——そうして迎えた当日ですが、ハプニングも色々あったようですね。
それこそ、冒頭でVJの映像が出なかったりとか……。あとは、最初に神輿を担いで出て行く時に、それをスタッフの方が渡してくれた時点で、上の部分がボコンッ!と外れて(笑)。急遽、仮で乗っけた状態でそのまま出て行きました。あと、刀で斬りつける時に、神輿が軽すぎてあんまり斬った感じにならなかったんですよ。
——むしろ押して落とすような感じで(笑)。
そうです(笑)。最後の“どうしてちゃんのテーマ”も、エフェクターを通して、どうしてちゃんの声で歌う予定だったんですけど、それ専用のマイクが無反応で、生声でそのまま歌うっていうハプニングがあって。一回止めるという発想もあったんですけど、既に白いのが登場していたんで(*何か気になる人はDVDで確認を!)、止めると白いのがもう一回出てくることになるからそのまま行こう、という判断で。
——ハプニングを楽しめる状態になってきているんですね。
そうですね。今回は収録するんで慎重だったんですけど……。でもこのライブがあったおかげで、楽しめるようになってきました。最近は晴れ晴れとやっている気がしますね。
——収録曲の選曲に関しても、ライヴ作品ということを意識して選んでいったんですか?
もちろんです。記録媒体としてのCDの容量が74分なんで、そこに収まる尺でこの作品用に組んでいった感じです。普段やっているものの集大成という感じですね。だから、今回はライヴでやれる現時点での「ベスト盤」なんです。
——収録曲の中でポイントになっている曲を選ぶとしたら、どの辺りでしょう?
まずは“アイマイナ”ですね。最初はライヴには向かない曲だと思っていたんですけど、キックを強くしたり、リズムを切り刻むとかリアレンジして、あと、サビで言葉を繰り返したりするんで、自分の声も入る余地があって楽しいな、と思える曲になったんですよ。あとは“昨日、パンを食べました”という曲ですね。歌というか、喋っているだけなんですけど(笑)。
——作っていた時、「昨日パンを食べた」状態だったんですか?(笑)。
いや、食べてなかったですね。
——おおー。
もともとコンピに収録された曲だったんですけど、「歌モノじゃなくていいから」って言われて、じゃあ「パンっていいな」って。それで主食な感じになりました。あと、中盤の“頓珍漢の宴”でステージの前に出るんですけど、「あいつずっと(機材ブースの)後ろにいるだけだろうな」って思わせないようにするために、この曲以降は前に結構出てます。「あいつ油断すると前に出るぞ!」みたいな感じで。
——「気をつけろ!」と(笑)。
あとは10曲目の“祭りだヘイカモン”はライヴでやって楽しい曲ですね。ライヴを想定して作った曲なんですけど、実際にやってみると色々なパフォーマンスが出来るので楽しい曲だなと改めて思って。この曲は最初インストでもっとストイックな曲だったんですけど、「これじゃあヘイカモン感がないな」と思って、どうすればいいかと考えた結果、最初はBPM128だったものが200になり、変なシンセが入り……どんどん頭が悪い感じになっていったんです
——(笑)祭り感が出ていますよね。祭り好きならではの……。
はい、イメージ自体は好きです。ただ、実は人込みは嫌いだという(笑)。
——じゃあ、ピノキオピーさんが祭りに感じる魅力ってどんなものなのかな、というのは気になります。
裸の男たちが神輿担いでいる……みたいな感じとか、屋台のところに権利物のキャラクターが勝手にプリントされてたりとか、祭りの趣旨とか伝統がわからなくても浮足立っちゃう感じとか……それに楽しいだけじゃなくて、見方を変えると非日常的な変な部分が多いのが好きなんだと思います。
——ピノキオピーさんの活動にも通じる部分がありますよね。色んなものが集まっていて、それが「楽しい」に結実していく感じというか。
そうですね。あと、祭りって終わると寂しいじゃないですか。僕はそこも好きだったりします。始まって終わっていく、その感じが。
——このライヴは、ピノキオピーさんにとってどんなライヴになったと思いますか。こうしてライヴ作品になったステージでもあり、初ワンマンでもあったんですよね?
そうですね。ピノキオピーという名前で主催した初めてのイベントで、自分を目的に来てくれるお客さんがいて……「ちゃんと自分を目的に楽しみに来てくれる人がいるんだな」って、思えたイベントでした。高校の時もバンドを組んでライヴをやりたいと思ったことがあって、その時は実現出来なかったんですけど、だいぶ時間が経ってそれが出来ているというのが嬉しいですね。昔の自分に「ピノキオピーという名前で今のようなことをやっていて、自分を見にお客さんが来ているよ」ということを伝えたら、ちょっと「へええ!」みたいになるんじゃないかな、と思いますね。
——自分の感覚としては、始めた頃と今とでは、活動をしていく中での感覚は変わってきている感じですか。それともあまり変わらないですか?
変わってきているのは感じますね。最初はずっと1人で作っていただけだったものが、ライヴを出来るようになってそれを観てくれる人も変わってきている感じがしていて。世代も入れ替わっているような気もしますし。
——ボカロ・シーン以外の人にも観てもらいたい、という気持ちは出てきていますか? ボカロが好きな人に楽しんでもらうのはもちろんですが、それ以外の人にも観てもらいたいというような。
そそれはありますね。自分がやってることは、ボカロファンに限らず、音楽ファンにも興味を持ってもらえる、と思っているので、その機会が増やせればいいのかな、と思ってます。
――これからの可能性についてはどんなことを感じていますか?
ライヴについて考えるようになってから、曲の作り方も変わってきていて、ライヴを観てくれるお客さんを想定して曲を書くようになってきています。今回のアルバムにもライヴでやっていくうちにどんどん変化した曲が入っているんで、変化に富んだ活動をしていきたいですね。
——じゃあ、ボカロ・シーン以外のところでは、どんなことをやってみたいと思いますか?
ボカロ系以外の音楽のイベントに、ボカロがいるままで出たい、というのはありますね。でもどうなんですかね? 僕はボカロって、万人に好かれるものではないと思っているので。ボカロというだけで「ああ、ボカロね」ってなることってあると思うし、実際僕も昔はそういう部分があったし。だから、「ボカロでやっているけど、何か変だなコイツ」っていう、そういう風に思ってくれるようなことが出来たらいいですね。ボカロが好きな人に「いい」って言ってもらっても、そうじゃない人に「いい」って言ってもらっても、僕の中でそれは等価値で、それ以外の場所からも聴きに来てくれる、というのはすごく嬉しいんです。
——その垣根を壊せていけたら最高ですね。
そうですね。それは本当に思いますね。
——<フジロック>にも出てみたいそうですね?
そうですね。あと、最近話しているのは、「紅白に出たい」ということで(笑)。この状態のまま、国民的に愛されたいです。愛されなさそうなのに愛されたら、それはそれで面白いことになると思うので。
——愛されP(笑)。ぜひ小林幸子さん枠で……。
恐れ多いです(笑)。
――本作について最後に一言お願いします。
原曲を知っている人も更に楽しめると思います。これからもっと変わっていく可能性もありますけど、少なくともこの『祭りだヘイカモン』には、そうやって変化していった、今の時点でのベストな楽曲が収録されているのでぜひ。
ピノキオピー – 祭りだヘイカモン(ライブバージョン)
RELEASE INFORMATION
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photo by Taio Konishi