ギターについて

ーーあなたが使っているギターは、フラメンコとクラシックのハイブリッドだとのことですが、そもそもフラメンコ用のギターとクラシックのギターの本質的な違いとは何でしょうか。それを融合することで、何が可能になるのでしょうか。

クラシック・ギターとフラメンコ・ギターの外見はそっくりです。しかし、クラシックとフラメンコでは目指す音や音楽的な要求が違うため、両者のギターの構造はまったく異なります。たとえば、クラシックでは1音ごとの響きを大切にするため、弦高(弦とフレットの隙間)が高いのに対し、スピード感を求められるフラメンコでは、弦高が低いのが一般的。また、響きを重視するクラシック・ギターはボディ部分が厚く出来ているのに対し、フラメンコ・ギターは音の立ち上がりを重視し、音の減衰を早くする目的で、あまり共鳴させない作りになっています。フラメンコ・ギターは弦高が低いため、特有の(弦とフレットが接触する時の)雑音もあり、フラメンコ・ギターでクラシックが求める音を出すには限界があるのです。

その点、私が使っているハイブリット・ギターは、スピード感を求められるフラメンコの奏法と、クラシックの求める美しい音の両方を再現することが可能です。そもそも、このハイブリッド・ギターは、2011年5月にベルリン・フィルのヨーロッパ・コンサートで「アランフェス協奏曲」を演奏するときのために開発されたものです。その1年前、ベルリン・フィルとの「アランフェス」での共演が決まったとき、「どのギターで演奏するか?」という問題が浮上しました。というのも、この曲を演奏するにはフラメンコ・ギターは適していないと考えたからです。と同時に、私はこの曲をフラメンコ的な奏法で演奏しようと決めていましたから、フラメンコ的な特性のまったくないクラシック・ギターで演奏することも、選択肢からは消えていました。

そこで私は、18世紀から続くギター製作者の6代目、ビセンテ・カリージョに相談しました。ビセンテの答えは「それならハイブリッド・ギターを作るしかないな。少し時間をもらえるだろうか?」。それから9ヶ月の間、ビセンテはギター工房に缶詰になり、私は自宅から彼の工房への往復800キロの距離を7回通い詰め、試行錯誤を繰り返しました。そしてついに、ビセンテと私の理想とするハイブリッド・ギターが完成しました。それはクラシックの演奏に適した美しい音質を持ち、同時にフラメンコの奏法に見事に反応する、まさに夢のようなギターでした。

そして迎えた2011年5月1日。ベルリン・フィルとの共演の日、客席にはビセンテの姿がありました。ビセンテは、自分の製作したギターがこの大舞台で日の目を見た事に感激し、第3楽章の演奏が終わると、人目をはばかる事なく男泣きに泣いていました。

ーーギターを学ぶ日本の若い音楽家に向けて、アドヴァイスをいただけますでしょうか。

プロの演奏家を目指すなら、初期の段階からメトロノームを使って、リズム感覚を体に叩き込むことが大切です。テクニックを磨くことはとても大事ですが、せっかくのテクニックも、美しい音も、それを支えるリズムがしっかりしていなければ台無しになってしまうと私は思います。
また、精神的な訓練もとても大事だと思います。

楽器に情熱を傾けるのは素晴らしいことですが、それに囚われてしまうと、それは精神的な弱さにつながると私は思います。毎日練習するのはもちろんのことですが、例えばギタリストが、ギターを手にしていないと不安になるようでは、ギターに支配されてしまっていることに気づいてください。強迫観念から素晴らしい芸術は生まれないのです。

コンサートについて

ーー今回の来日公演の見所を教えて下さい。演奏曲目、構成など。

今回の来日公演では、第1部でファリャの楽曲を、第2部で私のフラメンコの音楽を披露する2部構成です。

見所は、なんといってもコンサートのために新しくカルテットにアレンジしたファリャの楽曲です。CDではギターだけで演奏していますが、ステージでは私と、フラン・カルロス・ゴメスのギターに加えて、チャロ・エスピノのカスタネット、アンヘル・ムニョスのカホン、そしてふたりが巧みに織りなすパルマによって、ファリャの音楽のフラメンコ的な魅力を最大限に引き出します。また、アンヘルとチャロのバイレによって、ファリャの音楽がさらに立体的に浮かび上がってくるのも見逃せません。

世界が賞賛するギタリスト、カニサレス。秘めたる情熱と抑制 interview150717_canizares09

Photograph by 石田昌隆

EVENT INFORMATION

カニサレス フラメンコ・カルテット 全国ツアー2015

2015.09.19(土)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール ※SOLD OUT
2015.09.20(日)穂の国とよはし芸術劇場プラット 主ホール
2015.09.21(月・祝)焼津文化会館 大ホール
2015.09.23(水・祝)よこすか芸術劇場
2015.09.27(日)北九州市立戸畑市民会館 大ホール
2015.09.29(火)銀座 王子ホール ※SOLD OUT
メンバー:カニサレス・フラメンコ・カルテット、フアン・マヌエル・カニサレス(フ ラメンコ・ギター)、フアン・カルロス・ゴメス(セカンド・ギター)、チャロ・エスピーノ(バイレ、カスタネット、パルマ)
アンヘル・ムニョス(バイレ、カホン、パルマ)

スーパー・ソリスト meets 新日本フィル カニサレス&新日本フィル

2015.09.26(土)
すみだトリフォニーホール
〜カニサレスのアラン フェス協奏曲〜
第1部:アランフェス協奏曲(with新日本フィル)、ファリャ
第2部:カニサレス ・フラメンコ・ カルテット

詳細はこちら

RELEASE INFORMATION

[amazonjs asin=”B00V6EHPK2″ locale=”JP” title=”恋は魔術師 ~カニサレスによるファリャ三部作 VOL.3(解説付き)”]
Amazonで購入 HMV ONLINEで購入