正直、前作アルバム『BREAKING OUT BASIS』以降、私はMOP of HEADのライブを体感するにつけ、彼らがどのような方向に赴きたいのかが見えにくくなっていた。前回のインタビューでは、「ダンスロックは卒業だ!!」、「今後はアカデミックさや叙情的な方向性に行くと思う」等を語ってくれた割には、ライブに於いては、逆にガシガシでバキバキ、作品で見られたサウンドスケープさや叙情性を時折織り交ぜつつも、中心はやはり、“踊る”よりは、“踊らせる”類いのダンスミュージックが展開されていたからだ。
“彼らは一体、どちらの方向に行きたいのだろう……?”
それからしばし。彼らからニューアルバム『Vitalize』が届けられた。そして、このアルバムには、そのどちらもが共存/共生していた。いわゆるイマジネーション豊かに想像させる部分と、何も考えずに頭をからっぽにして、ただその放たれる音楽に身を委ねていれば、高揚するし、気持ちがいい、その両極が、だ。しかも、これまでに見られなかったエレガントさや分かりやすさ、伝わりやすさまでも携えて……。
中でも特に耳を惹いたのは、“歌”の出現であった。とは言え、この場合の歌とは、あくまでも肉声という楽器の一種といった趣き。これらが実に有機的に作品に作用し、今作を通し、今後広がっていくであろう間口や入り口、そして、ポピュラリティの獲得への導線をうかがわせてくれる。
早速4人に今作を中心に色々と話を訊いてみることにした。
『Vitalize』ジャケット
Interview:MOP of HEAD
[George(Machine)、Kikuchi(G)、Satoshi(Dr)、Hitomi(B)]
音楽で認めてもらいたいし、聴いたり接してもらうキッカケを作りたかった
ーー今作は前作の揺り戻し的に、以前のMOP of HEADのガシガシなスタイルに戻ってきた反面、歌が導入されているところに耳が惹かれました。
George 前作(3rdアルバム『BREAKING OUT BASIS』)は1枚目のアルバムで付いたイメージを払拭したいと臨んだところもありましたからね。いわゆるミュージシャンとして、インテリジェンスやアカデミックさ、“それだけじゃないんだ、俺たちは!!”とのアピールや、“他の「ダンスロック」と称されているものとの差別化”、それから、“このようなインストバンドもあるんだぞ!!”というアイデンティティにかなり注力して作ったんです。言い換えると、ミュージシャンであることを証明したかった。実際、『BREAKING OUT BASIS』は、周りの音楽好きには高評価だったんです。だけど、1枚目が好きだった人たちには難しい音楽に映ったみたいで。より、“難しいインストバンド”として捉えられるようになってしまったんです。かなりポップなアルバムだと自負していたのに(笑)。合わせて、世間のイメージ等が、MOP of HEADはどんどんコアな方向に向かっていると思われ出していたし。で、みんなに聴いてもらうにはどうするか? を色々と考えたり、研究してみたんです。
▼Mop of Head Breaking Out Basis MV
ーー研究?
George (笑)。今、売れているものを色々と聴いたんですが、ほぼほぼ勉強にはならず(笑)。
ーーそれはレベルが低くて?
George いや、その逆で。凄くレベルが高くて。特に売れてる楽曲は、曲だけ聴くとかなり高いレベルのもので。反面、歌がそれを打ち消しちゃってるところも多く見られて。あと、ここ近年、EDMの波が席巻してきているじゃないですか。まっ、これにはメンバーの誰一人、ピンとは来ませんでしたが(笑)。そこに不自然に寄り添っていくのも、なんか違うなと。あえてEDMの真逆なものを残したくなったんです。
ーー確かにMOP of HEADの音楽性はEDMの一般的なイメージとは真逆なもので成り立っている気がします。
George 僕、EDMでは全然踊れないし、酒も進まないんですよね。それこそテキーラを20杯ぐらい飲めば踊れるんでしょうけど(笑)。だけど、やっぱり素面でも踊りたいし、そんな音楽を作りたい。あと、世の中で認められたいとの欲も出てきたし。
ーー意外です(笑)。
George やっぱり音楽で認めてもらいたいし、聴くキッカケや接してもらう入り口を作りたかった。それもあって今作では歌ったし、これまで以上にポップな部分も出してみたんです。あと、やっぱり自分たちの基盤になるのが、ギターがめちゃくちゃハードロックだというところだというのを再認識したし(笑)。
MOP of HEAD – George
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