Dreamcastとしても知られる吉本綱彦と、アートユニット『skydiving magazine』 で活躍中の村田実莉の2人が2月19日(月)から25日(日)にかけて「空気のない」もの/ことを主題とした二人展<NO AIR>を神宮前のKit galleryで開催する。

前編では2人のこれまでの活動やプロフィールを伺ったが、後半では<NO AIR>開催までのエピソードやそれぞれの作品について伺った。

Interview:村田実莉×吉本綱彦

【インタビュー】skydiving magazine・村田実莉×”ゴミ”アーティスト・吉本綱彦、「空気のない」もの/ことについての二人展<NO AIR>対談(後編) reIMG_0681-1200x800

——<NO AIR>について

吉本 展示名<NO AIR>についてですが、元々は風船が面白いと思ったんです。バナナボートとかドーナツの浮き輪とか、空気が入って成り立ってるものがそれを失ってしょぼんだ時のつたなさとか、本来あるべき形とは外れたもの。その象徴的なものが風船なのかなって。それで話をしたら面白そうってなったんです。

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red bull1/2016/cash from trash @kitgallery

村田 私は風船、空気で成り立ってるものが、抜けていって無意味になっていく様子に興味がありました。空気が入って密閉されていたお菓子とか飲食のパッケージが誰かに開けられて、用済みになったもの。そういうのはお金と時間がかかっていてみんなは可愛いと思って買うけど、すぐにゴミ箱行きになっちゃうなって広告の仕事をして思ったんです。それが繰り返される中で、ゴミから新しいマテリアルを作れるんじゃないかという発想で、今回テキスタイルをつくりました。

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“A FAKE SPORTSMAN” / GRADUATION WORKS 2016

吉本 NO AIRの意味としては、放送されてたもの(ON AIR)と、ONを逆転させたNO AIRを役目が終わったものとして解釈したんです。それらに焦点を当てた展示は面白いんじゃないかなって。

——お気に入りの作品について

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村田 ファッションブランドがパロディをやったりしますが、今回はそこから離れて古着をリメイクする感覚でやりました。古着のリメイクってOKじゃないですか。私は本物を使って新しいマテリアルを作ることは、アート作品としていいのかなって考えていて。
これ(下記)とかも、パスタのやつを……。それでちゃんと中にピカチュウを入れてるんですよ! しかもこれ生地にちゃんと起こしてやってるんです。

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村田 私がやりたいのは、ブランドのコピーではなくて、あくまで “本物”を使うこと。今まで色々と使ってきた中で、パロディーもやったことはあるんですけど、そういうのは記号が増えてる気がするので、記号を乱用するというよりは原点に帰ってそのまま使えばいいやん! という発想で作っています。

——Kit galleryを選んだ理由は?

吉本 僕が4週間キュレーションしてて、その中で一緒にやろうって(笑)。道連れです。

——お互いのことはどう思ってるの?

村田 彼のことは社会に出てから純粋に何のフィルターもなく出会った人なので、ちょっと他の人とは違う存在で見ています。まだ私は大学の枠組みの中にいる感覚が強いので、そこから外に出ていくところでステップアップしたいっていうのと、あとは彼の作品自体に興味があるところですね。

吉本 めちゃくちゃバカで、めちゃくちゃ賢いからめちゃくちゃ好き。

村田 ほほほほほ……。

吉本 やってることに嘘がないし、全面的にバカを押し出して、挙句カッコよくするスキルに脱帽ですね。馬鹿げたことをすごくオシャレなフォーマットにのせる技術がすごい。僕はオシャレに、流れにのせることができないんですよ。彼女は「ハハッ!」って言ってのせる(笑)。バカっぽい奴が本当のバカを手玉に取ってるようでクール。そしてクールな奴も手玉にとる。でも自分はバカぶるっていう(笑)。

村田 でもそれは、社会に出てから学んだものですよ(笑)。マガジン(skydiving magazine)では人間味にフューチャーしていて。生きることって難しいし苦しいって漠然と思うんです。客観的にはわかるけど、それを自分たちに消化していくというので作ったんですよ。それに共感してくれる人もいるんじゃないかって。

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吉本
 今の流れをつかんで上手いことやってる人はいっぱいいるんですよ。でも、それが流れに合わせてたまたまフィットしたみたいなのがあって、自分たちで自分たちの流れを作ろうとしてるっていうの『skydiving magazine』はあると思うんですよ。

村田 流れは作っていきたいです。流行ってることは自分でも技術的にはできるし、織り交ぜてはいるんですけど、コンセプトがないものに対してはあんまり身が入らなくて。アートは確かに無意味なんですけど、背景に実はこういうルーツがあるべきなんです。

例えば私の好きなものでは、加賀美健さんの『実家帰れ』っていう作品は本当に面白いエピソードがあって、そういうバックボーンは絶対に大切位するべきだと思うんですよ。

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村田 今回の展示に関しては、誰でも思いつきそうなアイデアではあるんですけど、自分がお菓子が好きだとか、色々結びつけられてるんじゃないかと思います。

吉本 展示とか、一時の熱だけで終わるのではなくて、その熱が派生する過程は絶対に見ておきたい。一発の打ち上げ花火だけで終わるのではなくて、しっかりと道筋が線路の上で続いていってほしい。

村田 見てて面白いし気持ちいいし共感できるのがいいよね。

吉本 火薬だけ見つけて、これ打ち上げたらいけるんじゃね?っていうのではなくて、ずっと線路があって、ごっついSLをバッと走らせるくらいのことをやってる人がいっぱいいたらいいなって思う。

村田 自分の人生と照らし合わせて、共感したりできると、アートがもっと面白くなると思います。

吉本 僕はずっと土壌を作りたいと思ってるんですよ。日本のアート業界では、ちょっとお洒落気取りに売れるものを一発ポンと作る小銭稼ぎみたいなのか、美術史に残るようなことを戦略的にやった金持ちみたいなのか、両極端みたいで。

そうじゃなくてどっちもレールにのってくれるような線路をつくる作品作りをやっていかないと、日本のアートのカルチャーはこのまま終わっちゃうから。結局自分の食いぶちを守ろうとしたら、そういう活動をしていかなきゃいけないとか。

今まで絵を買ったことがないひとが買ったり、今までお金になる絵しか買わなかったひとが本当に好きなのを買ったり、そういう現象を作ってあげるような土壌を作っていかなきゃいけないと思うので、そういう作品をつくっていきたいです。そんな現場をどんどん提案していきたいですね。