――なるほど。ここからは成田さんの選曲ですが、まずはフジファブリックの“虹”です。

成田 これは僕がバンドを始めたきっかけです。僕は小さい頃からクラシック・ピアニストになりたくてずっと頑張っていたんですけど、音大に入ってから友達に連れられて行ったロックフェスで彼らを観た時に、すごく「かっこいいな」と思って。鍵盤がいるバンドでここまでかっこいいと思えたのは彼らが初めてだったんです。バンドというとギターとベースとドラムというイメージで、キーボーディストがいたとしても、一歩二歩引いている印象だったというか。でもちょうど僕が観に行った時に、彼らや100sの池ちゃん(池田貴史)、東京事変、YOUR SONG IS GOODのようなバンドを観れたことが、自分の転機になったんです。“虹”はひねくれたポップが進んだうえでの最上級ですよね。

フジファブリック – “虹”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

――ユニークな音が色々と入っているのに、結果出来たものはポップというか。続く矢野顕子さんはどうですか?

成田 フジファブリックを観て、バンドを始めて・・・。でも最初はどうすればいいのかも全然分からない状態で。自分のルーツ(=クラシック)をずっと切り離して考えていたんですよ。そこから「ピアノ」と「ポップス」を繋げてくれたのが矢野顕子さんでした。80年代前半ぐらいまでは、(日本の音楽シーンでは)今みたいにAメロ、Bメロ、サビという構図が全然出来上がってなくて、頭にサビやテーマがあって展開するものが多かったと思うんです。荒井由美さんや、80年代のアイドルの曲もそうですよね。でも“電話線”はそこからうねりのある曲が出てきた時代の、中でも一番うねりのある曲というか。僕自身、形式に捉われない曲が作りたいなと思っていて、パスピエの曲で言うと、“気象予報士の憂鬱”や“デ・ジャヴ”はそういうテーマを持って作った曲かもしれないですね。

矢野顕子 – “電話線”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

――YMOの“東風”は、矢野顕子さんを経て知った曲ですよね。

成田 そうですね。僕はそれまでバンドを全然知らなくて、レッド・ツェッペリンすら知らなかったんです(笑)。それでTSUTAYAやタワー・レコードのCDを端から端まで聴き漁っていたら、まず矢野顕子さんに当たって、調べていくうちに(矢野顕子が共同作業をしたりワールドツアーに参加していた)YMOを知って。この曲はクラシカルでありつつ、僕らがやろうとしているオリエンタルな雰囲気もありますよね。日本人が世界に誇る音楽を考えた時に、過去もこれからもずっとそのひとつだろうなと思うんです。

YMO– “東風”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

成田”「どうしようかな?」と考えている時に、今のパスピエの指針になったバンドがフェニックス“

――フェニックスの“1901”はどうでしょう?

成田 僕は特に80年代ニュー・ウェーヴを好きで聴いていたんですけど、それを今の音楽シーンで出すとなった時に、昔のものをただリバイバルするようなバンドになってはいけないなと思っていて。「どうしようかな?」と考えている時に、今のパスピエの指針になったバンドがフェニックスでした。「ニュー・ウェーヴをスタイリッシュに聴かせる」ということをやっていて、今は見事にフェニックス・フォロワーが沢山いますよね。

フェニックス – “1901”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

――そしていよいよ、ニュー・オーダーの“Bizarre Love Triangle”で最後です。これを知ったのはいつ頃だったんですか?

成田 ジョイ・ディヴィジョンもそうですけど、音楽を掘り始めて割と早い段階で、「自分はニュー・ウェーヴが好きなんだな」と認識し始めてからですね。ニュー・ウェーヴらしさってキーボードで出したりする人が多いと思うんですけど、このバンドの場合は、何故かそれがベースっていう(笑)。あの独特のコーラスがかかった音も好きで、ひとつの楽器に対する固定観念を壊してくれたバンドなのかな、と思うんですよ。

ニュー・オーダー – “Bizarre Love Triangle”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

――今回挙げてもらった曲の中で、新曲“ヨアケマエ”にも影響を与えた曲はありますか?

成田 “ヨアケマエ”は、サウンド面ではフェニックス辺りを意識的に参考にしているんですよ。今のニュー・ウェーヴってDTMと生音とを融合させていて、それがクラブ・ミュージックとの融合に繋がっていると思うんですけど、パスピエがやろうとしているのは、「同期ものを使ったりしない」ということで。ドラムの素材を切り貼りするわけじゃないけど、そういうテイストも醸し出したい。そんな音作りについて影響を受けていると思いますね。

――そして6月には、各会場にUNISON SQUARE GARDEN、フジファブリック、andropの3組を迎えたライブ・シリーズ『印象E』が開催されます。今楽しみにしていることを教えてください。

大胡田 また全部男性ヴォーカルですよね(笑)。なので、圧がすごいんですけど、私はバンドが違うだけじゃなくて、性別も違うという楽しみも感じてもらえればいいかな、みたいな。

成田 全アーティスト、素晴らしい音楽性で、人としても素晴らしい人たちだからこそ一緒にやりたいなと思ったので、リスナーの人たちにも楽しんでもらえたら嬉しいですね。それに、個人的にフジファブリックは自分のルーツなので。昔、フジファブリックと四人囃子のツーマンを観に行った時、最後に全員で四人囃子の“カーニバルがやってくるぞ”をカヴァーしていて、それが本当にすごいライブだったんです。今回はパスピエとフジファブリックのツーマンなので、やりながらその時の映像が蘇ってくるのかな、と思ったりしていますね。

パスピエ、成田ハネダと大胡田なつきのルーツがわかるプレイリスト interview160518_passepied_3

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photo by Kohichi Ogasahara