【インタビュー】彼らを聴いても尚、日本の音楽に無関心でいられるか。鬼才・常田大希の衝撃作『http://』

――ちなみに、インターネットは常田さんにとって大きな存在ですか？

いや、むしろ積極的には触れなかった部類のもので、遠ざけていた部分があったと思います。これはインターネットも、東京もそうですね。俺が長野の田舎で生まれ育ったってのもあるのかも。

――へええ、それは面白いですね。

俺、もともとどっちも全然好きじゃなかったんですよ。でも、音楽をするために東京で生活しはじめて、そこに「腐れ縁」のようなものを感じ始めたのかもしれないですね。インターネットも然り。好き嫌いではなくて、ただ「付き合わざるを得ない」というか。今そういう環境に置かれているからこそ、その要素が出てくるようになったんだと思います。

――では、インターネットの用語にも色々ある中で、『http://』というタイトルを選んだ理由は？

それが一番象徴的な言葉に思えたんです。『http://』は（インターネットをする際に必要となる通信プロコトルとして）全部のアドレスについているものだし、一番パンチがあると思うし。今回ジャケットを（クリエイター集団）have no ideasのクロサワモモカにやってもらったんですけど、彼女にも『http://』というテーマを伝えました。

――今回のジャケットでは、常田さんを模したイラストの髪の部分に雑多なモチーフが大量に描かれていて、そこに『http://』っぽさを感じますね。

そうですね。それに、自分の顔の部分は写真を送ったわけではなくて、もともと知り合いでもあるので、記憶をもとに描いてもらいました。「東京」「インターネット」=「和洋折衷、魑魅魍魎なんでもござれ」が今回のコンセプトなので、それに繋がってくることだったんです。

――一方、MVでは昔のフランス映画のシーンをコラージュしたMADも作っています。

Daiki Tsuneta Millennium Parade – Onibi feat.Jua M Bandja (MAD)

これは趣味のようなものですね。基本的にものを作ることが好きなんですよ。映像の編集も昔からやっていましたし。それから、最近アニメーターのRyoji Yamadaさんとコラボしたライブは、自分では「Boiler Roomとかよりかっこよくね？」と思っているんですよ。俺にとっては音楽だけでなくて、映像も大事な要素ですね。

Daiki Tsuneta Millennium Parade × Ryoji Yamada (Animation VJ)

――音楽も映像も組み合わさったアートにしていきたいという気持ちもありますか。

それはすごくあります。それこそ、日本にはライゾマティクスやBRDGのような世界基準のcoolなチームがいるわけで、自分も「負けていられない」と思いますし。

――そんなアルバム発売を前にして、６月末にはCIRCUS TOKYOでリリース・パーティーも開催されました。このライブに「CHAKKA（＝着火）」というタイトルをつけた理由は？

これは、まだ自分達の音楽は異端扱いで火はついていないので、「その火を俺たち自身でつけてやろう」ということです。俺は何かのシーンに属しているわけではないし、そこは自分たち自身でやらなきゃいけないと思うので。

――確かに、情報量が多くて、様々なジャンルが混然一体となっていて……この作品を何と何の間に置くかを考えても、なかなか比較対象が見つからないですね（タワーレコード新宿店では「J-INDIE」「JAZZ」「NEW AGE」の３フロアで展開）。

そうですね。でも、それでいいのかなと思うんですよ。インターネットの発達によって世界各地色んな場所で起こったことが日本にも流れてくるのが自然な世代の俺たちが、特定のシーンに物事を据えようとするのは勿体ない。俺の今の生活や置かれてる立場からならではの視点を持った音楽を、世界に向けてあくまで自然に作りたいです。ただ色々言いましたが、人も音楽もアートも、エネルギーのあるものが好きなので、ここまで話したコンセプトはあくまで後付けでしかなくて、「ガーン！！」という衝撃をそのまま体験してもらえたら嬉しい。絵とかでは「バーッ」と描いたようなものがあるのに、音楽には何でそれが少ないんだろう？　と思うんですよ。「芸術は爆発だ」というように「よくわかんないけどスゲえ」みたいなものは何で少ないのかな、と。そういう意味でも、今回の『http://』を通して、拒否反応でも何でもいいので、聴いた人の反響を聞けたら嬉しいと思っていますね。未知の世界へようこそって感じ。

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