20年監禁された男
なぜ、いま解放されたのか?

屋ガロンと嶺岸信明による日本のコミックをベースにしたパク・チャヌク版『オールド・ボーイ』は、復讐に人生を捧げたふたりの男がたどる壮絶な運命を描き、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞。世界中の観客のド肝を抜き、多くのクリエイターの創造意欲を刺激した。そのひとりであるスパイク・リー監督が挑んだハリウッド版『オールド・ボーイ』は、舞台をアメリカの架空の都市に移し換え、新解釈をふんだんに織り交ぜた再創造バージョンである。韓国版のテーマとドラマの骨格を受け継ぎつつ、多様なディテールを大胆に塗りかえ、原作とも韓国版とも異なる結末を新たに創出。9.11同時多発テロ、イラク戦争、ハリケーン・カトリーナ襲来、そしてバラク・オバマ大統領誕生へと至る1993年から2013年を背景に、想像を絶するほど衝撃的で、あまりにも哀しい復讐劇を完成させた。

ハリウッドの実力派を配したキャスティングも、本作の大きな魅力のひとつ。主人公ジョーに扮し、希に見るほど激しい感情の起伏を体現するのは『ノーカントリー』『トゥルー・グリット』のジョシュ・ブローリン。前半の約20分にわたってひとり芝居で表現する監禁部屋のシークエンス、さらに30人以上の敵との肉弾バトルを長回しのワンカットで演じきった乱闘シーンは、心身を研ぎ澄ませて撮影に臨んだブローリンの気迫を強烈に印象づける。ジョーの心のよりどころとなるソーシャル・ワーカーのマリー役は、映画デビュー作『マーサ、あるいはマーシー・メイ』で数多くの映画賞に輝き、今夏のサマームービー超大作『GODZILLA』のヒロインにも抜擢されたエリザベス・オルセン。『第9地区』の主演を務めて一躍脚光を浴びた曲者俳優シャールト・コプリーが、神をも恐れぬ復讐計画を実行する謎の男を不気味に演じている。『アベンジャーズ』のニック・フューリー役で愛されるサミュエル・L・ジャクソンの凄みたっぷりの怪助演も見逃せない。

また、6月28(土)公開に向け、本作の監督を務めたスパイク・リーのインタビューが到着。映画と共にぜひチェックしてほしい。

Interview:スパイク・リー(『オールド・ボーイ』監督)

––––映画監督としてあなたは、オリジナルがすでにあり、人々から比べられるであろうことがわかっている題材にどうして取り組まれたのですか?

僕たちが取ったアプローチと、ジョシュ・ブローリンを迎えたことで、僕たちはオリジナルに敬意を示し、自分たち自身の映画で違いを作る必要があった。ジョシュは契約書にサインする前に、許可をもらいにパク・チャヌク監督のところに行った。パク監督はジョシュに、許可を与え、「僕が作った映画をなぞるのではなく、自分自身の映画を作れ」と言ったんだ。ジョシュはさらに、パク監督が許可しなかったなら、この映画を作らなかっただろうと言った。彼はパク監督の承諾なしにやるつもりはなかったんだ。

––––ジョシュのような俳優とチームを組むのは面白かったですか? 彼は研究熱心で、質問が多い俳優ですよね?

熟練し、技術があり、知性があり、物語を理解する人々との仕事は大きな喜びだ。ジョシュと僕は全てにおいて足並みを揃えて進んだよ。

––––彼の仕事は彼に任せ、あなたはほかのことに集中できるから、やりやすかったですか?

それでも俳優を演出しなくてはならないが、優れた人々だとずっと容易だ。ジョシュはとてもやりやすくしてくれたよ。

【インタビュー】スパイク・リー、『オールド・ボーイ』をハリウッド化したワケとは interview140623_oldboy_8-1

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