大胡田“パスピエに入る前はナンバーガールに憧れて、そういうバンドのヴォーカルになりたいと思っていました”

 

――さて、今回は「パスピエのルーツが分かる曲」というテーマでプレイリストを作ってもらいました。まずは大胡田さんが選んだ小川美潮さんの“おかしな午後”ですが、これは大胡田さんの有名なルーツのひとつですね。

大胡田 私は小川美潮さんが大好きで、初めて聴いた時から、今も“おかしな午後”の世界に憧れて生きているんです。音も歌詞も歌い方も「ひとつの世界を作っているな」と思ったのを覚えていますね。私も頭の中に自分の世界があるタイプだったんですけど、当時はそれって外に説明しづらいもので。なので、こんなに形に出来てすごいな、羨ましいなと思っていたんです。

SANDII+BUN from KOH-TAO – “おかしな午後”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

――確か、映画『TSUGUMI』の主題歌に使われていたのをきっかけにこの曲を知ったそうですが、映画を観に行ったんですか?

大胡田 いえ、私が病院にいた時に、借りてきてくれたか、ビデオをダビングしてきてくれたかで、母親が持ってきてくれたんですよね。私もこの曲のように自分の世界を出して、そこにみなさんを引き込みたいとずっと思っていて、私の人間形成にもかかわってくるような曲なんです。次のナンバーガールは、私がバンドに憧れるようになったきっかけですね。当時中学生ぐらいで、レンタル屋さんで「何この黄色いジャケット……?」という感じで見つけたら、「今まで聴いたことのない音楽だな」という衝撃が凄くて。パスピエに入る前はナンバーガールに憧れて、そういうバンドのヴォーカルになりたいと思っていました。

ナンバーガール – “鉄風 鋭くなって(Live at 札幌ペニーレーン)”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

成田 昔は吠えていたもんね。メンバーでもその頃の大胡田を知っているのは俺ぐらいなんですけど、当時は「ヤバいな」と思ってて。

大胡田 (笑)。ジャケットの絵にも影響を受けていますし(パスピエのアートワークは大胡田が担当)、ナンバーガールはオリエンタルではないですけど、「和」と「ロック」という感覚もありますよね。私、セーラー服が好きなんですけど、1番最初、(『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』の)セーラー服で銃を持っているようなジャケットを見たりもして……。今まで気づいてなかったですけど、そこも影響を受けているかもしれないです。

――次はスティーリー・ダンの“彩(Aja)”です。

大胡田 最初にやっていたバンドでは、鍵盤を弾きながら作詞作曲とヴォーカルをやっていたので、その時のスタイルからの1枚です。私は演奏の上手い方が好きなんですよ。

Aja – “Steely Dan”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

――まさにその最高峰という感じで。

大胡田 それに、“彩(Aja)”には謎のアジア感がありますよね。私は海外から見た「ヤバい日本」みたいなものがすごく好きなので。純粋な日本というよりもオリエンタルな感じが好きなのは、“彩(エイジャ)”とか、次のエールの“日本海(原題:Mer du Japon)からの影響が大きいかもしれないです。エールの曲は、たまたま知りました。海外のMVで和っぽいものを探している時に見つけて、「こんなにいい映像の人の曲は全部いいに決まっている」と思って(笑)。デフォルメされていて、「これ違うんだけど分かる」みたいな感覚というか。

Air – “Mer du Japon”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

――ケイト・ブッシュの“Babooshka”はいつ頃知ったんですか?

大胡田 中学生か……高校生ぐらいですね。

――リアルタイムの音楽ではないと考えると、結構早かったのかもしれませんね。

「変わったものを探すのがアイデンティティ」みたいな時期だったので(笑)。もともとビョークが好きで、そこから辿りついたんです。今自分がステージで動いたりしているのも、ケイト・ブッシュから影響を受けているんですよ。女性なのに美しくまとめていなかったり、ちょっと本能的な表現の仕方をしていたりするのが好きで、今も聴いてますね。

ケイト・ブッシュ – “Babooshka”試聴はコチラ(スマホ専用サイト)

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