——今回はメンバー間でもよりバンド的なやりとりが生まれていったんですね。“Song For Unity feat. トモキ・サンダース”は、どんな風にできたものだったんですか?

これはファラオ・サンダースの息子でもあるトモキに吹いてもらうことを最初から想定して書きました。すべて「トモキだったらこう吹くんじゃないか」と想像して、自分がサックス奏者になったような気分でメロディを考えましたね。僕はSLEEP WALKERの作品でファラオ・サンダースをプロデュースしたことがあるし、今でもファラオ・サンダースやアーチー・シェップ(Archie Shepp)、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)のようなレジェンドとやりたい気持ちもあります。でも、ファラオ・サンダースとは過去にやっていることもあって、それなら今回は息子のトモキと一緒にできれば面白いんじゃないか、と思ったんですよ。

【インタビュー】沖野修也率いるKYOTO JAZZ SEXTET最新作『Unity』。異なる人種・価値観・時代を調和する音楽 interview_kyotojazzsextet_tomoki-700x980
トモキ・サンダース

——もともとKYOTO JAZZ SEXTETは、沖野さんよりも下の世代の方を集めたバンドでもあると思います。それだけに、より若い世代のトモキさんの方が、このグループには合っていたのかもしれませんね。

そうですね。僕は初期のMONDO GROSSOやジャミロクワイ(Jamiroquai)、インコグニート(Incognito)、ブラン・ニュー・ヘヴィーズ(Brand New Heavies)のようなアシッドジャズ世代で、他のメンバーはSOIL&”PIMP”SESSIONSやquasimodeのようにそうしたアシッドジャズを自然に聴いてきた世代で。トモキはさらにその下の世代ですよね。彼はヒップホップ・リスナーで、ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントン(Kamasi Washington)のような音楽に興奮している世代。つまり、今回の『UNITY』には3世代のミュージシャンが集まっています。若い人には同世代のヒーローが必要だと思うし、これは僕が若い人の為の音楽をやって、若い人に「聴いてください」ということでもないんですよ。むしろ若い人と一緒にやることで、自分の音楽も自然に聴いてもらえたらいいかな、と。「若者もいるし、色んな世代もいる」ということなんです。KYOTO JAZZ SEXTETは世代のレイヤーがある方がいいと思うんです。もともと『MISSION』も、「60年代のジャズと00年代以降のジャズを融合させたらどうなるだろう?」というアイディアでできた作品だったし、今回は3世代が同じアルバムに集まったということです。

——そうしてあらゆる時代や世代を超えていくということは、沖野さんの音楽に対する考え方としても、大事なことのよう思えます。

僕はDJを28年間やっていますけど、僕の活動はこれまでもつねに、新旧の音楽のミックスだったんです。だから、新譜しかかけない/旧譜しかかけないということではなくて、「新しいものの中にも、古いものに負けない良さがある。」「古いものの中にも、新しいものに負けない要素がある。」と思っていて。そういうものを混在させ、「昔の曲だから懐かしい/新しいものだから最先端」という常識を取っ払って、時代が違えども面白いもの、かっこいいもの、新しいものを混ぜ合わせていきたいと思っているんです。それはDJのときも、曲を作るときもそうですね。自分に課しているというよりも、自分自身が本当にそうしたいと思っているというか。洋服もデザインもグラフィックもそうで、時代は関係ないと思うんですよ。

——特に今は、それをより体験しやすい時代になってきていますよね。

そうですね。過去の情報にアクセスすることが、格段に簡単な時代になってきている。動画もあれば、ネットで検索できるわけですし。

——昔なら簡単には見られなかった映像にアクセスすることもできるようになりました。

もちろん、インターネットを手放しでは褒めないですけど、探しているものに出会えるという意味では劇的に進化していますね。そういう時代だからこそ、それを探して終わらせるのではなくて、作品として形にできればという気持ちはあります。「新旧の融合」ですね。