00年代中盤のクラブ・ジャズ・シーンに登場し、北欧スウェーデンの重要レーベル〈Raw Fusion〉から先行12インチをリリースして注目を集めると、ジャイルズ・ピーターソンからのラヴコールなども受けながら、作品ごとに日本を代表するジャズ・バンドとしての評価を確立したquasimode。平戸祐介(Pf、Key)、松岡‟matzz”高廣(Perc)、須長和広(B)、今泉総之輔(Dr)によるこの4人組は、最近では<フジロック>への出演などでクラブ・ジャズの枠を超えて人気を拡大し、12年には結成10周年を記念したベスト盤と、横山剣や土岐麻子らが参加した6作目『Soul Cookin’』を発表。その後はソロ作のリリースなどを筆頭に、個人活動も活発化させていた。そんな彼らが、スタジオ作品としては約1年半ぶりに再集結! 自分たちのルーツを収録したカヴァー集、『My Favorite Songs』を完成させた。

今回はそれぞれが本当に好きな曲を持ち寄り、曲を選んだメンバーがそのアレンジやディレクションを担当。いきなり度肝を抜かれる軽やかなレディオヘッドの‟High And Dry” 、大胆にもレゲエ調に生まれ変わった‟Love Theme From Sunflower”、ボーイズ・タウン・ギャングのディスコ・ヒット‟Can’t Take My Eyes Off You“など、自由にジャンルを横断していくラテン・フレイバーの踊れるジャズは健在だ。とはいえ、この作品で何よりも印象的なのは、優しいピアノが歌心を運ぶボビー・コールドウェル‟Open Your Eyes”などを筆頭に、メロディーのよさを浮き彫りにしたアレンジが増えたこと。そこにはクラブ・ジャズからスタートしてより普遍的な曲作りにたどり着いた、現在の彼らの姿が重なるようだ。

本文中にもある通り、この作品にはバンドの今後へのヒントも隠されているとのこと。カヴァー・アルバムとしてはもちろん、ジャズへの愛情を手に様々な境界線を飛び越えてきたquasimodeの現在としても楽しめる今作について、リーダーの平戸さんに話を聞いた。

Interview:quasimode[平戸祐介(Pf、Key)]

──そもそも、今回カヴァー・アルバムを出そうと思ったのはなぜだったのでしょうか。

6枚目『Soul Cookin’』を出してから、今回のアルバムまで1年半ぐらい期間が空いたんですけど、その間メンバーは個人活動をしていたんです。そんな中で、昨年の秋に九州のお酒メーカー、雲海酒造さんからCM曲提供の話を頂いて、バンドとして今作の3曲目に収録されている‟Smoke Gets In Your Eyes”をカヴァーすることになって。その時にレコード会社の方から「いい機会だから」と話を頂いて、今回のアルバムを制作することになりました。

──カヴァー集としては〈ブルーノート〉の70周年に寄せた09年の『mode of blue』以来ですが、今回はジャンルも時代も本当に自由な形で選曲されています。もともとこういった方向で選曲をはじめたんですか?

いや、もともとは色々と試行錯誤してましたね。quasimodeの場合、選曲に関してはプロデューサー(小松正人氏)が大きく関わっていて、最初は「映画音楽に絞って選んだらどうか」というアイディアもありました。あとは純粋に、自分たちのやりたい楽曲を出して、色々と話し合いながら選曲を進めていって。最終的には候補から外れましたけど、ジョー・ヘンダーソンの‟A Shade Of Jade”とか、〈ブルーノート〉系の楽曲ももっと沢山候補に上がってたんですよ。レコーディングの際は、「アレンジを決めすぎないように」と話してました。

──カヴァーの方向性として、「原曲を大胆に踏み外してもいい」ということですね。

制約を設けず自由にやりたかったんですよ。あと、僕らはバンドということで話し合いながらアレンジを進める姿を想像すると思いますけど、今回は選曲したメンバーがある程度までアレンジを詰めて、「ここはこうして欲しい」と全員にディレクションをしながら進めていった。これは今までとは全く違う方法でした。

──ちなみに、ゲスト・ヴォーカリストを迎えていないのも、久しぶりのことですね?

そこに関しては、やっぱり各人が力をつけたことは大きいと思いますね。それから、僕らはこれまでホーン主体でメロディーを展開してきたんですけど、それとは違うことも試したいという気持ちがあった。それで1曲目の‟High And Dry”から、ローズ(・ピアノ)でメロディーを演奏したりもしたんです。とはいえ今回の作品に関しては、メンバーそれぞれのルーツが透けてみえるような感じですよね。もちろん、アレンジ面では「そう来るか」ということも多かったですけど、でも全体としては「だよね」という感じで、4人のルーツの再確認になったというか。

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