Interview:Tegan and Sara(Tegan Quin、Sara Quin)

――これまであなたたちはライヴでメインストリームのアーティストからインディのアーティストまで幅広い人たちと共演していますね。たとえば13年には、ステイプルズセンターでのテイラー・スウィフトのライヴにゲスト参加して“Closer”を披露しています。これはどんな風に起こった出来事だったんですか?

ティーガン テイラー・スウィフトはもともと共通の友達がいて、その人を通じて「彼女が私たちの前作『ハートスローブ』がすごく好きらしいわよ」という話は聞いていたのよ。ちょうどその頃、彼女は各地で様々なゲストを迎えてライヴをやっていたこともあって、LA公演で私たちを招いてくれたという感じね。テイラー・スウィフトは信じられないぐらいプロフェッショナルな人で、応援もしてくれたし、私たちの音楽についてもいいことを言ってくれて、すごく嬉しかった。あそこまでビッグな人と共演するのも初めての経験だったから光栄だったわ。

――同じく13年には、ハリウッドボウルでケイティ・ペリーと共演しました。この時はサラ・バレリスやケイシー・マクグレイヴス、エリー・ゴールディングなど様々なアーティストと共にステージに立っていますね。

ティーガン 他の色々なものでもそうだと思うけれど、音楽の世界でも人が人を呼ぶ部分があるのかもしれないよね。そもそものきっかけは『グレイズ・アナトミー』に曲を提供したこと。私たちみたいなインディ・ロック系のアーティストの曲がTVで流れるのって、本当に貴重なことだと思う。それ以前にラジオで自分たちの曲が流れたときも聴いてくれる人が広がっていくのを実感していたんだけど、それを通じて私たちのショウに来てくれる人が増えたりすることって、とてもいいことだと思う。テイラーやケイティみたいに人気のある人たちが、「ティーガン&サラってすごくかっこいいわよ」って言ってくれることは、ある意味承認印を押してもらうようなことでもあって、私たちにとっては大きな影響があった。ケイティと共演したときは、ライヴ自体にチャリティ的な意義もあったし、あの場所でサラ・バレリスやエリー・ゴールディングも含めたみんなが「ティーガン&サラのことを好きになるべきだ」って紹介してくれたのはすごいことだったわ。

――逆に、最近のインディ・アーティストとのコラボレーションで印象に残っているのは?

サラ ここ最近は正式な形で共演することはなかったけれど、リミックスという形で色んな人とかかわることはあって、中でもロンドンのシャウラがリミックスをしてくれたのは嬉しかった。(『Love You To Death』日本盤ボーナス・トラック)新作からのファースト・シングルになった“ボーイフレンド”のリミックスを「誰にやってもらおうか?」と考えたときに、当たり前じゃない人がいいと思ったのよ。結果として素晴らしい出来になったと思うし、彼女のような人たちが私たちの音楽に特徴的な音を加えてくれるのを見るのは楽しかった。

――自身のライヴでも、シンディ・ローパーの“Time After Time”やブルース・スプリングスティーンの“Dancing In The Street”など、様々なアーティストのカヴァーを披露しています。カヴァー曲を選ぶ基準や、その時に大切にしているのはどんなことですか?

ティーガン シンプルに「自分たちが好きな曲」をカヴァーしている感じね。シンディやブルースの場合は、若い人たちの中には彼らの曲を聴いたことがない人もいると思うから、「私たちに影響を与えたのはこんな人たちなのよ」という意味で選んだりしたわ。それから、リアーナのカヴァーをやったときはみんなに驚かれたりもした(笑)。そんな風に、思いがけない曲をやってみんなを驚かせたいという気持ちもあるかな。今は私たちの自身の曲が増えたこともあって、なかなかカヴァー曲を入れられないんだけど、基本的には自分たちが楽しいからやっているんだと思う。

――そうしたライヴでの経験は、スタジオでの作業にも反映されるのでしょうか?

サラ もちろん。そのすべてが私たちの音楽に影響を与えてきたと思う。自分たちのツアーを通して学んだこと、他のミュージシャンと一緒に演奏して学んだことが、私たちの活動の仕方に影響を与えたことは本当に多かったから。他の人のステージの様子を観て学ぶこともあるわ。たとえばニール・ヤング。彼のツアーに同行したときに、彼自身の親切でプロフェッショナルな様子に感銘を受けた。それに、彼の場合は、スタッフが25年~30年ぐらい、ずっと同じ人たちなのよね。その様子を見て、「私たちもこうなりたい」って思ったのを覚えている。ツアーではスタッフと毎晩一緒に仕事をするわけだから、その人との信頼関係を作るのって大事なことだよね。そうやって他の人たちのライヴの仕方、ステージの作り方、お客さんとのやりとりから、色んなことを学んで来たのよ。

――さて、今回の最新作『ラヴ・ユー・トゥ・デス』は、ほとんどがグレッグ・カースティンとともに3人だけでレコ―ディングされた作品になっていますね。

ティーガン そうね。“100X”と“ダイイング・トゥ・ノウ”はジェシー・シャトキンとの共作でもあるけど、スタジオではグレッグと私たち2人の3人だけでレコーディングしていったわ。

Tegan and Sara – 100x

Tegan and Sara – Dying to Know

――それには何か理由やテーマのようなものがあったんですか?

サラ 前作『ハートスローブ』は色んな人たちと一緒に、インディ・ロック・バンド的なやり方をとったこともあって、今回は少人数でやってみようと思ったの。カニエやビヨンセのような人たちの作品には100人ぐらいの人がかかわっていることもあるって考えると、3人だけで作るというのは、ポップの世界ではユニークな方法かもしれないよね(笑)。3人だけで作ったものだけど、音楽は「ポップ」になっているというか。

――まさに、3人だけで作ったものであるにもかかわらず、サウンド自体は80年代っぽいシンセがフィーチャーされていたり、アレンジも凝ったりと、とてもカラフルなものになっています。

ティーガン 最近は、「アルバムという形式はもう古いものだ」と言われたりすることもあるけど、私たちはアルバム志向なところがあるから、プロデューサーをひとり立てて、作品全体に一貫性を持たせようと思ったのよ。グレッグに聴かせるためにまずは2人でデモを作ったわ。そこでキーボードやドラム、サンプルも含めて青写真のようなものを用意して、それを彼に渡したんだけど、彼の作業はまるで魔法みたいだった。私たちがやりたかったことを理解してくれて、メロディやキーボードのラインを生かしつつ、それをビッグなサウンドにしてくれた。

Tegan and Sara – BWU

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