホップ、ポップミュージックとブレンドされたヒットアルバムとなった。ディプロや、あのアリシア・キースのアンセム“エンパイア・ステート・オブ・マインド”を手掛けたアンジェラ・ハント、ジャーダン・ブラッカムーアなどなど錚々たるアーティスト陣が出演し、各曲のバックグラウンドに迫りながら、スヌープ・ドッグが心底レゲエに魅せられていく様が映されている。

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©2013 VICE FILMS, INC., SNOOPADELIC PICTURES, INC.

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タフゴング・スタジオ、ボブ・マーリー、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラー、トレンチタウン、アルファ・ボイ―ズ・スクール、ハイレ・セラシエ1世、ラスタファリアニズム、、、。レゲエの音楽的変遷のみならず、ジャマイカが培ってきた文化/精神に触れる事によってスヌープ・ドッグは今までになかったキーワードへと辿り着く。それは愛と平和と苦悩。

本作の原題『Reincarnated』とは、『生まれ変わる』という意味。若くしてギャングスタ・ラッパーとしての地位を確立し、魑魅魍魎はびこる壮絶なヒップホップ史の渦中でも常にオリジナリティを貫いてきた彼が、今になって『生まれ変わる』ことを願った彼の心の機微が本作では丹念に紡がれている。厳しい母親に育てられた幼年期、銃撃事件での逮捕、2パックやノートリアス・B.I.Gらを失くすことになったヒップホップ東西抗争、そして親友ネイト・ドッグの死。多くは語らず、静かに自らの安らぎとアーティストとしての意義をこのジャマイカの地で見つけていくスヌープ・ドッグの等身大の姿が、ここにある。

スヌープ・ドッグの魂の旅路を共にしていくと同時に、我々はアメリカ・ヒップホップ史とジャマイカのレゲエ史の大きな流れを目の当たりにする。常にその最前線で活動してきたスヌープ・ドッグだから響く言葉のひとつひとつは、次世代に対しての啓示にも見えるし、これまで彼を育んできたヒップホップ、ひいては音楽への恩返のようにも映る。PIMP(ヒモ)、ギャングスタ、そして父親。彼の妻シャンテと娘コリイBがコーラスに参加した銃器反対ソング“ノー・ガンズ・アラウド”への想いを語る彼の表情、最後に『スヌープ・ライオン』という名前を受け継いだ時の彼の微笑みに強い感動を覚えるのはヒップホップ、レゲエ好きだけでは決してないはず。

彼の大胆な、いや必然とも言えるこの新たな生まれ変わりは、賛否両論を呼んでいるようだ。しかし、ここにある彼の歌声に嘘偽りは微塵もない。7月27日(土)、スヌープ・ドッグと辿る魂の旅、贅沢な音楽史の旅、是非とも体験してほしい。

text by ken suzuki

Snoop Lion – “No Guns Allowed ft. Drake, Cori B”

Snoop Lion最新映像 – Torn Apart ft. Rita Ora

映画『スヌープ・ドッグ/ロード・トゥ・ライオン』

2013年7月27日(土)シネマライズ他にて全国順次ロードショー!

監督:アンディ・キャッパー
出演:スヌープ・ライオン(スヌープ・ドッグ)、ドクター・ドレー、ディプロ、バニー・ウェイラー、ダミアン・マーリー
2013 年/アメリカ/96 分/ビスタ/5.1ch/原題:Reincarnated
© 2013 VICE FILMS, INC., SNOOPADELIC PICTURES, INC.
配給:角川書店

Release Information

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