——スクラッチの取り入れ方についてはどんな風に打ち合わせていったんですか?

それはほんとにバンドみたいな感じで、スタジオで合わせました。やり過ぎても変な感じになっちゃうんで、「ここは抑えましょう」みたいなことを打ち合わせて。最初、バラードなのにすごい明るい声で「Oh yeah!!!」みたいな声が入ったりして、「それはやめましょう」みたいな話をしたりとか(笑)。

——(笑)今でもたまに、歌詞と全然関係ない合いの手が入っている時がありますよね。あれ、個人的にはめちゃくちゃ好きなんです。

ありますね(笑)。

(横で話を聞いていたマーク・ツーさん) ライヴっぽさで言うと、ライヴ中にこっちをチラッと見てくる時があるんですよ。その時は「やれ」ということらしいです。

異端のボカロPピノキオピー!独自のライブスタイルやルーツに迫る。 interview151214_pinokiop_1

——(笑)。今回、そんな今のライヴの魅力が詰まった『祭りだヘイカモン』がリリースされました。そもそも、今回ライヴ作品を出そうと思った理由はあったんですか?

この体制でのライヴは去年から始めたんですけど、こういうライヴをしていること自体を、自分の音楽を聴いてくれている人でも意外に知らないことが多かったんです。たとえば僕の曲を知ってくれている人と、それを僕が作っているということを知ってくれている人……という具合に聴いてくれている人も様々だと思うんですけど、「ちゃんとライヴをやってる」ということを伝えるためにはどうすればいいかを考えた結果、「作品として出せば一番伝わるんじゃないか」と思って。

ピノキオピー – 祭りだヘイカモン

——確かに、ニコ動で聴いたり、アルバムを買ったりしているだけだと、その人がどんなライヴをしているのか想像できないですよね。やっていることを全部伝えたい、と。

そうですね。それに、ボカロを使ってライヴをしている人で、映像付きの作品を作ってる人ってあまりいなくて。「じゃあ作ったら面白いかな」ということでやってみたんです。

——アルバム・タイトルの『祭りだヘイカモン』という曲はどのようにして生まれたんですか?

最初は夏に発売したTシャツの公式テーマソングとして制作したんです。Tシャツにオリジナルの「家紋」をプリントしたですけど「家紋」だけに『祭りだヘイカモン』という悪ふざけから始まったんですよ。その時ライヴの機会も増えていたんで、「じゃあライヴっぽい曲にしよう」という話になって。だったらもう「ワンマンライブのタイトルにしちゃおう」という話になり、結局ライブ作品のタイトルにもなったんです。だから、本当に成り行きなんですよ……。だって最初に僕が考えていたタイトル、『なるほどチャーハン』でしたし。

——なるほどチャーハン……!

でもそれをスタッフさんに言ったら、まぁ反応が悪くて(笑)。夕飯でチャーハンを食べて美味しかったんで、「チャーハンっていいな」と思って提案したら、「一発目でそれはまずいんじゃないか」という話になったんです。

——(笑)何で『なるほどチャーハン』がいいと思ったんですか……。

(晴々とした顔で)いや、「何か出せ」と言われたので、「何か出した」んです。そうしたら反応が凄まじく悪くて。何か出すにしても、あまりにも「何か過ぎた」というか……(笑)。

——(笑)。じゃあ、そこからタイトルが『祭りだヘイカモン』になって、ライヴのテーマも祭りに寄っていったんですか?

まぁ、もともと祭りとか昭和のものがモチーフとして好きだというのはあったし、自分でも「ライヴ」って言うより「祭り」って言った方がしっくりくるし。それで、今回ジャケットも昭和の絵をイメージした劇画タッチのものにしてみたんですよ。

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『祭りだヘイカモン』ジャケット

——実際に映画の看板画を描かれている方にお願いしたそうですね?

そうなんです。紀平昌伸さん(キヒラ工房)という方なんですけど、イメージや背景についても火花が散っているような感じにしてほしいとアイディアを伝えたんです。思い描いたとおりに仕上げていただきました。すごくよかったです。夜中のテンションで話し合ったことが良い方向で形になりました。

——その感覚って、ピノキオピーさんが大切にしていることなんでしょうか。

そうですね。それはやっぱり、(序盤に話した)「楽しい」ということに繋がっているんだと思うし、それが自分にとってしっくりくるんです。

——ライヴ本編にも、祭りに関するモチーフが沢山登場します。たとえば冒頭、段ボールで作った神輿を担いで登場するわけですが……映像にはちゃんと映ってないというのがまた面白いところで(笑)。

(残念そうに)そう、おさえられていないんですよね……!

——しかもその神輿を、途中、模造刀で斬るという演出もあって。この辺りのアイディアを思いついた時のことも教えてもらえると嬉しいです。

それは(スタッフの方と)Skypeで話していて、「あれやったらいいんじゃないか、これやったらいんじゃないか」とフラッシュ・アイディアの中のひとつとして挙げたもので。その時使えなかったアイディアって、何かありましたかね……。「なるほどチャーハン」も、一応平仮名にしてみたりカタカナにしてみたり、色々考えたんですよ。でも「ピノキオピー presents なるほどチャーハン」って、やっぱりちょっと意味が分からない(笑)。

——ははははは。

他にも家紋仕様の印籠を掲げるとか、提灯をいっぱい飾るとか、色々考えました。ライヴ会場の前に謎のギャラリー、出店みたいなものを作るとか、桜吹雪を散らそうとか。だから、これからのライヴでは、桜吹雪が出てくるかもしれません。

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