間このアルバムに高まらずして、何に高まるというのか? 日本でもお馴染みのディスコ・パンク集団=チック・チック・チックの3年ぶりとなる最新アルバム『THR!!!ER(スリラー)』は、間違いなく2013年のアルバム・ランキングでも上位に食い込む大・大・大傑作だ。というか、もしかしたら、彼らの最高傑作なんじゃないでしょうか?

まず、FMラジオなどで先行解禁されたリード・トラック“One Girl / One Boy”がとにかくヤバい。ヤバすぎる。モータウン黄金期のフィーリングをふんだんに詰め込んだキラキラのギター・リフと、腰から下半身にダイレクトに訴えかけてくるような超絶グルーヴ、そしてキャッチーきわまりない男女のハイトーン・ヴォーカル。無敵。はっきり言って、ジャスティン・ティンバーレイクの“Suit & Tie”、ダフト・パンクの“Get Lucky”と肩を並べるどころか、凌駕しつつある特大クラブ・アンセムなのだ。もちろん、“One Girl / One Boy”以外の収録トラックも捨て曲ナシ。キング・オブ・ポップの名盤からタイトルを引用したのもうなずけるってもんだ。

全9曲40分未満(日本盤ボーナス・トラックを除く)。バンド史上もっともスムース&コンパクトな作品でありながら、楽曲ごとの音楽性は見事にバラバラで、DJミックスやコンピレーション・アルバムのように良い意味で統一感を削いだサウンド・プロダクションも素晴らしい。事実、フロントマンのニック・オファーをはじめバンド自身も過去の作品は「長すぎる」曲が多かったことを認めているようで、今作では意識的にタイトな楽曲を集めようとした。そこで協力を依頼したのが、USインディー・ロックの至宝=スプーンのドラマーでもあるジム・イーノ。彼が所有するテキサス州オースティンの「Public Hi-Fi」にてレコーディングされた『THR!!!ER』では、ジャム・セッションなどの「ライブ感」よりもスタジオ作品ならではのアイディアやダイナミクスを積極的に取り入れたのだとか。ところが、結果的にはライブで味わうのが待ちきれない名曲ばかりが集まったアルバムに仕上がったというのも、実にチック・チック・チックらしい。

今作『THR!!!ER』には、MCハマーの91年の大ヒット曲“Too Legit to Quit”にゲスト参加したソニア・ムーア(“One Girl / One Boy”)をはじめ、ラスト・トラック”Station(Meet Me At The)”に客演したDirty Ghostsことアリソン・ベーカー(エイソップ・ロックの嫁!)といった、過去最高に女性ヴォーカリストたちがフィーチャーされている点にも注目。また、5曲目の“Slyd”や8曲目“Careful”などに顕著だが、ヒップホップ的なサンプリングの手法をとことん生歌・生演奏に置き換えて作られているのも面白い。聴けば聴くほど驚きと発見があるこのアルバム。これはきっと、チック・チック・チックなりの先達へのリスペクトなのだ。

(text by Kohei Ueno)

★3月にアメリカはテキサス州オースティンで開催された世界最大規模の音楽・映画・ITの見本市<SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)>にNY在住のQetic特派員ダン&ヤマダが公認プレスとして取材を敢行。3月14日と16日の2回に渡って出演したチック・チック・チックの最新最狂ライブをひと足早く体験してきました! ライブ中にはフロントマン、ニック・オファーのパワーアップした伝家の宝刀セクシー・ダンスも炸裂!! 地球に生まれて良かったーー!!! さらに、ニックへインタビューも遂行&Qetic読者のみなさんへコメントももらっちゃいました~!

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Live Report : !!!(chkchkchk) – SXSW

2013.03.14 (THU) @ Clive Bar / 16 (SAT) @ Hype Hotel
Austin, Texas, USA

約3年ぶりの新作にして傑作『THR!!!ER(スリラー)』を引っ提げ、帰ってきたチック・チック・チック! 新作のみならず、彼らはライブでも大変なことになっていた。今回はアルバムの発売に先駆け行われたアメリカ・ツアーの道中である<SXSW>での公演。新作が発表されてから間もないというのに既にライブはジュックジュック。音源とは全く別次元の世界観がそこにはあったのだ。

今回は普段のメンバーに加え、新作でフィーチャーされている女性ボーカリスト、ソニー・ムーアをコーラスに従えてのセット。ライブは新作より“Get That Rhythm Right”でスタート! 不穏な雰囲気を醸し出すこの曲は、何かが起きることを予感させ、既に会場は熱気プンプン。1曲目を演奏し終えると、突如フロントマンであるニック・オファーがステージを降りて、観客席前の隔てる仕切りの上に置かれた飲み物やゴミを片付けているではないか。黙々とゴミを片付けるシュールな姿に何をしているのかと思うと、ニック・オン・ザ・ステージ! そう、あのストリッパー顔負けのセクシーなダンスをするためだった(笑)。その仕切りの上で踊り狂うニックに応え、オーディエンスのボルテージも2曲目にしてヒートアップ!

【特集】来日公演は肉弾戦必至! チック・チック・チックのSXSW最新最狂ライブをレポート。インタビュー&映像コメントも!!! feature130422_chkchkchk_sxsw2013_hype-hotel_04-1

【特集】来日公演は肉弾戦必至! チック・チック・チックのSXSW最新最狂ライブをレポート。インタビュー&映像コメントも!!! feature130422_chkchkchk_sxsw2013_hype-hotel_43-1

次曲は発売に先駆け公開された“ONE GIRL/ONE BOY”をドロップ! 予測不可能で目まぐるしく展開する演奏とソニー・ムーアの自由自在の歌声が壮大なグルーブを生み出す。ニックも負けじと観客席にダイブし、会場は早くも狂乱状態に。同じく、先行曲として公開された “Slyd”は音源のミニマルなサウンドとは裏腹に骨太なバンド・サウンドでオーディエンスの心をがっちり掴む。新曲だというのに、信じられないほどの一体感が会場には生まれていたのだ。

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全曲演奏し終えると、鳴り止まない拍手と歓声と共にニックのセクシー・ダンス中毒者が続出し、オーディエンスも中々会場を後にしなかった。“Must Be The Moon”などのアンセムはやらなかったものの、新作を中心に組まれたセットは、既に新たなステップのショーとして完成されたものになっていた。バンドのサウンドはより重厚に、ニックのダンスも何倍も激しくセクシーに。次のインタビューでも語っているように来日公演もそう遠くないはず! 日本のステージでも魅せてくれるであろうチック・チック・チックの最新型をより楽しむ為にも、『THR!!!ER』をしっかりモノにして今から大いに期待しておこう!!

(text by Taisuke Yamada)

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Set List
01. Get That Rhythm Right
02. Except Death
03. One Girl/One Boy
04. Jack Ruby
05. Byron
06. Slyd
07. Jamie,My Intentions Are Bass
08. Hearts Of Hearts

★チック・チック・チックのフロントマン
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