――ヒップホップなどへの興味は、あなたたちの音楽にプロダクションやグルーヴのユニークさを加えていますね。伝統的な音楽とモダン・ミュージックの要素とを混ぜ合わせる魅力とは、どんなものだと思っていますか。

L+N それはさっき言った通りね。私たち自身が異なる文化の中で生きてきたの。キューバとフランス、黒人と白人、昔のサンテリアのお経と現代の西洋音楽。それら全てが私たちであり、どういう音楽を作ろうかって考えたことはなくて、自然に生まれたものだわ。

――曲作りはどのように行われていくんでしょうか。メロディーやリズム、歌詞などそれぞれに担当がある形ですか?

L 今までは全て私が作曲と歌詞を担当して、ナオミはその曲にリズムを加えていたわ。でもリチャードと一緒にスタジオで作業した時には、(恐らくアレンジ面などで)ナオミもやりたいことがはっきりわかっていたと思う。スタジオにいるのが好きなのね。リチャードと彼女は同じ方向性を向いていたわ。

――ユニット名はヨルバ語の“twins=双子”をもじったものだそうですが、このユニット名に決めた理由を教えてください。また、2人でイベイーを結成してから、<XL>と契約して変わったことはありますか?

N 双子だからイベイーを選んだわ。ヨルバの神話で、双子が歌と踊りで悪魔に勝つ話があるのね。

L 私の本名はリサ・カインデで、カインデとういうのは悪魔に勝った聖なるイベイー(双子)の一人なの。だからイベイーという名前を選ぶのはごく自然のことだった。

L+N (〈XL〉と契約したからといって)曲はいままでと同じだけど、変わったことといえば、スタジオで作ったエレクロニックな部分とライヴでのパフォーマンスね。スタジオで細かくレコーディングしたことでより自分たちの音楽を深く知ることもできたわ。

Ibeyi – “River”

――リチャード・ラッセルはあなたたちの音楽に惚れ込んでいるようですが、プロディジーなどに始まって、これまでトム・ヨークやジャック・ホワイト、M.I.A.、ヴァンパイア・ウィークエンド、ザ・ホラーズ、ザ・エックス・エックスなどをリリースしてきた<XL>というレーベルに加わったことについてはどんな感想を持っていますか?

L+N 〈XL〉と契約したアーティストの中で最もラッキーだと思う! 〈XL〉は若いアーティストを信用してくれて、アーティストのことを第一に考えてくれるわ。他のレーベルは私たちみたいな19歳の若い子を自由にさせてくれないかもしれない。

――〈XL〉からリリースされた『オヤ EP』の「オヤ」とはサンテリアの女神の名前になっています。この曲が出来た過程と、歌詞でどんなことを表現したのか教えてください。

L “オヤ”は墓地に住んでいて、お墓の上で踊るオリシャ(※3)のこと。この曲は元彼と別れた1週間後にキューバにいる時に書いた曲ね。この曲を書いたおかげで失恋を乗り越えることができたわ。

※3.ヨルバの神。

――英語やフランス語、ヨルバ語の言語ミックスで歌うことにはこだわりがありますか?

N 以前は英語、フランス語、スペイン語とヨルバ語で歌っていたものね。でも、このアルバムは英語とヨルバ語だけにすることを決めたわ。スペイン語の曲は全然別ものでアップテンポでキューバっぽい。フランス語の曲はカヴァーだったから、リチャードには聴かせることすらしなかったの。

Ibeyi – “Mama Says(LIVE)”

――EPに収録されている“Oya”のアカペラ・ヴァージョンは、ヨルバ・カルチャーの宗教的な雰囲気がとてもダイレクトに伝わるものになっていますね。アカペラを入れるというアイディアはどうやって生まれたものだったのでしょう?

L+N 最初に言わなければいけないのは、“Oya”は道を開き、そして閉じる神エレグア(※4)の曲であるということ。サンテリアの宗教儀式の始まると終わりはエレグアのチャントでなければいけないの。私たちはエレグアでイベイーの道を開き加護を得たかった。これは私たちの父の神でもあるわ。それにイベイーのための祈りでもあるのよ。

※4. オリシャ(ヨルバの神)の中で一番目にでてくる神であり、神々と人間をつなぐ役割を果たす。

――現在デビュー・アルバムをリチャード・ラッセルとともに作っているそうですが、これはどんなものになりそうですか? また、これからどんなアーティストになっていきたいですか。

L+N アルバムはこのEPに収録されている楽曲のサウンドの延長線上にあると思う。私たちの未来? そうね……流れに身を任せるわ:)

(text&interview by Jin Sugiyama)

Release Information

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