MOP of HEADが歌を!? そのキッカケは、変な声の入ったメンバーからのデモテープだった

ーーところで今回、あえてGeorgeさんではなく、ベースのHitomiさんとドラムのSatoshiさんが歌ってらっしゃるのには何か理由が?

George 僕が曲作りに煮詰まった際、手助けも含め、Satoshiが曲を作ってきてくれたんですけど、そのデモに変な声(Satoshiの歌声)が入っていて(笑)。最初は、“うわっ、気持ち悪っ!!”ってなったんですけど(笑)、妙にそのメロディが良くて。トラックは“Spring Rain(電気グルーヴの“Shangri-la”にもオマージュされているシルヴェッティによるサルソウルの名曲)”のパクリみたいだったんで使えないけど、声だけは活かそうと。で、その歌声を基に逆にトラックを作り直していったんです。

Satoshi だから、歌声はデモのまんま(笑)。基本、僕が歌っている“Feeling”も、Hitomiが歌っている“Sky”も、歌ったものをループさせているだけで。言葉や英詞を、いい感じのところで合わせるというか。歌というよりかはフレージングを発しているイメージですね。

▼Silvetti – “Spring Rain”

▼MOP of HEAD – “Sky”@ MARZ 2015/4/3 Easter

ーー確かにメロディを歌うというよりも、もっと楽器的だったり、音としての歌声的な役割のように見受けられました。で、不思議だったのは、同じフレーズの繰り返しなんだけど、バックの音の変化で聴こえ方やフレーズの意味が変わって響いたところなんです。

George その辺りの、“歌は変わらないんだけど、バックの変化で聴こえ方や印象が変わる”というのは確かに意識していたところの一つで。普通、演奏に対して歌を変化させていくところを、逆に歌をベースに演奏を変化させて、同じものなのに違って聴こえさせる、その辺りの発想はデモの段階からあったんです。

Satoshi 実際はシンセのフレーズでも良いところなんでしょうけど、肉声だと、その辺りのニュアンスも変わってきますからね。やっぱり人の声って神だと改めて思いました。

Hitomi 声が入るだけでリスナーの捉え方も全然違ってくるでしょうから。耳を惹いてくれたり、より興味を持ってくれたり。最初、“Sky”を公開した時も、MOP of HEADを知っている人たちから、“ええっ!? MOP of HEADがとうとう歌った!!”ってざわめいてましたから(笑)。だけど、聴きやすさは圧倒的に増したみたいですよ。

Satoshi そういった入りやすさや親しみやすさも出てきただろうけど、逆に僕たちのことを全く知らない人たちは、“ああ、こういったバンドなんだ……。”って、よりスッと入ってこれるんじゃないかな。

▼MOP of HEAD – “Fresh” Full MV

ーーそもそも何故歌に? 僕からすると、MOP of HEADは歌をご法度にしていたり、歌に頼らないダンスミュージックを追及していたイメージがあったもので。

George ダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』が全てを変えてくれました。あの作品はダンスミュージックシーンを変えたと言っても過言じゃない。みんながみんなあのアルバムみたいなことをやりたがっていたと思うんです。エレクトロの人間が生を積極的に取り入れる方向を。だけど、みんな勇気がなくて出来なかった。それを彼らがやってくれたことによって、“そうだ、俺も!!”、“俺もこれがやりたかったんだ!!”となって。それに押されたところもあります。アシッドやウェアハウスなものをいかにポップに昇華していくか。そんなことをずっと考えてた時期もあったし。“シティポップよりエグく、且つフロアライクなものを作り出さないと……。”と、そんなことを考えながら今作を終始作ってました。

Daft Punk Feat Pharrel Williams – “Get Lucky” MV

次ページ:なるべく音がぶつかり合わないように、打ち消し合わないようにを心掛けて各曲を作った